それは一般に失敗と言いますありがとうございますとは、2023年2月17日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって行われた「H3ロケット試作機1号機に関する記者会見打ち上げの記者会見」において、共同通信社の鎮目宰司(しずめ さいじ)記者が担当者に向けて放った捨て台詞である。
概要について確認したいんです、ちょっともやもやするもんですから
2023年2月17日、種子島宇宙センターにおいて新型主力機となるH3ロケットの試作1号機の打ち上げ作業が行われた。
しかし発射直前に異常を検知。その結果固体ロケットブースター(SRB)には点火されず、打ち上げは予定通りには実施されなかった。
これについてJAXAは打ち上げを中止と発表。記者会見がZoomにて行われたが、共同通信社より以下の質問があった。
- 「中止と失敗について曖昧である」
- 「(厳密な用語は別として、)意図せず止まったものは一般的に失敗ではないのか」
それに対して、担当者は以下の趣旨の回答を行った。
- 「ロケットは問題があった際に常に安全に止まれるように設計している」
- 「意図しないというものは、その範囲を超えて止まらないことが起こる状態」
- 「想定している範囲内で止まることは、失敗と言い難い」
- 「現在は、想定された異常を検知したら止まるというシステムの範囲内で止まっている状態」
しかしこの説明に納得がいかなかったらしく、記者は「わかりました。それは一般に失敗と言いますありがとうございます」と返して質問を終了した。
鎮目記者について
この発言を行った鎮目氏は、1973年の千葉生まれ。
発言で名前が広まったことから、2023年2月17日17時7分付けでWikipediaの単独記事すら立てられている。
共同通信社には1996年に入社し、佐賀支局などを経て2004年より科学部に所属し、2017年からは、科学部・原子力報道室次長といった役職に就いており、原子力や地震防災、福島原発事故などの取材を担当しており、科学方面には明るい人物であった。
また、2015~2016年にかけては岩波書店『科学』で福島原発事故に関連して「漂流する責任:原子力発電をめぐる力学を追う」を連載していた。
背景説明を書いたからと言って何か著しく不具合があるわけではないですよね
インターネット上ではさながら誘導尋問のような質問内容と横柄な記者の態度に対して批判が噴出。
確かにライブ配信では補助ブースター「SRB-3」が点火しなかったとのアナウンスがあったが、その後、異常を検知してシステムがSRB-3への着火信号を送出しなかったことが判明している。
しかし、その段階を踏む前に共同通信はいち早く「打ち上げ失敗」と報じてしまったため辻褄合わせが必要になったのではないか、という憶測が流れている。真偽の程は定かではないが、誘導尋問のような質問をする理由としては確かに考えられる。実際、共同通信はその後もH3に対して「中止」という語を用いた報道を行っていない。
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https://twitter.com/kyodo_official/status/1626397032943583234
なお、NHKや朝日新聞などの他社はこの段階ではあくまで「打ち上がらず」と報道している。また、その後の報道ではJAXA発表通り「中止」と報じている。
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https://twitter.com/nhk_news/status/1626397527380758528
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https://twitter.com/asahi/status/1626399548292882433
今回着火しなかったSRB(ロケットの両側に付いているブースター)は固体燃料ロケットである。固体燃料は一度点火すると最後、燃料が全て燃え尽きるまで止められないという性質を持っているため、SRB点火は全ての安全確認が済んだ最後の最後に行われる。今回のケースでは、なんらかの異常を検知したことで点火信号が送られることがなく、結果として異常がある機体を上空に放たずに済んだと考えられる。
このような異常が発生した際に安全な状況(今回で言えば「点火しない」こと)になるような設計はフェイルセーフといい、ロケットに限らず機械一般の設計思想において重要なものである。実際に記者会見でも「ロケットは問題があった際に常に安全に止まれるように設計している」と説明されている通り、今回はその設計が正しく機能したと言える事例であろう。
なお、SRBの前に点火したメインエンジンは液体燃料であるため、燃料の供給を停止すれば消火できる。
カウントダウン中にもうもうと噴射煙を上げていたのはこのメインエンジンの方で、打ち上げ6.3秒前に点火する。こちらは問題なく稼働していたとみられており、SRB点火中止を受けて消火・停止した。
「打ち上げ失敗」という表現の危険性について
共同通信記者は「それを失敗と呼ばれたからと言って、何か著しく不具合があるわけではないですよね」などと言っているが、著しく不具合がある。打ち上げ成功率はそのロケットの信頼性そのものであり、特に商業用ロケットでは非常に重要な指標なのである。そのため、打ち上げ「成功」「失敗」「中止」などの条件はかなり具体的に決まっており、日本だけでなく世界中のロケット打ち上げ成功率はこれに従っている。
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https://twitter.com/LH2NHI/status/1626498416745525250
このような事情があるため、大手マスコミが無知と無理解で「打ち上げ失敗」などと見出しをつけて報じることは、H3の、ひいては日本のロケット開発に重大な悪影響を及ぼすのだ。
確認ですが、つまり再打ち上げしたけれども、考えていなかった異常が起きて爆破された。こういうことですね?
こんな感じですったもんだがあった「H3」の1号機だが、2週間ほど経った3月7日の午前10時37分に、再び鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。
今度はSRBにも点火して機体は空へと上っていったものの、2段目のロケットが点火せず、その後、指令破壊の信号が送られた。
その後の記者会見でJAXAは打ち上げに失敗したと謝罪。今度こそは正真正銘の失敗であり、先のJAXAはもちろんNHKをはじめとした各マスコミも失敗と報じている。
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https://twitter.com/nhk_news/status/1632927248696197123
「H3」初号機の打ち上げは、計画では打ち上げからおよそ17分後に、搭載した地球観測衛星「だいち3号」を軌道に投入する予定だった。 ところが、発射から13分55秒後、ミッションを達成する見込みが無いとして地上からの指令でロケットを爆破する「指令破壊」の信号が送られ打ち上げは失敗した。
「失敗への対策をすることでさらに時間やコスト面でも負荷がかかることになるが、価格だけでなく信頼性や使い勝手など、総合的な観点で国際競争力を確保していくことが課題だと考えている。原因究明と対策についてできるだけ透明性をもって示していくことが、特に海外のユーザーから信頼性を確保するために必要だ」
機体はフィリピン沖の深海に落下すると思われるが、現時点で回収は考えていないという。
見物に訪れた人たちの反応
文字色および太字は編集者による強調であり、原文にあるものではありません。
「まさかだ。やっと打ち上がったのに残念だ」。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が7日に発射した新型主力機H3ロケット1号機。約千人が集まった近くの見学場では打ち上げ直後、歓声と拍手で沸いたが、その後、指令破壊の情報が伝わると一転、落胆の声が広がった。
晴れ渡る空の下、種子島宇宙センターから約6キロ離れた鹿児島県南種子町の長谷公園。
東京都から父親と2人で訪れ、宇宙飛行士のコスチュームを身にまとった鶴まり乃ちゃん(5)は打ち上げ失敗と聞くと、うつむいて言葉を失った。いったん打ち上がったロケットが見えなくなり、成功と思い込んで見学場を後にした人も多かった。
政界の反応
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https://twitter.com/kishida230/status/1633091122204647425
松野官房長官は午後の記者会見で「打ち上げが失敗となったことは大変遺憾だ」と述べた。
関連生放送を見られてしまうことも甘受せざるを得ないという状況ではないですか
飛ぶはずの外部リンクが飛ばないなという状況に見えるんですが
以下のリンクはタイムシフト(アーカイブ)の当該箇所への時間リンクになっている。
ITmediaの記事にはやりとりの文字起こしが掲載されている。
それは一般に関連項目と言いますありがとうございます
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