アメリカ車とは、文字通りアメリカで生産される車の事である。通称「アメ車」
一般的な概念としては「アメリカ製の車」と言う事であるが、日本のメーカーの現地生産車(ex:アコードクーペ)やアメリカに本拠地を置くメーカーがアメリカ以外で生産した車(ex:フォード・フェスティバ)をアメ車と言う事はほとんどない。言うなれば「アメリカ資本の自動車会社による、アメリカ製の車」が適当であろう。
アメリカ車の特徴はすなわちアメリカと言う国そのものの特徴にもなりうる。まず、日本車と比べても大きな車体である事、排気量が大きい事、軟い足である。
一般的にアメ車を語る際に散見される「無駄」と言われるこれらの特徴には合理的な理由が存在する。アメリカにおける移動手段のメインストリームは自動車である。無論、あまりに遠い場合は飛行機が出てくるが少なくとも州間の移動においては自動車が使われる事が多い。その距離は長大であり、かつ道路もカーブはすくなく、ほとんど直線である。道も日本の様に舗装されている所もあれば、ロクに手入れをしていない所もある。こういう道を快適に進む為にはある程度の大きさに、その大きさを動かせるサイズのエンジン、凸凹道でも快適に進めるような足周りが必要なのである。
特筆される点として、ピックアップトラックの人気が高い事である。アメリカにおいてはピックアップトラックはそれこそ、野良仕事からモーターホームけん引、足車など1台で何役もこなせる万能車である。これだけではなく、税金が安く、所によっては無税と言う事もあり、大人気となっている。特にテキサス州などアメリカ南部での販売シェア数はどの州よりも高い数字がある。アメリカの人気レースカテゴリーであるNASCARにもピックアップボディのものがあるからもその人気ぶりが伺える。現在ではなくなってしまったが、かつては乗用車ベースのピックアップも存在した。
一般的にオートマに代表されるオートメーション先進のイメージがあるが、小型車、ことにバジェットカーといわれる低価格車には(ハンド)パワーウィンドウや手動調節のドアミラー、マニュアルギアが設定されている事が多い。
メーカー内に多くのブランドがあるのも特徴である。例えばシボレーはゼネラルモータースの大衆ブランドの一つであり、GMはその他にも高級車部門のキャデラックやワンランク下のビュイック、商用車部門のGMCなどがある。
最初に書いた「大きな車体・大排気量・軟い足」はある意味環境としては真逆となる日本においてはマイナスのイメージとしてとらえられた。無論、これだけでアメ車が評価を落とすはずもない。
そもそも日本の道は混雑とゴー&ストップの多さ、高温多湿と低温寒冷という相反する要素が同居する環境であり、アメリカ車以外でも海外の車にとっては過酷な環境である。現にアメ車のみならずヨーロッパ車でも日本車程の信頼性を今もって得られないでいる。
では何故、ここまで評価を下げる結果になったかと言えば1970年代におけるオイルショック後の嗜好の変化に取り残された結果としてビッグスリーは売り上げを落としていったが、労働組合との兼ね合いで賃金を抑える事ができず、各種の投資をする費用の捻出が難しくなった。その為、品質保持が難しくなり信頼性を大きく下げる結果となってしまった。また日本においては1990年代においては、シボレーアストロなどのミニバンが人気を博したが、一部の悪質な販売店がメーター改ざんや事故車の販売などをした結果、さらに評価を下げてしまった点もある。その為、現在においても雑誌や電子媒体ではアメリカ車は他の国の車より格下に見られたり、あたかもてんでダメな車であるという評価を成されている事がしばしば見受けられている。
ここで改めて言っておく事に現在においては少なくともメカニカルな点では概ね解決されており、本来のアメ車は新旧に関わらず、基本的な整備を怠らなければ非常に頑丈である。何故なら、誰もいない様なハイウェイのど真ん中で故障すると言う事は命にかかわることにもなるからである。
なお、余談ではあるが同じ大陸の国であるオーストラリア車もまた、アメリカ車と似たような特徴を持っている。面白い事に、オーストラリアの生態系が有袋類など独特の進化を遂げたように自動車もまた、独特の進化を遂げていった。ヨーロッパ車の特徴をとりいれながらも、アメ車の特徴も併せ持ち、アメリカでは絶滅した乗用車ベースのピックアップが今持って存在しているのである。
自動車産業発祥の地として長く根深い文化がある。後述するが、改造に関しても人種によってもある程度細分化されているのも特徴である。一般的に「車は道具」という考えが知られているが、走ればオーライなのは確かで錆多数発生でヤレまくりの車や、板金後の下地塗装のみのまだら模様な車、ボディの艶なしな車などが見られる。また、日本のように車の大きさが豪華さと必ずしも一致してないのも特徴である。日本ほど車に対するステータス性を求めていない結果であるが、アッパークラス以上ではそうでもない。
大きな特徴として非常に強固なV8信仰があり、アメ車のアイデンティティにもなっている。後述する理由により、エンジン換装が頻繁に行われているが、1にも2にもV8と言わんばかりにV8に載せ換える事が多い。V8にしても、DOHCではなく旧態化したと言われるOHVが主流である。無論、OHVにするからには理由があり、長い間リプロダクションされているため、各々のメーカーのアフターパーツが豊富にそろっている事やヘッドの高さを抑えられる事で重心を低くできたり、パワーバンドを扱いやすい低回転域重視に出来る、何より音が良くなるのである。
(例)S14にV8ブッ込んでみた。
V8は大きく重いイメージだが最新のものは大分軽く、物によっては前のエンジンより軽量化する事もあり、またOHVの特性上、ヘッドを低くする事が出来るので、バランスが良くなる事もある。
アメリカにおいては日本の車検に相当する制度が存在せず、エンジン交換も特段の手続きがなく、またチューニングに対する敷居も低く、原型をとどめない改造が多い。また、整備においても工場に持っていくような点検もあるが、DIYで整備するケースも少なくない。
日本では廃番になってるような純正パーツもサードパーティによる生産や整備書が非常に盛んになっている。これらの背景には自己責任が浸透している事もあるが、前述の通り整備もろくにしていない場合、ハイウェイのど真ん中で止まってしまえば、命取りになると言うことがあるかもしれないのである。
往々にして、アメ車のスポーツカーは暴力的なまでの加速と直線番長に代表される乗り味で、ヨーロッパや日本のGTとは様相が大きく異なる。これは後述する改造の部分にも書くが、アメリカのドラッグレースが影響している。また、過給機も回さないとパワーが出ないターボチャージャーより最初からモリモリパワーが出るスーパーチャージャーが主流である。
代表的なのは「ホットロッド」である。おんぼろの車から余計なものを取っ払い、派手なファイヤーパターンのデカールなどを張り付けて、必要に応じてV8エンジンに載せ換えてバカっ早な車に仕上げる。主にゼロヨンの様な直線レースの速さを競い、アメリカのドラッグレースの源流ともなったのである。
近年、その名を聴くようになった「マッスルカー」は大衆車などの安価な車体に大排気量のハイパフォーマンスエンジンを搭載したクーペであり、これまたドラッグレースやストックカーレースに主眼を置いたものとなっている。1960年代から70年代にかけて、GM、フォード、クライスラーはこぞってこれらの自動車を生みだし、当時の若者に大人気を博した。
日本でも油圧族と言う別称でおなじみなのは「ローライダー」である。これまでの自動車文化は主に白人発祥であるが、ローライダーはロスを中心としたメキシコ系移民発祥となっている。ホットロッドに対するカウンターカルチャーの側面もあり、車高が極端に低く、その車高もハイドロリクスを駆使して調整出来たり、または飛び跳ねたりも出来る。ペイントもラメを多用したものとなっている。その文化の成り立ち上、移民の歴史やヒップホップやギャング文化と強いつながりがあり、一口にこのカテゴリーを語るのは難しい。
ワイルドスピードでおなじみなのは「スポコン」であり、主に日本製やヨーロッパ製、韓国製小型車をベースとし、外装をバイナルで装飾し、エンジンもハイパフォーマンスにするなどがあるが、明確な定義はない。このジャンルはアジア系などの有色人種発祥である。
これ以外にもジャンルがあるが、アメリカ車が日本における輸入車のメインストリームから外れた現在も、文化の面では未だに根強い人気を誇るのが特徴である。
今日、外車と言ってイメージされるのはベンツなどのドイツ車が多いが、30年ぐらい前における外車のイメージはアメ車であった。戦前よりアメ車が走ってはいたが、戦後に進駐軍が使用したことや、海外ドラマがアメリカ発のものが多く、そのスクリーンを飾る車はキャデラックであったりとある意味身近な外車でもあった。今ではその筋の人の車は黒塗りのベンツと言うイメージであるが、かつてはキャデラックであった。
そして、その当時の日本車がインスピレーションを受けた車もまたアメ車であった。端的な例として3代目グロリアや初代セリカがある。前者はタテグロと言う渾名があるがポンティアックGTOを思わせるスタイルで「代用アメ車」というもう一つの渾名が存在した。後者はだるまセリカとして知られるが、そのスタイルや販売手法は程度の差はあれど、初代フォード・マスタングのそれとほとんど一緒のものであった。またスズキ・フロンテなどに見られたコークボトルと言われるコーラの瓶の様なうねりの効いたスタイリングや高級車に代表されるふわふわした乗り心地やメッキの多用もまた、アメ車のそれであった。
乗用車のみならず、バスもまたアメリカの影響が大きかった。昔のバスと言えば、丸っこいデザインであるがこのデザインもアメリカのバスがモノコック構造を採用してた為であり、スケルトン構造が台頭する前はモノコックが主流であった。日産ディーゼル(現:UDトラックス)はエンジンをアメリカのデトロイト・ディーゼルのライセンス品を使用していた。このエンジンは日本では唯一の2ストロークのディーゼルであり、甲高い独特のエンジン音が特徴である。
このように日本車はほぼすべての種類で黎明期から1980年代ぐらいまではアメリカ車の影響を強く受けていたが、アメリカ車の信用低下とヨーロッパ車の台頭が始まると、日本車のインスピレーション先はヨーロッパへ移っていった。
現在において、輸入車のメインストリームにアメ車が来る事はあまりない。とはいえ、それでもアメ車が人気を得るケースもあり、時としてインスピレーションを与える事もある。90年代においてはシボレー・アストロが人気を博し、これによってワンボックスからミニバンへの移行が始まり、競争が激化した。また、最近ではリンカーン・ナビゲーターやハマーが大型SUVで人気を博すなど、アメ車の人気は消えたわけではない。
ゼネラルモーターズ | フォード | クライスラー | |||
現行ブランド | 廃止ブランド | 現行ブランド | 廃止ブランド | 現行ブランド | 廃止ブランド |
※それまでダッジブランドで発売されていたピックアップを独立させたもの。
この数年、ビッグスリーは深刻な経営不振に陥っており、GM・クライスラーの破綻は記憶に新しい。その為、経営再建の一環としてそれまでえ存在したブランドを廃止、もしくは売却を進めた。
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最終更新:2024/05/04(土) 04:00
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