Wplaceとは、世界地図をキャンバスとして、世界中のユーザーが共同でピクセルアートを制作するリアルタイム描画サービスである。
概要
2024年にブラジル在住の開発者Murilo Matsubaraによって立ち上げられたウェブサイトで、誰でも無料で参加することができる。かつてRedditでエイプリルフール企画として実施され、大きな話題を呼んだ社会実験的プロジェクト「r/place」に強くインスパイアされている。
r/placeが数日間限定のイベントであったのに対し、Wplaceは常設のサービスとして提供されており、いつでも誰でもアート制作に参加できる点が大きな特徴である。また、キャンバスが架空の白紙ではなく、実際の「世界地図」であることも、本サービスならではのユニークな要素となっている。ユーザーは、自身にゆかりのある土地や、好きな作品の舞台となった「聖地」にドット絵を描くなど、地図というテーマを活かした多様な創作活動を行っている。
サービスのローンチ後、その斬新なコンセプトがX(旧Twitter)などのSNSを通じて急速に拡散され、世界中のインターネットユーザーから注目を集めた。特に、人気インディーゲーム『Undertale』や『Deltarune』のファンコミュニティが組織的に活動し、マップ上の至る所にキャラクターのピクセルアートを制作したことで、大きな話題を呼んだ。その他にも、『東方Project』や様々なアニメ、ゲームのファンがコミュニティを形成し、協力して大規模な作品を描いている。
このように、Wplaceは単なるお絵かきツールに留まらず、共通の目的を持った人々が集い、協力し、時には縄張りを巡って争う(いわゆる「陣取り合戦」)という、一種の社会的インタラクションの場として機能している。ユーザーの間では「各地域に独自の文化や歴史、関連性が生まれている」とも評されており、その偶発性と創造性が多くの人々を惹きつけている。
一方で、人気が急上昇したことに伴い、サーバーへのアクセス集中による接続障害もしばしば報告されている。ユーザーからは「地図が表示されない」「オフラインと表示されてログインできない」「画面が真っ白になる」といった問題が多数寄せられており、安定したサービス提供が今後の課題となっている[1]。
このような技術的な課題を補うため、ユーザーコミュニティからは有志による様々な補助ツールが開発・公開されている。画像を指定した場所に重ねて表示するオーバーレイ機能を持つスクリプトや、手持ちの画像をWplaceの公式カラーパレットに合わせたピクセルアートに自動変換するツールなどが存在し、多くのユーザーに利用されている。
ルール
Wplaceには、快適で公正な共同制作環境を維持するための基本的なルールと、ユーザー間で形成された暗黙の了解が存在する。
基本的なシステム
- ピクセル配置: ユーザーはキャンバス(世界地図)上の好きな場所に色を置くことができる。1度に大量に置くことはできないが、1ピクセルにつき30秒待てば再度置けるようになる。
- カラーパレット: 使用できる色は、あらかじめ定められた限定的なカラーパレットの中から選択する必要がある。補助ツールの中には、この公式パレットに準拠したピクセルアートを生成するものもある。
- アカウント: 参加にはアカウント登録が必要となる。
公式ルールとマナー
公式サイトには利用規約とプライバシーポリシーが定められており、ユーザーはこれに同意した上でサービスを利用することになる。規約では、ヘイトスピーチ、ポルノグラフィ、その他不適切なコンテンツの投稿が禁止されていると推測される。
また、ユーザーコミュニティの間では、以下のような暗黙のルール(マナー)が形成されている。
- 他者の作品の尊重: 他のユーザーやコミュニティが制作したピクセルアートを意図的に破壊したり、上書きしたりする「荒らし」行為は推奨されない。ただし、限られたスペースを巡るコミュニティ間の「闘争」や交渉も、r/place以来の文化として根付いている側面がある。
- 個人情報の禁止: 個人のプライバシーを侵害するような情報の書き込みは固く禁じられている。
- 協力と連携: 大規模なアートを制作するため、多くのユーザーはDiscordなどの外部プラットフォームを利用して連携している。アライアンスやコミュニティを組み、役割分担をしながら計画的にピクセルを配置していく光景が各所で見られる。
課金要素
Wplaceは基本無料でプレイできるが、より多機能な体験を望むユーザー向けにマイクロトランザクション(少額課金)のシステムが導入されている。
ユーザーはサイト内で使用できるデジタル通貨を購入し、それと引き換えに特定の追加機能をアンロックすることができる。ピクセルを配置する際のクールダウンタイムが短縮されたり、より高度な描画ツールが利用可能になったりといった恩恵が受けられる。
仮想通貨(暗号資産)との関連性について
Wplaceがローンチされた当初、一部のユーザーの間で「このプロジェクトはNFTや暗号資産に関連しているのではないか」という憶測が流れた。しかし、Wplaceの公式Xアカウントはこれを明確に否定しており、「WPLACE IS NOT CRYPTO AND WILL NEVER BE.(Wplaceは暗号資産ではないし、今後もなることはない)」と発表している。
Phantomなどの一部の暗号資産ウォレットで「Wplace (WPLACE)」という名称のトークンが表示されることがあるが、これは本サービスとは無関係の同名のトークンである可能性が極めて高く、公式サイトでは一切言及されていない。したがって、Wplaceにおける課金システムは、一般的なオンラインゲームやサービスに見られる、法定通貨によるサイト内通貨の購入という形式であり、ブロックチェーン技術や暗号資産とは直接的な関係はない。
豆知識
各地域のマップの区分けの番号と広さは、左上端が0.0 右下端は3999.3999の4000×4000ピクセルである。
通常の世界と違いマップを東西なら一周できるが北側は一番北の区域0より北、南側は一番南の区域3999より南には行けない[2]
区域は上記の用に四角く区切られているので実際の地図と地域名に差がある。
地図上では全部スウェーデンの土地なのに区域がノルウェーになっている。
関連リンク
- Wplace公式サイト
- 公式X (旧Twitter) アカウント
- Wplace.live Guide
: ユーザーメイドのツールやスクリプトを紹介しているサイト。 - Wplace Overlay (Greasy Fork)
: ユーザーが作成したオーバーレイ表示用スクリプト。 - Wplace Paint Tool
: 画像をWplace用のピクセルアートに変換するツール。 - 非公式Discordサーバーリスト (DISBOARD)
: ユーザーコミュニティを探すことができる。
関連項目
脚注
- *実際、共有のOpenFreeMapを用いていた際に、あまりに多量の負荷が発生したため、開発者の協力のもとセルフホスティングに切り替えている
- *これは、メルカトル図法が北極・南極周辺で無限に引き延ばされるため、おおむね北緯・南緯85度より外側をバッサリ切ることで、世界が正方形になるようにしているためである。当初のGoogleマップで採用されており、それに倣ってWplaceが用いているOpenStreetMap(およびOpenFreeMap)でも同様の座標系を採用している。このため、この外側の世界の地図はそもそも提供されていない
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