白舟書体とは (ハクシュウショタイとは) [単語記事]

概要

1934年、丸岡勝によって丸岡白舟印舗として創業。兵庫県に所在する印章店であり、長年印鑑やゴム印、印章事務用品などの製造販売を行っていた。

一方で丸岡は長年印章用の文字を手書きで書き溜めており、1990年代にそれらをデジタル化。1996年よりフォントとして印章業界向けに売り出したことで、タイプファウンドリーの道へ漕ぎ出した。1999年からはシヤチハタ株式会社に書体を提供、協力関係となっている。

そうして印章用の手書き書体をデジタル化したノウハウを応用し、2002年に「デザイン筆文字シリーズ」という毛筆書体のデジタルフォントを売り出し、ヒット。毛筆書体専門のタイプファウンドリーとして昭和書体と人気を二分している（なお、両社は顧客に互いに書体を紹介し合うなど協力関係にある）。

書体は白舟書体から直接の販売は基本的に行われておらず、他販売業者を通じて販売している。現在、Font Garageやdesign pocketなどのサイトで販売されている。

2010年からはフォントワークスのサブスクリプションサービス「LETS」で利用できた。このため多くの利用があったが、これは2018年に終了してしまった。その代わりに、2019年 3月22日よりシヤチハタ株式会社との共同でサブスクリプションサービス「J-FONT.com」を開始している。

白舟書体では、書体を種別によって「スタンダードシリーズ」「デザイン筆文字シリーズ」「懐（レトロ）シリーズ」「芸（アート）シリーズ」といったシリーズに分類している。以下に代表的な例を紹介する。

丸岡勝によって書き溜められた印章用書体の制作に端を発した、標準的な筆系書体のライブラリー。

白舟楷書: 毛筆の風合いを持ちながら、迫力に繊細な柔和さも備えた楷書体。; 細、標準、太、極太の4段階でウェイトファミリーが構成されている。
白舟印相体: 篆書体を意匠化し実印に多く使用される、印相体をフォント化したもの。; 出典の明らかになっている漢字を頼りに、Adobe-Japan1-3の字数に対応した。
白舟篆書: 印章用書体の代表的な一種である篆書の書体。細、標準、太のウェイトがある、; 印篆と小篆の中間を目指したといい、現代の字形により近い崩し方がなされている。

地元のさまざまな書家に依頼して制作された、毛筆書体のライブラリー。

鯨海酔候: デザイン筆文字シリーズ第一弾。豪快でありながら繊細な字面が特徴。; デザイナーは井上稔也。井上は酒屋の店主で、酒を卸す顧客にサービスでメニューを書いていた。行きつけの店でそれを目にした丸岡が目をつけ、制作を依頼したとのこと。; 漢字が少し小さく調整された「鯨海酔候S」も用意されている他、芸シリーズの「ゲーカイ」ファミリーのベースとなっている。
大髭 113 / 115: 終筆部などに黒い筋、いわゆる髭を持った髭文字の書体。; 一般的な髭文字と異なり、勢いよく毛筆で書かれた字母に油性ペンや油性液でハネ・髭を加えたことで、激しさや躍動感を生んでいる。; 115には113の特徴に加えて「虫喰い」と呼ばれる白い筋の表現がなされている。
金時: さつまいものような線で書かれていることが名前の由来となっているデザイン書体。; 丸っこく可愛らしい印象を持ち、毛筆書体としては比較的字形がそれほど崩れずに表現されている。

古典的な、あまり常用されない字形を持つ印章向き書体のライブラリー。

白舟甲骨: 漢字の起源と目される甲骨文字の字形を元に、筆文字としてデザインされた書体。; 発掘されている甲骨文字は1300文字ほどであるが、それを手がかりに9350 文字ほどまで対応させている。
白舟九畳篆: 中国の宋・元時代に印章に用いられた、印篆の崩しを文様化し線をくねらせた書体「九畳篆」のフォント。; 九には数が多いという意味があるが、白舟九畳篆では横線の数を実際に9本と定めてデザインしている。
白舟角崩朱文 / 白文: 江戸時代に印章に用いられ、ハッピなどにみられる「角崩し」をデジタル化したもの。; 白舟九畳篆がベースとなっており、文字部分を黒くした「朱文」、白抜けした「白文」がある。