『ネズミ講』とは、狭義では経済犯罪を目的とする結社である『無限連鎖講』を示す言葉である。
広い意味では、無限連鎖講が『無限連鎖講の防止に関する法律(昭和五十三年十一月十一日法律第百一号、以下『法』)』で禁じられている=即ち違法行為である。
その変形である連鎖販売取引=マルチ商法やマルチまがいビジネス、ネットワークビジネス全般を指すことが多いが、これらの用法は厳密に言えば誤用であり、「ネズミ講」と「マルチ商法(ネットワークビジネス)」はそれぞれ言葉を使い分けなければならない。
マルチ商法の内容や、ネズミ講との違いについては記事「マルチ商法」を参照。
概要
そも『講』とは室町時代以降、盛んになった『講』と言う相互扶助組織が、純粋に金銭出資を目的として互いに営利を図りあう『頼母子講』のような組織に発展した相互金融のことである。現代ではすべて銀行転換したりしている。詳細は『講』を参照。
ネズミ講は『講』という単語は用いているが上記の『講』とはおおよそ関係なく、相互互助や金融投資といった仮想のファンドシステムを提供し構成員を集めるからくり、つまりネズミ講とは、詐欺ではないかという疑惑を含んだ視点から金融にて集まった『講』(=集団・集金のからくり)に対してつけられた一般呼称である。この場合の『講』は金融集団や金融のからくりに対しての『講』という意味で使用されている。
その中で、投資して利益を得るなどといった名目、もしくは高い収益性や将来的な配当、還元を謡い構成員を集めておき、実質は構成員からの出資(名目は出資に限らず債権や保険など多岐にわたる)のみで運用し、始めから破綻しているものがネズミ講と呼ばれる。その構造上、構成員からの出資などが主収入である為、構成員が構成員を勧誘する仕組みが作られていることが多く、子供が子供を増やしていく増え方がまるで鼠(ネズミ)のよう、つまり鼠算的に増えていくことからネズミ講と呼ばれるのである。
元々はこれを取り締まる法が存在しなかったが、1970年代に「天下一家の会」によるネズミ講により、延べ112万人から総額1,900億円もの大金がだまし取られる事件が発生した。これを受けて、1978年にネズミ講を規制する法律が出来たのである。
ネズミ講(無限連鎖講)の現在の定義
ネズミ講(無限連鎖講)の法的な定義については、法2条によれば、以下の通り。
A 金品(財産権を表彰する証券又は証書を含む。以下この条において同じ。)を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして、
B 先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、
C 順次先順位者が後順位者の出えんする金品から
D 自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする
E 金品の配当組織をいう。
(総務省 e-Gov 法令検索 より。アルファベットと改行は筆者)
この法律の施行により、無限にネズミのごとく子ども会員を増やしさえすれば親は多額の配当を得られる仕組みを開設、運営、勧誘をしたものは詐欺罪などにあたらなくても最高3年の懲役の処されることになった。
しかし、AからEの要件のすべてを満たさないで運営するタイプで、不正常な形で金品の出資を求めて集金して、配当を保障し、履行できず社会問題になる例は近年の円天事件以来多々あり、『ネットワークビジネス』などと紛らわしい呼称を自称しつつ、高利回りを保障して集金をさせ、運営者が姿をくらます例も多い。
なお金銭の出資に関しては『出資法』と言う法律で規律されており、出資や金銭の管理には厳格なルールがある。
年金制度とネズミ講
注意、この段(年金制度とネズミ講)はネズミ講そのものには関係ありません。
一部の識者においては日本国の年金制度を国営のネズミ講と比喩することがある。
しかしながら上記にあるネズミ講の定義を厳密に解釈するならば、日本国の年金制度はネズミ講には該当しない。
なぜならば、年金保障の制度設計は会社勤めなどにより親を見れない子に替わり、国家・社会が親に対する扶助を行うものであり、歴史で解説した本来の意味での『講』に近いものであるからである。またネズミ講の定義である加入者が無限に増加するものを満たせないことからも該当しない。
ただし、2013年末現在、お世辞にも良好に制度が動作しているとはいい難く、若年層(この場合は2013年時点における50歳以下を指し示す)にお金を出させるだけ出させて払い戻しの可能性すら見込めないという意味合いにおいて、腹立ちとやっかみをこめて最終的な結果が類似しているネズミ講を比喩に使用することは必ずしも的外れとはいいがたいといえる。
よって、結論から言うならば日本国の年金制度はネズミ講ではない。
ただし、最終的には出金だけ強いられて還元し得ない制度という意味でネズミ講のようなものといわれてもやむをえないと締めくくることができる。
余談であるが、昭和35年頃の日本人の平均寿命は男性が約65歳、女性が約70歳であった。ゆえにこの頃はまだ年金の支払が始まっても男性なら平均5年、女性なら平均10年も支払えば亡くなっておしまい、と考えられていて、現代のように大半の人が20年前後か、もしくはそれ以上もの長い間年金の支払を受け続けるような事態を想定していなかった…いや、想定できなかったのである。少子高齢化社会に加えて医療の急速な進歩と長寿化が年金制度の危機を招いたことは明白であり、(結果はともかくとして)決して国は最初から国民を騙そうと思っていた訳ではないことがこのことからもわかるであろう。
なお、最後ではあるが本来ならば親の面倒は子が見れるのが望ましいが、昨今の勤労状況や若年者の収入状況では厳しいといわざるをえず、ネズミ講などとは呼ばれない多くの人が納得できる社会保障制度の再構築が現在求められている。
関連動画
関連項目
- e-Gov 法令検索
- マルチ商法
- 講
- ネットワークビジネス
- ポンジ・スキーム - ネズミ講とは性質が異なるが、日本ではポンジ・スキームの知名度が低いため、「ネズミ講のようなもの」と呼ばれることが多い。いずれにしろ詐欺だが。
- ソーシャルゲーム
- 第二地方銀行
- 消費者金融
- 金融庁
- アルバニア
- 与沢翼
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