通俗的な意味での「確信犯」
結果を予想した上で行動を起こしたとしか思えない行為あるいは人を指す言葉として使われることが多い。
本来の法律学等での用法
誤用の多い単語として『役不足』と並んでネット等を通して有名となった言葉の一つ。
本来の語法としては、上記のような「確信犯」の用法は正しくないとされてきた。
本来「確信犯」は、自分の行動の“道徳的・宗教的あるいは政治的な正しさを確信”してなされる犯罪のことを指す法律学上の用語である。
参考までに本来の法律学上の用法について例を挙げて紹介しておく。
【設定】ある電器店員が映りの悪いテレビの調整を依頼された場合
- 「この回路をつなげば直る」と思い込んで操作したが、実は誤った回路を繋いでしまい、テレビを故障させてしまった → このケースは過失犯となる。(※ただし、日本の現行刑法上、器物損壊の過失犯は処罰されない。刑法38条1項を参照。あくまで民事責任が発生するのみ。)
- 「このテレビを壊せば客は新しいテレビを買ってくれる」と考え、わざと間違った修理を行い、テレビを壊した → このケースは故意犯であり、本来の法学的用法では確信犯には該当しない。しばしばこうしたケースが「確信犯」として誤用されてきた。
- 「テレビは社会的に害悪なものであり、この世に存在してはいけない」との信念のもと、テレビを破壊した → これが本来の意味での「確信犯」である。
確信犯者は政治犯や思想犯に多いが、日常的な光景においても確信犯に遭遇する可能性はある。例えば、
- 救急救命士が重傷患者を救いたいがために、法律で禁じられている治療行為を搬送中に行うといった行為
なども一種の確信犯に当たると解釈される。他にも、
ももちろん、確信犯に該当する。
確信犯と呼ばれるか否かは、これらのケースような「動機」の部分に裏付けがあるか否かによって違ってくる。もし前述のような行為の本音の動機が「自分の金儲けのため」であったとすれば、それは確信犯ではないことになる。
通俗的用法の一般化
『確信犯』は本来の意味とは別に上記のような用法が、通俗的な慣用表現として広くつかわれている。
本来の意味とかけ離れており、世間一般で使われている意味での『確信犯』は辞書に記載されていないことなどから
日本語の誤用例の代表として広く知れ渡り、その結果本来の意味が広がったという背景もある。
そのためこのような通俗的な表現は誤用とされ、最近では逆に使われにくくなっている部分もある。
しかし「何気なく」が若者言葉の「何気に」へと変化したり、本来良い意味ではない「やばい」という言葉がいい意味で使われるようになったり、いつの間にか 「病気」が褒め言葉になっていたり、「紳士」が変態とほぼ同じ意味になっていたり、また、古語という概念そのものが示しているように、このような変化は人々に使われる言葉の持った、不可避の性質である。
そのため、「確信犯」についても、今日広く使われている意味をして誤用だと指摘するのは適切でないとの見解も、徐々にではあるが呈されてきているところである。
実際現在の国語辞書では本来の意味と共に通俗的意味も併記している物が増えており、一概に誤用とは言えない状況である。
しかしながら専門用語である以上司法に関する場などにおいてはそういった事情は通用しないということも気をつけなければならない。
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