鍵のかかった部屋

鍵のかかった部屋とは、

1. ポール・オースターの小説。「ニューヨーク三部作」の3作目。
2. 貴志祐介の小説。角川書店刊。防犯探偵・榎本シリーズの第3巻。
3. 2を含む防犯探偵シリーズを原作とするテレビドラマ。

この記事では2と3、および防犯探偵シリーズ全体についても記述する。

小説（防犯探偵・榎本シリーズ）

防犯ショップ店長で防犯コンサルタント（本業は泥棒？）の榎本径と、弁護士の青砥純子のコンビが、様々な密室殺人事件の謎を解き明かしていく本格ミステリー小説シリーズ。貴志作品では珍しいシリーズものである。

もともとは第1巻『硝子のハンマー』のみで終わる単発作品の予定だったが、使わなかったネタをリサイクルした短編が雑誌『野性時代』に不定期に掲載され、それをまとめた短編集が続刊として刊行されている。

全作品が密室もの、というのが最大の特色。

硝子のハンマー

ビルの最上階、完全なセキュリティに守られた密室状態のフロアで、介護サービス会社の社長が撲殺された。社長室に繋がる専務室で仮眠をとっていた専務が逮捕され、弁護士・青砥純子は防犯コンサルタント・榎本径とともに専務の無実を証明するため密室の謎に挑む。

シリーズ第1巻となる長編作品。2004年4月刊。第58回日本推理作家協会賞受賞、『このミス』2005年版第6位。

前半は榎本と青砥がさまざまな仮説を提示して、あらゆる可能性をしらみつぶしに検証していくパズラー的趣向の強いミステリとなっている。後半は一転して犯人の視点から犯行の経緯が語られる倒叙ものとなっている。

狐火の家

シリーズ第2巻。2008年3月刊。『野性時代』に発表された短編3本に書き下ろし1編を加えた短編集。

• 狐火の家
  • 長野の集落にある日本家屋で女子中学生が殺され、父親が逮捕された。家は完全な密室で、30キロの金塊が盗まれていた。父親の弁護を依頼された青砥は、榎本とともに密室の謎に挑むが……。
• 黒い牙
  • 依頼人からペットの引き渡しに関する相談を受けた青砥。猫か何かだと思っていたそのペットは毒蜘蛛で、死んだ飼い主は毒蜘蛛に噛まれたのだという。現場状況に違和感を覚えた青砥は他殺を確信し、榎本に相談するが……。
• 盤端の迷宮
  • プロ棋士が滞在先のホテルで殺された。現場は密室で、なぜかドアチェーンが掛けられていた。なぜチェーンが掛けられていたのか？　密室と犯人の手がかりは、被害者が残したダイイング・メッセージにあった。
• 犬のみぞ知る Dog knows
  
  • 『硝子のハンマー』の事件で知り合った、現劇団員のさやかから殺人事件の相談を受けた青砥。劇団の座長が部屋で殺され、さやか以外の容疑者は2人。現場には番犬がおり、1人はその番犬にひどく嫌われ、1人は犬アレルギーだった。さやかの容疑を晴らすため青砥は現場に向かうが……。貴志作品では珍しいギャグ調の作品。

鍵のかかった部屋

シリーズ第3巻。2011年7月刊。『野性時代』（『小説野性時代』）に発表された4編を収録した短編集。

本作のトリックは全て物理的に実行可能か実際に作者が検証したそうである。『硝子のハンマー』の頃には榎本と知的な推理合戦を繰り広げていた青砥はすっかりボケ要員と化し、榎本にも心配されるほどに……。

• 佇む男
  • 葬儀会社の社長が密室状態の山荘で死体で見つかった。警察は自殺として処理したが、白幕の貼られたドアとガラステーブルの間で座り込んだ異様な死に様と、現場に残された不自然な遺書に、司法書士の日下部は殺人であると確信。青砥と榎本は日下部の依頼で密室の謎に挑むことに。
• 鍵のかかった部屋
  • 元泥棒の会田は刑務所からの出所後、甥と姪に会うため亡き姉の家を訪れるが、まさにその日に甥が練炭自殺してしまう。その死に不審を抱いた会田は、榎本を介して青砥に事件の解明を依頼するが……。
• 歪んだ箱
  • 高校教師の杉崎は、震度4の地震で家全体が歪んでしまった欠陥住宅の新居の違約金をめぐって揉めていた工務店店長を殺害、現場を完全な密室に仕立て事故に見せかけるが、榎本がその調査に現れ……。
• 密室劇場
  • 「犬のみぞ知る」に登場した劇団の舞台公演中に、前座の空手家が控え室で撲殺された。殺害現場から脱出するには、売店の前を通るか、舞台の上を通らないといけないという脱出不可能状態。犯人はどうやって衆人環視の密室から脱出したのか？　「犬のみぞ知る」同様にギャグ調のミステリー。

テレビドラマ

「密室は、破れました。」

2012年4月16日から、フジテレビ系列の月曜21時枠（いわゆる月9）にて『鍵のかかった部屋』のタイトルでドラマ化。全11話。主演は大野智（榎本径役）、戸田恵梨香（青砥純子役）、佐藤浩市（芹沢豪役）。

ストーリー、トリックはおおむね原作を踏襲している（一部エピソードは大幅に変更されている）が、原作からメインキャラとして佐藤浩市の演ずる弁護士（青砥の上司）の芹沢豪が追加され、主にコメディリリーフの役割を担っている。また榎本が「密室以外には全く興味が無い防犯オタク」に大きくキャラクターが変更されているため、原作では榎本が犯人を追い詰める場面で芹沢がその役割に回ることも。

場面の切り替え時、画面が急に暗転しBGMもぶった切られる、という独特の演出が多用されるのも特徴。

主題歌は嵐「Face Down」。音楽はKen Araiが手がける。

最終話は30分拡大放送。平均視聴率16.0%で、4～6月期のドラマではトップだった。

放映エピソード

1. 佇む男 （4/16放映…原作『鍵のかかった部屋』収録「佇む男」）
2. 鍵のかかった部屋 （4/23放映…原作『鍵のかかった部屋』収録「鍵のかかった部屋」）
3. 盤端の迷宮 （4/30放映…原作『狐火の家』収録「盤端の迷宮」）
4. 黒い牙 （5/7放映…原作『狐火の家』収録「黒い牙」）
5. 鍵のかかっていない部屋 （5/14放映…原作『鍵のかかった部屋』収録「歪んだ箱」）
6. 密室劇場 （5/21放映…原作『鍵のかかった部屋』収録「密室劇場」）　※ストーリーはドラマオリジナル
7. 狐火の家 （5/28放映…原作『狐火の家』収録「狐火の家」）
8. 犬のみぞ知る （6/4放映…原作『狐火の家』収録「犬のみぞ知る」）　※ストーリーはドラマオリジナル
9. はかられた男 （6/11放映…原作「ゆるやかな自殺」（単行本未収録））
10. 硝子のハンマー （6/18放映…原作『硝子のハンマー』）
11. 硝子のハンマー （6/25放映…原作『硝子のハンマー』）

オープニングの仕掛け

毎回、放送開始10分前後で流れるオープニング映像には、その回のモチーフやトリックのヒントが仕込まれている。
トリックのネタバレを含むため白抜きで記述。

1. 佇む男 … 死体に注射器が突き刺さり、最後の鍵にハエが止まる。
2. 鍵のかかった部屋 … 赤い紙吹雪が飛び、ボイル＝シャルルの法則の式が榎本の背後に書かれている。
3. 盤端の迷宮 … 死体にナイフが刺さり、ドアにチェーン、芹沢のところで「16K」の文字。
4. 黒い牙 … 榎本の背後に蜘蛛の巣、鍵が落ちていくところでぶら下がる蜘蛛、最後の左下に蜘蛛の足。
5. 鍵のかかっていない部屋 … 画面全体がガラスが割れたようになり、青砥のところで黄色い玉が飛ぶ。
6. 密室劇場 … 榎本の背後に冒頭の月の装置、オープニング中ずっと背景を白い人影がゆっくり歩き続けている。
7. 狐火の家 … 死体の頭から血と①の文字、榎本の背後に狐火、金塊をくくられ落ちていく死体と②の文字、芹沢の背後に狐火、最後の鍵に止まる蜂。ヒントの大盤振る舞いである。
8. 犬のみぞ知る … オープニング中ずっと画面を横切る青・赤・白の線、榎本の背後に時計、最後の画面に犬の顔。
9. はかられた男 … 死体の頭に弾痕、赤い線と青い線を発する二丁の拳銃。
10. 硝子のハンマー … 扉を開けた先に榎本がおらず手配写真、鳴り響くサイレンの音、提供画面で下から現れる男の目。
11. 硝子のハンマー … 死体の頭にヒビ、榎本の頭上から落ちてくるダイヤ、背景にロボット、青砥のところで箱にぶつかる球体と衝撃波、顔に重なる目と【idintity】M.S.A.S.の文字（identityのスペルミス？）、芹沢のところで⑥⑨の数字とそれを弾く⓪、背景を飛ぶ飛行機、提供画面に榎本の眼鏡。

こぼれ話

• 第3話「盤端の迷宮」では、毒島竜王役で貴志祐介本人が出演している。
• 第6話「密室劇場」のゲストはV6リーダーの坂本昌行で、嵐のリーダーとV6のリーダーが共演した。
• 「密室劇場」のストーリーおよび作中の舞台「密室に囚われた男」はドラマオリジナルだが、パソコンの中身を探る場面で原作で上演された「彼方の鳥（ヨンダーバード）」のタイトルが見えている。
• 第8話「犬のみぞ知る」では、芹沢がめざましテレビに出演するシーンが描かれた。

関連動画

関連商品

関連項目

• 小説作品一覧
• テレビ番組の一覧
• 貴志祐介