A-4スカイホークとは、アメリカ・ダクラス社製の艦上攻撃機である。アメリカ海軍では既に全機退役しているが、一部の国で現在も運用が続けられている(後述)。
概要
天才設計者、エド・ハイネマン渾身の機体。傑作攻撃機の部類に入ると言ってもいい。
1950年代初頭、アメリカ海軍は実用化された核爆弾の運用機体についての問題を抱えていた。
Mk.7核爆弾の直径は77.5cm・全長4.65mと巨大なものであり、運用できる機体はAD-1(A-1)スカイレーダー、A-2サベージ、F2Hバンシーがあったが前者の二機はレシプロ機体(A-2は変則的にジェット搭載だったが)であり核攻撃には無理があった。後者は無理やり搭載したせいで離陸はいいが爆弾積んだ状態で着陸は無理という状態だった。A-2をターボプロップ化するアイデアがあったが、頓挫しつつあった。A-3スカイウォーリアもあることはあったがあまりに機体が大きすぎた。
当時の実戦運用できる核爆弾を搭載するためには機体は大型化せざるをえなかったが当時アメリカ海軍の空母の大半は大戦時に建造されたエセックス級、ミッドウェイ級が中心で、運用機数の減少に頭を痛めていた。これを解決する大型空母としてようやくフォレスタル級の建造がスタートしたばかりという現状だった。
これらの状況に頭を悩ませていたところ、エド・ハイネマンがひとつのレポートを海軍上層部に提出する。
小型戦闘機の可能性について書かれたものだったが、海軍上層部は小型戦闘機ではなく小型攻撃機を作るように指示を出すことになった。これがA-4の始まりである。条件は小型で安価でMk.7爆弾を搭載可能であること。
エド・ハイネマンは、小型戦闘機を実現するために「増大係数(Growth Factor)」に留意する必要があることに注目していた。つまり機体に装備を追加すると自重が増える。自重が増えると航続距離が減る。航続距離を減らさぬように燃料タンクの容積を増加すればタンク周りの配管が増えて機体重量が増える、となると結果的に脚回りの強化が必要。となるとさらに機体重量は増える。エンジンパワーは足りなくなる…という加速度的な機体重量増加であり、増大係数が10ということは、装備1kgを追加すれば10kgの機体重量増加を招く。ということだった。
大多数の設計者は重量増加を嫌がり、構造フレームに1cm程度の軽減穴を開けるがこれを100個あけたところで10g程度しか軽減できない(し、機体製造の工数も増える)。問題の本質は違うところにあるということだった。
エド・ハイネマンは上記の増大係数とA-1(AD-1)での経験を踏まえて、シンプルな機体レイアウトを考案することとなった。
出来るかぎり機体をシンプル・軽量・小型化することによって空母のエレベーターに機体が収まるサイズとした、これにより機体の重量を増し構造を難しくさせる翼折り畳み機能をオミットすることが可能になった。実際に、エセックス級空母のエレベーターに2機積載が可能なサイズにまでコンパクト化を実現することとなる。
主翼も低翼を選択し、折り畳み機能が必要なくなることにより主翼下に武装を設置することができる。ついでに主翼をアルミ合金の1枚板を中心に構成することで剛性が強くなり機体構造も強化される。A-1ゆずりの内部爆弾倉を持たない思想を受け継ぐこともあいまって積載量が増えることになった。自重5tのわりに4tもの積載能力を可能にしたのはこれが理由である。
さらにはシンプルな機体構造は高い整備性をもたらし、整備能力の高くない諸外国の空軍・海軍での運用を可能にした。
それに加えて小型・軽量であるから運動性も高い。対潜空母ではAIM-9サイドワインダー空対空ミサイルを携行して艦隊防空任務を行ったほど。
こうして作られたA-4スカイホークは、軽量・小型・高機動という能力を生かしてアメリカ海軍のワークホースとして長らく運用され、1970年代にアクロ・チームの「ブルーエンジェルズ」の機体として選ばれたり、海軍戦闘機兵器学校(トップガン)のアグレッサー(仮想敵)役を務めるなどの大役を果たし、海軍、海兵隊では1998年まで使われるという長寿の機体となる。なにしろ生産年数25年。総生産数はおよそ2900機に達することとなった。
パイロットたちから「ハイネマンのホットロッド」「スクーター」と呼ばれ愛されることとなった。
安価で整備性も高いため世界各国に散らばった機体でもある。代表的なところではイスラエルが今も運用中である。また、アメリカ海軍の中古機としてアルゼンチン海軍へ売却され、フォークランド紛争に参加。その他にも湾岸戦争でクウェート空軍のA-4KUが実戦に参加するなどの実績を残した。
その後1997年にブラジル海軍がクウェートからA-4KUを購入し、AF-1ファルカンの名で空母「サン・パウロ」搭載機として配備され2015年5月、AF-1 9機、AF-1B(複座型) 3機に対して近代化改修(アビオニクス、レーダーの入れ替え、機体構造の対応)が行われ、2025年までの運用が行われることになった。
但し、「サン・パウロ」はブラジル軍の戦略(特に財政)から2017年2月に退役し以後は陸上機として運用が続いている。
日本でA-4スカイホークの知名度が上がったのはやはり連載を通してモブキャラの多くがA-4に乗っていた「エリア88」のおかげだといえるだろう。
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曖昧さ回避
- ダンカン・スカイホーク - ダンカンが販売するヨーヨーの名。
関連項目
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