正面:ベギルベウ 左奥:ベギルペンデ(ドミニコス隊カラー) 右奥:ケナンジ・アベリー氏
ベギルベウとは、『機動戦士ガンダム 水星の魔女 PROLOGUE』に登場するモビルスーツ(MS)である。
本記事では『機動戦士ガンダム 水星の魔女』本編に登場するベギルベウの後継機・ベギルペンデも合わせて解説する。
概要
ベギルベウ BEGUIR-BEU |
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開発・製造 | グラスレー・ディフェンス・システムズ |
型式番号 | CEK-040 |
頭頂高 | 18.3m |
重量 | 55.1t |
固定武装 | フットユニット ノンキネティックポッド(アンチドートシステム) |
オプション武装 | ベイオネット |
パイロット | ケナンジ・アベリー |
「ケナンジ。ベギルベウを出せ」
「了解……!」
グラスレー社の開発ラインのひとつ「CEライン」で製造された第3世代の高性能機MS。対GUND-ARMを前提としてモビルスーツ開発評議会傘下の特殊部隊・ドミニコス隊に配備された。パイロットはドミニコス隊のエースパイロットであるケナンジ・アベリー。
白と紫を基調とした騎士然としたシルエットで、従来のMSの基本構造を踏襲しつつ、各所に当時の最新技術が投入されている。ハの字に開いた背部ウイングが特徴的。つま先は三又の鳥脚状になっており、格闘武器としても使用可能。
対GUNDフォーマットシステム「アンチドート」を搭載しており、それに機体制御を依存するGUND-ARMに対して優位に戦うことができる。ただし、GUND-ARMを妨害できるのはパーメット・スコア3までに限られる。
『PROLOGUE』では、後に「ヴァナディース事変」と呼ばれるヴァナディース機関の粛清作戦に参加。数で勝るはずのドミニコス隊相手に善戦するガンダム・ルブリスを止めるべく増援として投入される。アンチドートでGUNDフォーマットを無効化し、ルブリスを追い詰めるが―。
武装
- フットユニット
三又の脚部クロー。白刃戦において機能する。 - ノンキネティックポッド
バックパックに2基搭載された、有線式のボール状端末。ドローン兵器やGUNDフォーマットのリンクを制圧する”アンチドート”を搭載しており、効果範囲内の該当装置を使用不能にする。発動時にはベギルベウ本体から分離し、有効範囲を広げる工夫がされている。 - ベイオネット
実体剣に2連装ビーム・ガンを組み込んだ複合兵装。両腕に一本ずつ携行する。
ベギルペンデ
ベギルペンデ BEGUIR-PENTE |
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開発・製造 | グラスレー・ディフェンス・システムズ |
型式番号 | CEK-077 |
頭頂高 | 18.2m |
重量 | 52.9t |
固定武装 | フットユニット |
オプション武装 | ビームライフル ノンキネティックシールド ビームサーベル ロングスナイパーライフル |
パイロット | ケナンジ・アベリーら、ドミニコス隊パイロット サビーナ・ファルディン レネ・コスタ イリーシャ・プラノ メイジー・メイ エナオ・ジャズ |
《ベギルペンデとミカエリスを送った。
対GUND-ARM兵器も用意してある…》
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』本編に登場する、ベギルベウの後継機としてグラスレー社が開発したMS。
ベギルベンデではなくペンデなので注意。
CEラインにて時代基準の改良を加えたグレードK直系の最新機種で、グラスレー社のフラグシップ機となりうる性能を有している。本編時代ではGUND-ARMがほぼ過去の機体となっているが、アンチドートも相変わらず搭載している(性能も同等)。
基本カラーは紫。アスティカシア高等専門学園のグラスレー寮に搬入された機体は暗い朱の差し色が加わり、より毒々しい印象になっている(なお、第12話のプラント・クェタ配備機も色指定ミスで朱色が入っている。映像ソフト版では紫のドミニコスカラーに変更された)。
機体デザインはベギルベウとそんなに変わっておらず(特に頭部)、後継機ということが分かりやすい。明確な変更点は大きなバックパックで、ここには補助用のアンチドートが搭載されている。アンチドート発動中は頭部に新設されたシェルユニットらしき部位が紫色に、バックパックユニットが緑色に発光する。
ドミニコス隊に納入されており、エースパイロット専用機という印象が強い。また、株式会社ガンダムの取り込みを目論むグラスレー社から、ミカエリスと共に5機がアスティカシア学園へ送られ、シャディク・ゼネリの同士である女子パイロット5名の乗機として地球寮との決闘に投入された(本編での登場はこの5機が先である)。決闘後は学園から引き上げられたようで、以降の女子たちは通常型のハインドリーに搭乗している。
ちなみに海老川デザイナーは、本編に再登場するケナンジ・アベリーの専用機として、専用カラーリングや「ベギルベウⅡ」などのアイデアも温めていたらしい。しかし、整備兵からも「あのお腹じゃシートに収まんないでしょw」と言われるほどに激太りしたケナンジの現状を見るに、専用機が存在するのも無理があるかなと思い、没にしたとの事。
武装
- フットユニット
ベギルベウから踏襲。グラスレー社MSの脚は三叉構造になっているものが多いが、ベギルシリーズはそれを武装として強化している。 - ビーム・ライフル
大型タンクを内蔵し、継戦能力を高めたビーム砲。かなり大型で、銃床部分を肩に担ぐように装備する(他ガンダムで例えるなら『機動戦士ガンダムSEED』のプロヴィデンスガンダムのそれ)。 - ノンキネティックシールド
本機の象徴ともいえる兵装。機体全体を覆えるほどに巨大な、十字型の実体盾。
見た目通り高い防御力を発揮する他、アンチドートを内蔵している。アンチドート発動時には十字の先の部分が展開し、シールド各部が緑色に発光する。
劇中未使用だが、持ち手の部分から射出し、有線で遠隔操作できる機構が備わっている。 - ビーム・サーベル
ビームで刃を形作する格闘兵器。柄はノンキネティックシールド裏に収納されている。 - ロングスナイパーライフル
ドミニコス隊に配備されている、ベギルペンデ・ライフルを更に上回る大きさを誇るビームライフル。アスティカシア学園内の戦闘でいつの間にか装備していた武装。
砲身部は廃熱パネルとスリットで覆われ、砲身上部と砲口上下に3種のセンサーを搭載。砲身下部にはバイポッド(二脚)も装着しており、これを使った依託射撃も可能。「確実にコクピットをぶち抜いてパイロットを蒸発させる」という殺意たっぷりのデザインに恥じぬ高精度・高威力を誇る。
乗る人によって変わる活躍
『水星の魔女』という作品は、尺の都合で戦闘シーンが比較的少ないロボットアニメである。その中でもベギルペンデは様々なパイロットが搭乗して複数回の戦闘を行っており、本作の量産機としてはトップクラスの出番が与えられた、何気に優遇された機体である(しかも、その全てでGUND-ARMと交戦している)。
本項ではそんなベギルペンデの活躍を振り返る。
以降、ネタバレ満載なので注意。 |
第9話 グラスレー寮 vs 地球寮
リーダー機ミカエリス(シャディク搭乗)の随伴機として、サビーナ、レネ、メイジー、イリーシャ、エナオの5名が搭乗。対する地球寮はガンダム・エアリアル(スレッタ)に加えて、改造デミトレーナー(チュチュ)とザウォート4機(マルタン、ティル、オジェロ、リリッケ)。本来ザウォートは高機動機だが、搭乗者は数合わせの素人。パイロット科の成績上位者であるシャディク隊の足元にも及ばない。
ミカエリスが改造デミトレを攻撃、サビーナ、イリーシャ機がエアリアルを牽制。レネ、メイジー、エナオ機がその他大勢の始末を担当する。
弾幕を突破したメイジー機は、右脚でマルタン機のライフルを蹴り飛ばしてから、そのまま頭部を脚爪で引き千切り、胴体をよじ登るように跳躍。空中回転しながらオジェロ機の武装と頭部を銃撃して一瞬のうちに2機を無力化した。レネ機は私情でリリッケ機に斬りかかり、後方のティル機に撃たれるが、両機の攻撃を全てシールドで防ぎ、リリッケ機の首をシールド打突でへし折る。着地寸前のティル機にはエナオ機がタックル→サーベルで頭部破壊。
この間、サビーナ、イリーシャ機はエアリアルのガンビットが攻撃に移れないように射撃を集中していた。
ミカエリス相手に粘る改造デミトレはイリーシャ機の援護射撃を受け、両脚溶断。残ったエアリアルに対し、シャディク隊は全機でアンチドートを発動。エアリアルのガンビットを無力化、左腕を撃ち落として追い詰めるが、ここでエアリアルがパーメットスコアを拡張し、アンチドートシステムをオーバーライド制御して強制終了させる予想外の事態が発生する。
GUNDフォーマットを再起動させたエアリアルは、格闘を仕掛けたレネ機をビームブレイドとガンビットで瞬殺。エナオ機の射撃も完全に読み切って背後に回り、ビームライフルとガンビットで撃墜。咄嗟にメイジー機がタックルし、サビーナがメイジー機ごと撃ち抜こうとするが、ガンビットに防がれ、逆にサビーナ機がガンビットの反撃で大破。
メイジー機はブレイド一閃でシールドを切断され、墜落。サーベルを抜刀したイリーシャ機が迫るが、ガンビットの射撃をシールドで防いだ隙に、エアリアルに踏み台にされ墜落してしまった。
最終的に3機が大破、2機が損傷するも、最大の目的であった「ミカエリスとエアリアルの一騎打ち状況」を作ることには成功した。負けたけど。相手パイロットの過半数が素人だったとはいえ、彼らを無力化する動きも非常に手馴れていて迫力満点。特にメイジーの奮戦は、視聴者にもその性能を納得させる強力な要素となったことだろう。この後の「いつも笑顔で目をかっ開いているメイジーが1番やべーやつ説」に妙な説得力を持たせることにもなったが。
第12話 ドミニコス隊 vs ガンダム・ルブリス・ウル
テロ組織「フォルドの夜明け」のプラント・クェタ襲撃事件で、ドミニコス隊の4機が登場(彼らはクェタに駐留している警備隊なのか、ラジャン・ザヒ直属の総裁護衛隊の一員なのかはハッキリしていない)。デリング・レンブラン総裁の安全を確保するため出撃するが、プラント侵入直前にガンダム・ルブリス・ウルと遭遇、交戦状態に入る。
パーメットスコア2を発現して突っ込んでくるルブリス・ウルに、あっという間に前の3機が交わされた挙句、最後尾のベギルペンデが後ろを取られ、うなじにビームを流し込まれて爆発四散してしまった。
敵がGUND-ARMと知った残り3機は、囲んでアンチドートで無力化する作戦に移る。巧みに彼我の距離を保ち、ルブリス・ウルが一機に気を取られている間に、プラント構造物の死角からもう一機が突撃し、外壁に押さえつける。3機はそのままアンチドートを発動するが、ルブリス・ウルはパーメットスコア4を発動し、アンチドートを強引に無力化。押さえつけていたベギルペンデは引っぺがされて逆に外壁に叩きつけられ、動けないまま蜂の巣にされてしまった(さらに運の悪いことに、爆散地点の内部にはデリング達がおり、爆発に巻き込まれてしまう)。
後退しながらアンチドートを再展開するベギルペンデ。だが最早通用せず、それに動揺したのか真正面まで接近を許し、首からビームを流し込まれ爆散。最後のベギルペンデはアンチドートを展開しつつ射撃を加えるが、動きを止めてしまった隙を突かれ、シールドから露出した右半身に斉射を受け爆散した。
……以上、終わってみればルブリス・ウルのヤバさを強調するかませ犬にされてしまったわけである。
話の都合と言ってしまえばそれまでだが、一応敗因を分析してみよう。
とにもかくにもパイロットの腕前に対して相手が強すぎたのが敗因といえるか。
第20話 ドミニコス隊 vs シャディクガールズ
サリウス・ゼネリを捜索するため、グラスレー寮へ立ち入ろうとするケナンジとグエル・ジェターク。だがその前にシャディクのミカエリスと、サビーナ、レネ、メイジー、イリーシャ(エナオは別件で不在)のハインドリー部隊が立ちはだかる。シャディクにのせられたグエルが一騎打ちを始めてしまい、ケナンジは3名の部下と共にベギルペンデで発進、奇しくも同じグラスレー製MSのハインドリー隊と交戦する。
ハインドリーの武装は火力の低いビーム・ハンドガンと、刺突しか致命傷を与えられない電磁射出ランス。強固なシールドを持つベギルペンデにとってはそれほど手ごわい相手ではない。だが、ケナンジ機がグラスレー寮へ先行して3vs4となり、更にドミニコス隊(とグエル)は相手を殺さず捕縛することを目的としたため、覚悟ガンギマリのガールズ達は持ち前のチームワークで想像以上の粘りを見せた。
同話の主軸はグエルvsシャディクということもあり、ぶっちゃけ戦闘描写が少なすぎて大した分析は出来ないのだが、サビーナがシャディクの援護に向かい、3vs3になるまでガールズが粘り続けたところからすると、彼女たちのスキルがドミニコス隊に匹敵するレベルだった……と考えるのが妥当か。
最終的にレネ、メイジー、イリーシャ機はほぼ無傷のまま、プラント管理社のデミギャリソンに包囲されていた(サビーナ機はグエル機により大破)。ベギルペンデ達はガールズを鎮圧した後、管理社にその場を任せ、ロングスナイパーライフルを母艦から受け取った後にケナンジを追ったものと思われる。
第20話 ケナンジ機 vs ガンダム・ルブリス・ソーン
3機のガンヴォルヴァを伴い、アスティカシア学園への無差別攻撃を開始したガンダム・ルブリス・ソーン。学園に侵入していたケナンジは「ガンダムだと!?」とシリーズお馴染みの台詞を叫び、ルブリス・ソーンに挑む。
プラント・クェタでの戦訓(アンチドート効かない)からか、ケナンジはアンチドートを使用せず、距離を維持したまま射撃戦を挑んだ。ヴァナディース事変で経験した鬱陶しい歌GUND-ARMの脅威に怯えながらも、ルブリス・ソーンの射撃をシールドで防御し、そのまま演習区画におびき寄せる。機動力で翻弄し隙を突こうとするルブリス・ソーンに対し、ケナンジ機は常にシールドを敵の攻撃に向け、確実に防御。
ガンヴォルヴァの対応こそ管理社のデミギャリソンと命知らずの学生パイロット達に任せざるを得ず、学園は甚大な被害を受けることになったが、シャディクガールズを鎮圧した部下たちが到着するまで、ルブリス・ソーンを演習区画に拘束し続けたことは評価されるべきだろう。
シールドを銃撃で弾き飛ばされたルブリス・ソーンは、間髪入れずにビーム・サーベルユニットを展開して斬りかかった。ケナンジは第9話のメイジー機と違い、シールドの真正面でサーベルユニットを受け止め、防御に成功している。サーベルユニットが出力を上げたことで力尽き、真っ二つに切断されてしまったものの、ベギルペンデ本体はかろうじて無傷。ノンキネティックシールドは決してアンチドート専用装備ではないことを、その身で証明して散ったのである。
第20話 ドミニコス隊 vs ルブリスシリーズ
その後、何処からともなく現れたガンダム・ルブリス・ウルがルブリス・ソーンに挑みかかり、遂には組み付いて動きを止めた。ガンヴォルヴァも停止し、テロリストの仲間割れと判断したケナンジは、合流した部下の連絡を聞いて一旦後退。部下たちはロングスナイパーライフルの射撃姿勢(射撃手と護衛のコンビ)を整え、ルブリス・ウルを振りほどいた後に停止したルブリス・ソーンのコクピットを狙撃、見事に直撃させた。
ところが、相方が沈んでいく様子を見たルブリス・ウルはもがき苦しむようにパーメットスコアを上げ、ガンヴォルヴァを再起動させて狙撃直後のベギルペンデ隊に突っ込ませた。予想外の動きにドミニコス隊は対応できず、ロングライフルはへし折られ、護衛機もビームマシンガンで損傷する。ケナンジ機も組み付かれて動けないうちに、ルブリス・ウルは学園外へ逃走してしまった。
――2機のGUND-ARMと、そのパイロット達に何があったのか。ケナンジは少し後にその真相を知ることになる。
学園の被害を考えると、一番じゃないやり方と結果ではあったが、ベギルペンデは単機でGUND-ARMと互角に渡り合い、そして不意打ちとはいえ撃墜に成功した。ガンダムシリーズでも数少ない「ガンダムを斃した量産モビルスーツ」に名を連ねたのである。
総括
以上、ベギルペンデは様々なパイロットに操られ、様々な戦場で活躍した。時には情けない姿も見せたとはいえ、しかるべき状況ではしっかり戦果を出している。よく主人公やライバルに無双され雑魚扱いされるガンダムシリーズの量産機の中でも、そこら辺の凡百モブとは違う印象を残せたと評してよいのではないだろうか。
他シリーズと比較したベギルペンデの立ち位置としては、ジェガン、サーペント、GN-X、グレイズのような高性能量産機に該当すると言えるだろう。しかし作中描写は、むしろリーオーのような「それを扱うパイロットの顔面偏差値操縦スキルによって、雑魚にも、強力な存在にもなる」一般量産機に近い。『水星の魔女』が生んだ、量産機界隈の新たな星である。
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- ベギルベウ | 機動戦士ガンダム 水星の魔女 公式サイト
- HG 1/144 ベギルベウ | バンダイ ホビーサイト
- ベギルペンデ | 機動戦士ガンダム 水星の魔女 公式サイト
- HG 1/144 ベギルペンデ | バンダイ ホビーサイト
関連項目
- 機動戦士ガンダム 水星の魔女
- ケナンジ・アベリー
- サビーナ・ファルディン
- レネ・コスタ
- イリーシャ・プラノ
- メイジー・メイ
- エナオ・ジャズ
- ハインドリー / ミカエリス(機動戦士ガンダム 水星の魔女) - グラスレー製MS
- ガンダム・ルブリス / ガンダム・エアリアル - 対戦相手
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