概要
チート(Cheat)とは、「騙す」「不正をする」「イカサマをする」などを意味する一般的な英単語のひとつである。
動詞 他動詞
1 a〈…を〉だます
《★【類語】 cheat は自己の利益や目的を達成するために不正手段で相手をあざむく; deceive は真実を隠したり歪めたりして相手をだます; trick は計略によってだます》.
名詞
1 不可算名詞 [具体的には 可算名詞] 詐欺(さぎ), いかさま,カンニング 《★【比較】 この意味では cheating のほうが一般的》.
2 可算名詞 ずるいやつ; いかさま師,詐欺師. a tax cheat 脱税者.
おそらく日本国内でこの単語が定着するきっかけになったのは、ビデオゲームにおけるチート行為と考えられる。日本語版や非英語圏のWikipediaでもCheatという単語が独立したゲーム用語の記事として扱われている。当然、これは英語版にはなく、該当する記事は「ビデオゲームにおけるチート行為」という扱いである。
また、国内のインターネットコミュニティでは、意味合いが大きく変化し転じたインターネットスラングとしても定着しており、最近では自主制作の小説(SS)や商業向けのライトノベル作品でもスラングの意味で用いられていることもある。こうしてインターネット上で広まるにつれて意味合いや解釈は、個人やコミュニティによってかなり曖昧になっており、異なる意味合いの混同や誤った線引きも珍しくない。
コミュニティによって意味合いや解釈が大きく変化して誤解されやすく、かつ既に誤解して使っている人も多い単語であるため、読み解く際や用いる場合には、単語単位で解釈せずに文脈で判断したほうがいいだろう。
以降は下記を順を追って解説する。
1. ビデオゲームにおけるチート
先に述べたようにチートとは本来は単に「不正をする」という意味の言葉である。誤解されがちだが必ずしもツール類を使用したいわゆる「Hack(ハッキング)」だけがチートに該当するというわけではない。バグやシステムの不具合を利用した「Glitch(バグ技)」「Exploit(脆弱性利用)」「Dupe(アイテム複製)」なども含めた不正行為全般を指して文字通りチートと呼ばれている。
※例外として「アビューズ(八百長・談合)」は独立した用語で呼ばれていることが多い。
デバイスが統一されているコンソールゲーム機では、従来にはない機能を備えた外部デバイス、例えば自動連打機能があるコントローラーなどを使用することもチートの一種である。ゲーム機のメーカーから承認され正式にサポートされているデバイスであっても、ゲームソフトによってはオンライン上で使用した場合は「ハードウェアチート」という扱いで禁止されていることもある。
後述するゲームの改造(ハックロム)やMOD、TAS等も厳密に言えばチートとして解釈することも出来るが、それぞれのコミュニティ上では区別されていることが多いだろう。一般的にチートと呼ばれることの多いオンライン上での不正行為とは目的や評価が大きく異なるからである。ただし、ニコニコ動画上では線引きがかなり曖昧のようで、例えば、自由にゲームを編集して遊ぶ内容のサンドボックス系MODを使用した動画が投稿者本人によって単にチート扱いされていることもある。ややこしい…。
想定されたチート
オフラインにおける1人プレイなど、ゲームによっては特定の条件を満たして使用できる公式のお楽しみ要素としてのチートなどが用意されている場合もある。無敵・弾数無制限・所持金最大化・残機最大化・好きな武器が使い放題といった強力無比な舐めプ可能なもの、人物が滑稽な見た目になったり敵が全員ロケットランチャー持ちなど腹筋崩壊なお遊び全振り、逆に難易度が上がるようなものまで様々。
複雑な隠しコマンドを入力しなくとも使用できる場合もあるが、チートの使用によってクリア時の最高ランクが取得できない、戦歴や隠し要素解放には反映できないといった一応の制限がされている場合も多い。
当たり前だが全員無敵では対戦が成り立たないため、オンライン対戦等では使用できない。
(そもそも選べない)
後述のチートコマンドも参照。
チート行為の評価
ゲームにおけるチート行為の評価はゲームの内容によって大きく変わってくる。
シングルプレイやソロプレイなど、あくまで個人の範囲で遊ぶことに限るなら許容する人が大半だろう。例えば自分の実力でどうしてもできない、だから仕方なくという形である場合であったり、何らかの検証のために使用したり、専らネタプレイやバカプレイなどが目的だからである。例えば、ニコニコ動画で使用され投稿されている「チートバグ動画」というタグとその動画はネタプレイを目的としており、笑える動画として概ね肯定的に解釈されている。
ちゃんと購入したのに、理不尽な難易度を前にゲームをクリアできない人にとって、チートは最後の切り札かつ希望になりうる。正規で購入している以上、どのプレイヤーにも最後までプレイする権利があるからだ。また、ゲームが上手でない二次創作者が原作を詳しく知るために、やむを得ずチートに手を出すケースもあり、チート使いだからと頭ごなしに非難するのは愚の骨頂と言える。
STGといった高難易度ジャンルでは無敵化チートを施し、練習目的に使う場合もある。
ただし、チートによるクリアやスコアをあたかも正規の物であるかのように騙ることは許容されないと考えるべきである。また、対象のゲームによってはプレイ動画が権利者によって不適切な内容であるとして削除されることもある。
対戦やオンラインの場では許容されることはない。
ゲームバランスやコミュニティの崩壊を招き、他のプレイヤーに不快感を与えるどころか、結果として業務支障や経済的損害を引き起こし、開発運営元やその場にいないプレイヤーにも多大な迷惑がかかるだろう。これは"叩かれるから"ではなく歴とした犯罪行為であり、アカウントの停止削除だけではなく、刑事責任や民事裁判の問題に発展する。
オンラインゲームにおける不正行為の一覧 の項目も参照。
人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、5年以下の懲役又は 100万円以下の罰金に処する。
…要するに偽情報や不正な指令で運営側の意図しない動作を起こすもの。結果的にゲームバランスは崩壊し、課金・利用者の激減など大損害である。
実際に日本国内でもオンラインゲーム上でチート行為をした複数の人物が書類送検された例をはじめ、ソーシャルゲームでチートを行った人物やチートツールを開発[1]した人物が摘発・逮捕されている。
- 「サドンアタック」のチート使用で書類送検された事件を神奈川県警が説明
- 不正プログラム(チートツール)利用によるチート代行者の逮捕に関するお知らせ
- 「パズドラ」のチートツール開発者ら、組織犯罪処罰法違反で逮捕へ
名称など
オンライン上のチート行為の場合、日本国内のMMOなどのオンラインゲーム上ではチートという文字を一つに繋げた見た目が似ていることから、漢字の「升」と呼ばれることもある。英語圏では不正行為を行ったプレイヤーは「Cheater(チーター)」と呼ばれることもある。
一方で、単に凄腕のプレイヤーに対して根拠の無い不正疑惑の声が投げかけられることもある。何であれプレイヤーを蔑む行為はコミュニティが荒れてしまうだけなので避けるべきである。本当に不正行為を行っているプレイヤーと遭遇してしまった場合は、管理者や運営者に報告をすることが一番の解決策である。
対策
運営側においても、通常使用においてありえない不正/異常な値を検知する、意図せぬソフトが動作している場合はゲームを起動させないといった対策も取られる。例として連射機などが使用できなかったり、一定以上の連射間隔を無効にするといった対策がされている場合もある。
ただし人手不足であったり、バグや不具合の修正に追われているなど後手後手になっている、元からいい加減で野放しといったケースも皆無ではない。
以降は個人的な範囲で遊ぶためのシングルプレイやソロプレイでのチートの種類について解説する。
チートコマンド
主に海外のゲームタイトルでは開発者用機能へのアクセス、または単に隠しのお楽しみ要素として、ゲーム内の数値を書き換えるようなチートとほぼ同等の事が出来るコマンドが用意されていることがある。この場合、使用時にはチートを使用していることが画面上に明示され、正規のプレイではないと明らかにされると同時に、進行状況・戦績のセーブを制限されたり、エンディングに到達出来なくなるなど何らかの制限が掛けられることもある。
項目序盤の「想定されたチート」を含む場合もあるが、特定の条件を満たさずとも使用できる、一般公開していない(ゲーム中にヒントもない)ケースもあるなど作品によって差異がある。
また、国内のゲームでもパスワード入力画面や、プレイ開始の際にプレイヤー名やゲームの主人公名を入力する場面で、特定の文字を入力すると、チートコマンドと同様の効果が発生するものもあり、これもチートコマンドに準ずるもの(一種)と考えられるだろう。
競技におけるチートコマンド
これらチートコマンドとそれに準じたものは、ゲーム当初やゲーム進行で実行可能なものや、条件付きで解除・実行可能な隠し要素的なもの等、ゲーム製作者がゲーム内に用意していたものである。その為、その性質上「実機で理論上可能なあらゆる手を用いる」ことを是とするTASなどにおいても根本的には使用可能なはずであるが、やっぱり「チート」であるそれを用いたものをそのゲームの最速として良いかは意見が分かれるため、チートコマンドを起動後に入力して利用する、もっと言えば予めチートコマンドを解放・入力した状態のシステムデータから開始したTASやRTA(当然明示されている)、逆に制限プレイではないがチートコマンドなしを前提するTASやRTAがそれぞれ存在する。
据え置きゲーム機 / 携帯ゲーム機
主に専用のプログラムが内蔵された改造ツール(PAR,X-T等)やエミュレーターを使用して、ワークメモリ上などのデータの数値を改変するなどして、プレイヤーが有利になるようにゲームの動作を改変することをチートと呼ぶ。この場合は本来のゲームソフトやハードウェアの動作(サポート)の域を出たものであることは注意が必要である。
また、先述したようにはじめからゲーム内にいわゆるお楽しみ機能として用意されているチートコマンドと呼ばれる方法を使用する場合もある。
エミュレーター
据え置きゲーム機や携帯ゲーム機タイトルにおいては単にチートと言えばエミュレーターを使用したものを指すことも多いかもしれない。簡単にいうと実機にはない機能を使いゲームをプレイすることである。数値的な改編を超え元のゲーム自体を大幅に違う物にまで変えてしまう場合は、改造又はハックなどと言うが、国内ではこれらもチートとして呼ばれていることもあるようだ。
(詳しくはハックロムの記事を参照)
また、エミュレーターに付いている特殊な機能も実質チートと言えることだが、エミュレーター用語としては、クイックセーブや高速/低速モード、或いは乱数の監視などの動作はチートではなくツールアシストと呼び使い分けられている。チートとツールアシストの差を一言で言うと「実機で理論上可能(起こりうる)かどうか」ということが重点に置かれる。
ゲームのエミュレーターでは何らかの方法で自分を有利にする場合が多いのだが、これを使ってゲームの遊び方の幅を広げる実験、検証をしたり、縛りプレイのためわざと自分を不利したり、バカプレイにも使用でき、こちらのチートの使い方も多く見られる。
PCゲーム
PCゲームタイトルではプレイヤー自身で細かい設定を編集出来るように設計されたゲームが多く、コマンドラインや開発者用のコンソールへのアクセスも可能になっているものは多い。その中にはデバッグ用、もしくは単にお楽しみ要素として、無敵モード(God mode)や全武器入手、空中浮遊、壁抜け(Ghost, NoClip)などのチートと同等の機能を持つものも存在する。
それらとは別にコンソールゲームにおけるチートと同様のメモリ上の改変によるチートも存在し、それを実行するツールは「Trainer」と呼ばれている。
MODとの違い
国内ではデータの改造という点からか「MOD」と混同されてしまっていることもある。プレイヤーを有利にするチートの機能を持つMODも数多く存在するが、MODの一部にそのような種類があるというだけであり、またチートという言葉は改造全般を指すものではない。
(詳しくはMODの記事を参照)
2. インターネットスラング
国内のインターネット上のコミュニティでは、「不正をしている」「ずるい」という意味から転じて、「まるで不正をしているように見えるほど凄い」「ずるいほど凄い」等という意味合いを持った対象の凄さを表現する言葉として、そのような実力や経歴を持った実在の人物や、凄い能力や強さの設定が付けられている架空のキャラクターなどを指してチートという呼び方がされている。当然ながら、この場合本来の英単語の意味には当てはまらない。
このスラングの用法の発祥元は最早わからないが、この記事の初期の内容から判断すると、最初はニコニコ動画のタグでも英単語と同じ意味合いで単に卑怯者(当時流行っていた「ずっと俺のターン」系動画)を指して使われていたらしい。その後、同時期に実在の人物に対して使う、チートという言葉を逆の意味でとらえ、遠まわしの"誉め言葉"としての解釈と、架空のキャラクターに対するゲームとスラングの両方を含んだ意味での「公式チート」「チートキャラ」という"キャラ属性"としての呼び方が掲載されている。
※キャラ属性や実在の人物に対する誉め言葉的解釈は、ニコニコ動画が流行する以前やニコニコ大百科が運営開始される以前からもどこかのコミュニティでは使用されていたのでしょうか?2007年以前の情報があれば掲載してください。筆者の曖昧な記憶では、それ以前にゲームのチート行為とスラングでいうキャラ属性を混同して誤解している人を見かけることは無かったと思います。
ニコニコ動画系列のコミュニティではこのスラングの意味で使われていることが多く、ニコニコ大百科では各々の編集者による凄いとされる実在の人物名をリスト化する記事や、凄い能力の設定を持つキャラクターを語る記事がいくつも作られている。本記事も初期は同じように人物・キャラクター名のリスト化が中心の内容であり、掲示板の書き込みの内容も「(誰々)はチート」といったものが多かった。
現在のこの記事は言葉の意味の解説を目的としています。スラングの解釈に基づいた個人的にチートだと思う人物やキャラクターのリスト化や最強議論等は専用の記事でお願いします。
参照: リアルチート / チート爺 / チート親父 / 最強議論 / 異能生存体
各々の編集者によるリスト化…と述べたように、スラングとして使われるチートという言葉は、基本的には個人の主観に基づくものであり、どうしても解釈のすれ違いが起きてしまうこともある。本記事の掲示板の過去の書き込みや、上記のリスト化を目的とした記事の掲示板からも伺えるように「この人はチートだから記事に載せて」という人もいれば「その人はチートじゃないから載せないで」という人もいるのである。凄さの感じ取り方や表現の仕方は人それぞれで、明確な定義付けや線引きをすることはできないだろう。
本来の英単語では貶す意味を含む言葉であること、そして人やコミュニティによって意味や解釈が違うこと、また実際のスポーツの試合やゲームの試合などの公の場においては単に不正疑惑をかけるために呼ばれている(もしくはそう受け取られてしまう)こともある。人前で誰かをチートと呼ぶときはスラングとしての用法が適切な場所かどうか、コミュニティ上での住み分けを考慮することが望ましい。
3.映画「The Cheat」
セシル・B・デミル監督による1915年公開のモノクロサイレント映画である。ファニー・ウォード。早川雪洲の人気が爆発したことで名高い作品であるが、内容が国辱的である等の理由により、当時の日本では公開されなかった。
その他
ギャンブル系のフィクション漫画作品などではチート(→イカサマ)を含めた熾烈な頭脳戦が繰り広げられる場合も珍しくなく、卑怯どころか「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」と言わんばかりの作品の華になっている場合もあるある。むしろお互いに使っている場合もある。
現実の公営競技やスポーツなどで行わる場合もあるため、期間中は外部と連絡の取れない規制の多い生活になる場合もある。
関連項目
脚注
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- 0pt
- ページ番号: 70483
- リビジョン番号: 3202432
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