高速馬場とは、競馬において相対的に速いタイムで決着しやすい馬場状態のことを指す。
概要
高速馬場の明確な定義はなされていないが、概ね開催中にレコード更新やレコードに近いタイムを複数回記録するような馬場のことを指すことが多い。基本的に人工的に建設され、人の手が多く入った所謂「作られたコース」でよくみられる馬場である。
高速馬場の大まかな特徴としては
という二点が挙げられる。しかし近年では、開催期間外に芝の生えている路盤に部分的に小さな穴をあけて芝の通気性を良くして芝を傷みにくくしつつ、馬場を柔らかくする効果があるとされるエアレーションや定期的に馬場に切り込みを入れて路盤に揺さぶりを入れてコースを整えつつよりクッション性を高めるシャタリング等の技術の向上により柔らかいながらも均一且つ丁寧に整えられているため早い時計が出やすい「柔らかい高速馬場」が日本では増えているため、「馬場が固い=高速馬場」や「馬場が柔らかい=高速馬場ではない」というわけではなくなってきている。その為、前者が高速馬場の条件であるとは現在では言い切れない。
※前者の部分については、騎手の武豊や福永祐一などがレコードが複数回出た時などの回顧において、「走りやすくて時計が出やすい馬場だけど、でも馬場が硬いわけではない」といった趣旨の内容をインタビューやコメントで述べたりしていることが時折あったりする。
各国の馬場について
日本やアメリカの競馬場は平坦或いは勾配も緩やかで、芝やダートの整備も積極的に人の手を入れている場合が多いので高速馬場になりやすい。
一方で自然をそのままコースに生かすという考えが根強い欧州では勾配が激しいコースも多い。例としては凱旋門賞が開催されるパリロンシャン競馬場の高低差はおよそ10m、ダービーステークスが開催されるエプソムダウンズ競馬場の高低差は37m、対して日本で最も高低差がある競馬場は高低差200mの坂がある東京競馬場高低差5.3mの中山競馬場であり、日本の競馬場の倍以上、大きいところでは7倍もの差がある。また、馬場が重く柔らかくなりやすい洋芝を使った馬場が殆どであるため、スピードが出にくく高速馬場にはなりにくい。また、硬い馬場になると故障率が通常の馬場より高くなる傾向があり、このため馬場が乾いて含水率が減少しすぎたとみなされた場合に、散水を行い馬場状態を保持している。
国際招待競走を盛んに行っている香港、UAE、オーストラリア等は基本的に勾配の少ない「作られたコース」であるが、欧州の競走馬に極端な不利が生じないように散水などで意図的に馬場を重くする等の調整を施してバランスをとっている場合が多い。
高速馬場における有利不利と求められる能力
「固い高速馬場」の場合、概ね内ラチ側の馬場状態が良く、内ラチ沿い(いわゆる経済コース)にポジションを取って走る逃げ・先行馬が有利になりやすい。馬場状態が良いため先行馬の体力消耗も比較的少なく、バテたとしても馬場の反発係数が高いため踏み込みが浅くてもそれなりのスピードが維持できるので前残りしやすい。その為、先行馬がバテたところを狙って抜け出す差し・追込の馬は基本的に厳しい戦いを強いられる。こういった高速馬場ではスタート直後によいポジションが取れる瞬発力と操縦性が求められる。
一方で、先述した「柔らかい高速馬場」では「固い高速馬場」と比較すると反発係数が低く、スピードを出したり維持したりするためには踏み込む力強さ、俗にいうグリップが必要であり、バテるとグリップが利かなくなりスピードを維持できなくなり一気に垂れる場合も多い。その為、一転して逃げが不利になり、先行や差しといった最後の直線まで余力を残しながら走れる戦法が有利になる。こういった馬場では何と言っても脚を長く使える持続性、しっかりと踏み込みを入れられるパワーやペースを正確に制御できる騎手の腕前が試される。また先行馬や差し馬が多い関係上どうしても馬群が固まりやすいので、間隙を縫って前方に進出できる操縦性、或いは大外に回っても問題ないと言えるくらいのスタミナも必要不可欠である。
高速馬場への批判とその反論
古くから高速馬場に対する批判は多く、昔で有名なのは宝塚記念でライスシャワーがレース中の故障で予後不良となった際、当時宝塚記念が代替開催された京都競馬場がレコードタイムを連発する高速馬場になっていたことから、高速馬場がライスシャワーの故障した原因だと一部で決めつけられ、やや熱狂的になっていたライスシャワーのファンをはじめとする一部の競馬ファンの間で高速馬場に対する批判の機運が高まった。これに関しては因果関係が分かっておらず、騎手のアラン・ムンロを始めとする競馬関係者や有識者、競馬に造詣の深い著名人の中には「短絡的」とする人も多かった。
近年もレコードタイムの連発と有力馬の故障が同時期に起こるたびに必ずと言っていいほど高速馬場に対する批判が発生するが、高速馬場と競走馬の故障の因果関係は完全には解明されていない。JRA競走馬総合研究所やアメリカでのバイオメカニクス研究からは「最も早い時計が出る馬場が、最も安全な馬場である」とされる。最も早い時計が出る馬場とは競走馬にとって最も走りやすい馬場であり、そうした走りやすい馬場は競走馬にとって最も安全な馬場という考えである。
JRAにとっても有力馬の故障による戦線離脱は競馬人気や馬券売り上げの低下に直結するため競走馬の故障を可能な限り少なくしよう日夜研究を行っており、その研究成果は馬場の整備や管理にも生かされている。その為、高速馬場を頭ごなしに批判する前に総合的なデータから分析して感情的にならずにJRAの馬場管理の取り組みや各国の競馬場との比較を行った上での批評を心がけてほしい。
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