連星とは、2個以上の恒星が重力による力学的作用により軌道運動している天体である。二重星や双子星とも呼ばれる。恒星以外でも中性子星やブラックホールなども連星系を形成する。英語でBinary star。
概要
一般に明るい方の星を主星(Principal star)、暗い方を伴星(Companion star)と呼ぶ。例えばオリオン座ζ星は、主星のAaは2等星で太陽の33倍の質量と20倍の半径を持つ青色超巨星で、伴星のAbは太陽質量の14倍と7.3倍の半径を持つ青白い準巨星である。
観測の手法により、実視連星、分光連星、食連星と分類される。実視連星は望遠鏡などの光学的手法で2つ以上の星が公転運動していることが確認される天体である。しかし、実視連星の多くは公転する距離が長く、伴星が主星の周囲を公転するのに数百年から数千年という時間がかかるので、光学的望遠鏡でその一瞬だけ撮影したものでは軌道要素が不明な場合が多い。オリオン座ζ星の場合は公転周期は1500年とされる。分光連星とはスペクトル線のドップラー効果などを観て連星の存在を確認するもので、主星と伴星の距離が近く公転周期が短い連星に用いられる。食連星とは、公転運動の中で一方を隠すことによって星の明るさが周期的に変動することにより存在が判明する連星である。
この「分光(spectroscopy)」と「食(Eclipse)」観測の概念は、恒星の連星系に用いられるだけでなく、太陽系外惑星検出方法の一つである。ドップラー法(Doppler spectroscopy)とトランジット法(Transit method)がある。
連星発見の歴史
連星という言葉は1802年にウィリアム・ハーシェル(William Herschel)によって最初に作られたとされる。1780年にハーシェルは700個以上の二重星について星同士の離角と位置を測定した。その結果、そのうちの約50個が20年の観測期間の間に位置を変えており、連星である可能性が高いことを示した。
連星の誕生
連星が形成される過程は、まだ謎が多いとされる。おおまかに、主星と伴星が同時に誕生したものと主星に後から何かしらの原因により重力作用により伴星が束縛されたものに分けられると考えられる。
恒星のうち少なくとも約25%は連星系であるとされ、さらに連星系のなかで10%は3個以上の恒星からなる系であるとされる。
連星のケプラー運動の軌道
惑星のケプラーの法則(Kepler's laws)を知っている人も多いかと思うが、この法則は連星系にも適応される。ケプラーの法則は楕円軌道の法則、面積速度一定の法則、公転周期の2乗は軌道長半径の3乗に比例する調和の法則である。運動する系を物理的に考察するとき、重力中心系の座標をとる場合がある。等しい質量の二重星の場合は、楕円軌道の一つの離心点を二つの星が共有するような二重の異なる楕円軌道を描く。特に2体問題では、質量中心や換算質量を用いて方程式を表すことが多い。
連星が三重連星の場合、三体問題を扱うことになるが、これは複雑系(カオス)のようになり特殊な場合以外解くことができないとされる。例えば、三体問題の中心天体の周りを公転する小天体が他の天体から摂動を受けるとき、小天体の軌道面傾斜角が大きい場合に見られる古在メカニズムなどがある。
また、ニュートン力学の三体問題とは別に一般相対論的軌道計算を行うことにより数式計算による解析解(厳密解)が得られる場合がある。
こと座β星
この星は、青白色の巨星と準巨星からなる連星である。2つの星は非常に近い位置にあり、お互いの星が重力で引き合うことによって、潮汐力の及ぶ範囲にて星の形が楕円に引き伸ばされている。食変光星の一種とされていて、二つの星の距離が非常に近いため、およそ300km/sで高熱のガスがなどが他方の星に流れ込んでいる。このような星はこと座β型変光星と呼ばれている。近接連星(Close binary)ともいう。
こと座β星は、約12.9日の周期で、+3.25等級から+4.36等級の間で変光する。2つの星が非常に近接しているため、光学望遠鏡では分離して観ることはできない。
コンパクト天体を含む連星
連星にはコンパクト天体を伴なう場合がある。有名なのは白鳥座X-1で太陽系から約7300光年の位置にある。ブラックホールと考えられるコンパクト天体の質量は太陽質量の21.2倍と推定されている。主星の青色超巨星とブラックホールは、約0.16 天文単位 (au) の距離で公転している。これは、太陽-水星間の距離の半分にも満たない。X線を放射していて、地球から観測可能なX線源としては最も強力な天体の一つである。長い間、ブラックホール候補天体とされていて、1974年に物理学者のスティーブン・ホーキング(Stephen William Hawking)とキップ・ソーン(Kip Stephen Thorne)の間で有名な「賭け」が行われたことでも知られている。
PSR B1913+16(ハルス-テイラーの連星パルサー)と呼ばれ中性子星の連星系であり、アレシボ天文台(Arecibo Observatory)で観測されている。重力波の間接的証拠の天体とされている。
また、ブラックホールは光学的望遠鏡ではその存在を直接観察することができないとされたが、EHT (Event Horizon Telescope) は、地球規模の電波干渉計を用いてブラックホールの撮像に成功した。
そして、重力波によるブラックホール連星の初観測(GW150914)がある。中間質量ブラックホールの衝突合体で信号は約0.2sであった。光度距離で約440Mpc、太陽質量の約62倍のブラックホールが形成された。コンパクト天体の連星の形成率や連星系が関わるブラックホール進化過程などは次の宇宙空間での干渉計型検出器で、さらに明らかになる可能性が高い。
主な連星一覧
連星の名称 | 別名称 | おおよその等級 | 備考 |
アンドロメダ座γ星 | アルマク | 2.3-5.1 | 比較的近く天体望遠鏡で観れる著名な星。 |
おうし座α星 | アルデバラン | 1.1-10.9 | パイオニア10号の進む方向。 |
オリオン座ζ星 | オリオンの帯 | 2.0 | X線望遠鏡チャンドラで撮影。 |
こぐま座α星 | ポラリス | 2.1-8.9 | 北極星。セファイド変光星。 |
こと座β星 | 3.0 | 食変光星。 | |
さそり座α星 | アンタレス | 0.88-1.16 | さそり座でもっとも明るい星。 |
ケプラー16 | アルゴル型食変光星。惑星の影響がみられる。 | ||
はくちょう座β星 | アルビレオ | 3.0 | 北天の宝石。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。 |
はくちょう座X-1 | X線源。ブラックホールとの連星。 |
関連動画
囲碁にも三連星というものがある。
関連外部リンク
- 連星 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E6%98%9F
- 連星 https://astro-dic.jp/binary-star/
- 太陽系外惑星 https://astro-dic.jp/extrasolar-planet-2/
- 連星の軌道決定法http://www.fnorio.com/0203binary_star/binary_star.html
- 双子の赤ちゃん星を育むガスの渦巻き (コンピュータシミュレーション)https://www.youtube.com/watch?v=IKYMtFth2QU
- 双眼鏡・小望遠鏡でも楽しめる重星・連星 一覧表 http://astrohouse.academy.jp/seiza/itiran-zyusei.htm
関連項目
- 2
- 0pt