飛田新地とは (トビタシンチとは) [単語記事]

飛田新地とは、大阪市西成区山王3丁目周辺の俗称であり、漢たちの最後の楽園である。

概要

明治～昭和初期には「飛田遊郭」と呼ばれた地区であり、いわゆる「ちょんの間」が軒を連ねる花街として知られていた。
1912年（明治45年）に「難波新地」にあった乙部遊郭が「ミナミの大火」で焼失。その4年後、水田が広がっていた飛田の地に移転してきたのが飛田新地の始まりである。戦後のGHQ時代は半ば公認の売春街を表す「赤線」であった。

1958年（昭和33年）に売春防止法が施行された際、それらの店が「料亭」に変わり、料亭街『飛田料理組合』となった。
しかし実態としては「お客さんがお店で食事を楽しみ、仲居さんという名のお姉さんと『自由恋愛』をする」という建前で法令違反を「回避」し、営業が続いている。
以後、大阪府においていわゆるソープランドの営業が禁止されていることから、現在に至るまで法的には「グレーゾーン」の状態ながら残り続けている。
ただし全ての営業がお目こぼしを受けている訳ではない。暴力団関連や強引な「仲居」の確保に対してたびたび警察の手入れが行われ、逮捕・書類送検される事例もある。直近では2018年 5月、山口組系極心連合会幹部と内縁の妻が逮捕されるなどしている。

建築物は大正～昭和時代ごろのものが多く残っている。
ただし、単にそちらの鑑賞だけを目的に観光すると、料亭への客引きに遭う可能性があるためオススメは出来ない。また女性が近づくのも冷やかしと思われ、状況によっては追い払われてしまうこともある。
さらに重要な点として、営業中の料亭は撮影禁止である（後述する天神祭の日を除く）。これは、お姉さん方がここで働いていたという「証拠」を残さないための配慮であり、無用なトラブルを回避する為にも、カメラやスマホを手に持って歩かない方がよい。Google ストリートビューは普通に飛田新地にGoogle カーを走らせて撮影してしまっているが……
近年ではインターネットによって広く存在が流布され、特に外国人が興味本位で訪れる事が多いという。暗黙の了解を無視してカメラやスマホで撮影・公開する手合いによるトラブルも頻発しており、迷惑だと語る当事者もいるとか何とか。

最近はNHK（テレビ番組『探検バクモン』）も撮影に参入したりしている。料亭の看板にはさすがにモザイクがかかったが、お姉さんがいない状態で店の入口の様子が映された。ちなみに本来お姉さんが座るところに爆笑問題の田中裕二が座った。

午前の時間帯であれば料亭がほとんど営業していないため、比較的安心して街を歩くことが可能という情報もある^[1]。また、毎年7月下旬に行われる大阪天神祭の日は、飛田新地の中をだんじりが引き廻されるため、祭りの様子を写すという条件で撮影禁止が解除される。

なお「料亭」の全部が全部そっち方面というわけではない。
「鯛よし百番」は国の登録有形文化財であり、大正時代の妓楼がほぼ当時のまま現存している。往年の栄華を思わせる豪奢な装飾が残る部屋は一見の価値があり、提供されるサービスも3000円～5000円前後の会席料理や鍋料理が中心で、いかがわしいものは全くない。なお利用は要予約なので注意。

北西のあいりん地区と合わせて「西成」と呼ばれることがある（なお、この西成は「西成区」とは指す範囲が異なる。これについては個別記事「西成」を参照）。

2019年 5月16日、G20（20カ国・地域首脳会合）が大阪市で開かれる6月28・29日に、料理組合に加盟する全159店が休業すると報じられた^[2]。これは昭和天皇の大喪の礼以来となる。

大阪におけるそのほかの新地

先述したとおり、大阪府内では条例によりソープランドの営業が禁止されており、代わりに飛田のような制風俗営業許可をもらわずに飲食営業許可などのみで実質的な風俗店として営業する「新地」が各所に存在している。

松島新地
阪神・地下鉄九条駅近くにある新地。飛田より価格層は低めで、住宅や普通の飲食店が混在する地域の中にある。
信太山新地
JR 阪和線信太山駅近くにある新地。飛田のように店先にお姉さんが座る形ではなく、店に入りお姉さんを呼ぶ形になっている。
今里新地・滝井新地
前者は近鉄今里駅から南に歩いた場所にある、信太山タイプの呼び出し型の新地、後者は京阪滝井駅近くの数件ほどの小さな新地。その筋では比較的穴場扱いされている。
かんなみ新地
兵庫県尼崎市内にある新地。