2.5次元ミュージカルとは、アニメ・マンガ・ゲームなどを原作とした舞台演劇である。
アニメ・マンガ・ゲームなどについて、「紙面」「画面」という平面内で絵やCGによって描かれたキャラクターが活躍することから、一般に「2次元」と表現されることがある。それに対比して、実写で役者が演じるドラマ作品や演劇などについて「3次元」と表現されることがある。
これらを踏まえて、「2次元」の作品を原作としつつも、キャラクターの扮装をした役者が観客の前で「3次元」の存在として演じるタイプの演劇を、「2次元と3次元の間」と捉えて「2.5次元ミュージカル」と呼ぶ。
なお名称に「ミュージカル」と入っているが、割合としてミュージカル作品が多いための便宜上のような呼称であり、ミュージカルではないストレートプレイの演劇なども包括している。
詳細は下記「歴史」の項で記すが近年急速に普及してきており、2014年に「日本2.5次元ミュージカル協会」が設立されたこともあり、今後も一層の発展が見込まれている。
ただし「2次元」と「3次元」は基本的には異質なものでもある。それをうまく違和感少なくマッチさせられるかどうかが重要になってくるわけだが、「どうしても実写で演じられているものは受け入れられない」「アニメ版の声優と声が違う時点で無理」などの理由から、「原作のファンであるが舞台やミュージカルは受け付けない」という層も決して少なくはない。
2.5次元ミュージカルが登場する以前、アニメ・マンガのドラマ化や映画化の時代からついて回っている点である。好みや程度の問題ではあるが、人によっては強い拒否感や違和感を感じてしまう場合もあるようだ。
題材がアニメ・マンガ・ゲームであるため、それらの登場キャラクターとして一般的な年齢層、つまり少年・少女・青年などの若い役が多数必要とされる。さらに「作品・キャラクターの人気」があれば、「公開当初から人気役者のネームバリューで観客にアピールする」という必要性はそこまで高くない。
そのため、キャリアを積み始めてそれほど経たない若手の役者でも、オーディション等でキャラクターに合っていると判断されれば知名度は関係なく起用されることも多い。ただし必然的に、歌唱力や演技力などがまだまだ発展途上……という例も少なくない。
近年では若手の役者志望者が経験を積んでいく場となっている面もあり、例えば城田優など2.5次元ミュージカル出身の役者が大成していく例もある。
なおディズニー等海外のアニメーション(『美女と野獣』『アラジン』『ライオン・キング』など)もミュージカル化されているが、これらのミュージカルは下記のような歴史的経緯とはほぼ無関係に別個に発展してきたものであるため、「2.5次元ミュージカル」のカテゴリ内で語られることは少ない。
また「アンパンマン」や童話など幼年向けの作品で多い「着ぐるみでの演劇」も、「3次元の存在である役者が演じる」という要素が薄いこともあって「2.5次元ミュージカル」として語られることはあまりない。
この種の演劇の先駆者としては、1974年の「宝塚歌劇団」による『ベルサイユのばら』がある。これは当時の人気少女漫画をミュージカル化したもので、大評判となった。その後も、宝塚歌劇団は漫画作品やゲーム作品のミュージカル化を手掛けることがある。だが、これは現在の『2.5次元ミュージカル』の流れに直接的に連続しているとは言いがたい。
1985年には劇団「イマジンミュージカル」により『世界名作劇場』の『小公女セーラ』をミュージカル化したものが上演される。本作の後も、イマジンミュージカルは『世界名作劇場』の作品のミュージカル化を長期にわたって継続していく。だが、元々『世界名作劇場』の作品は「3次元」の役者によってミュージカル化されても違和感が少ないようなものが多く、「2.5次元」という感じはあまり強くない。そのためイマジンミュージカルによるこれらの作品群も、現在の「2.5次元ミュージカル」とは趣が異なったものである。
1987年、あだち充の漫画であり同年までアニメも放映されていた『タッチ』がミュージカル化される。しかしアニメ版の企画に関わっていたアニメプロデューサー片岡義朗はミュージカルの専門家によって作られた本ミュージカルについて、あまり漫画版やアニメ版の『タッチ』の雰囲気の再現はできていないと感じ「アニメのミュージカル化はアニメの人間が行わなければ」という気持ちを持ったという。これが後の布石となる。
1991年、ミュージカル『聖闘士星矢』公開。まだ新人だったSMAPが主演していたことで知名度も高いと思われる。これこそが現在のような2.5次元ミュージカルの源流となっている作品のようである。前述した片岡義朗は本作のプロデューサーを務め、確かな手ごたえを得る。そして後に「2.5次元ミュージカル」というジャンルの中心人物となる松田誠も本作に関わっていた。
その後も1993年の『美少女戦士セーラームーン』や『姫ちゃんのリボン』、1994年『赤ずきんチャチャ』、1996年『水色時代』『怪盗セイント・テール』、1997年『サクラ大戦歌謡ショウ』、1999年『こちら葛飾区亀有公園前派出所』など漫画・アニメ・ゲーム原作のミュージカルは上映され続ける。2000年には『魔法使いサリー』『犬夜叉』『HUNTER×HUNTER』が公開されるが、特に『HUNTER×HUNTER』は大ヒットする。
そして漫画・アニメ原作のミュージカルが大きく知名度を上げるきっかけとなった作品が、2003年に公演開始した『ミュージカル・テニスの王子様』である。意外なことに当初はさほど話題にもならず客席は半数ほどしか埋まらなかったとのことだが、初演を見た観客たちの反応は非常によく、徐々に口コミで人気が出ていった。第1作の千秋楽公演では、立ち見も出るほどの盛況となる。その後も非常に多くのミュージカルやコンサートが公演され、2016年現在でもシーズン3として継続しているほどの超人気作品となった。本作品には片岡義朗、そして松田誠が主要スタッフとして関わっている。
この『ミュージカル・テニスの王子様』の大成功に触発されたのか、その後は漫画・アニメ・ゲーム、さらにはボーカロイド楽曲などを原作とした演劇作品の数は徐々に増えていき、観客動員数もまた増え続けていった。全国各地(あるいは海外)の映画館へと、演劇を生中継上映する「ライブビューイング」方式の普及もそれを後押しした。
そして2014年には、松田誠を代表理事とする業界団体「日本2.5次元ミュージカル協会」が設立された。この協会は国内の2.5次元ミュージカル業界の交流センターとして活動するとともに、海外にも2.5次元ミュージカルを進出させる後押しをしていくことを目的としているという。
なお、「2.5次元ミュージカル」という呼称が一般的なものとなったのは、上記の歴史の中でも割と後期のようである。
NHKのサブカル情報テレビ番組『MAG・ネット』の2011年9月9日放映が『ミュージカル・テニスの王子様』特集だったようだが、その際に「2.5次元ミュージカル」という呼称が使用されていた。そして以後、これを引用する形で紹介されるなど広まったようだ。
それ以前にも個人のブログなどで「2.5次元ミュージカル」という言葉が使用されている記録も一応確認できるが、それらは単発的でありごくわずかな例でしかなかった。
漫画、ゲーム、アニメの舞台演劇化作品は非常に多く、網羅は困難である。また全て挙げようとしてしまうと、上記「概要」や「歴史」で触れた「海外の作品」「着ぐるみ作品」「宝塚歌劇団」「イマジンミュージック」などの、やや「2.5次元ミュージカル」とは呼び難い作品も混じる。
そのため、ここでは基本的には「日本2.5次元ミュージカル協会」の公式サイト内、「2.5D舞台紹介」のページに掲載されているもののみを列挙する。
それに加えて、その作品自身はそこに掲載されていないが、掲載されているものと明らかに連続性があるもの[1]は追加で挙げる。
また、「2.5次元ミュージカル」のジャンル確立の歴史に大きく関わった人物である片岡義朗と松田誠や彼らが所属していたネルケプランニングとマーベラスが関わった過去作品[2]も、例外として挙げる。
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最終更新:2024/05/01(水) 19:00
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