オーベルシュタインの犬とは、「銀河英雄伝説」に登場するオーベルシュタインの犬の飼い主に飼われている犬である。
オーベルシュタインの犬の飼い主であるパウル・フォン・オーベルシュタインの飼い犬。ダルマチアン種の老犬で、わりと尊大な偏屈者。名がなく、特に作品外では「オーベルシュタインの犬」で通っている。
かつては犬もオーベルシュタインの犬ではなかったが、まだオーベルシュタインの犬の飼い主でなかった頃のオーベルシュタインとその職場で偶然出会い、運悪く居合わせた衛兵の胃壁に爪を立てつつも拾われ、オーベルシュタインの犬、つまりオーベルシュタインの犬の飼い主の飼い犬となった。
オーベルシュタインの犬の飼い主の飼い犬になったときのオーベルシュタインの犬は、やせて薄よごれ、貧相な尻尾を振る流浪の老犬であった。その前半生はさだかではない。そのオーベルシュタインの犬でなかった犬がオーベルシュタインの犬となったのは帝国暦488年の春。当時、オーベルシュタインはラインハルト・フォン・ローエングラムのもとで元帥府事務長を務めていた(宇宙艦隊総参謀長を兼摂)。
ある日、オーベルシュタインが昼食を終え、元帥府ビルに戻ったときのことである。玄関を入ろうとした彼の足元にまとわりついたのが、この犬であった。「なんだ、この犬は?」と問うた彼に、衛兵は「閣下の愛犬ではございませんので……?」とおそるおそる聞き返す。よもや衛兵も相手を仕事場に愛犬を連れてくる男と本気で思ったわけではあるまいし、無論そんなことはなかったのだが、当人は「そうか、私の犬にみえるのか」となにやら感銘を受けた様子で、その日からこの犬を扶養家族に加えた。
こうして犬はオーベルシュタインに飼われるところとなり、オーベルシュタインは晴れてオーベルシュタインの犬の飼い主となった。しかしこのオーベルシュタインの犬が、拾われた身のくせして生意気なことに、やわらかく煮た鳥肉しか食べないという偏食家(でなければ極端な鳥食主義者)だったらしい。
そこでオーベルシュタインの犬の飼い主オーベルシュタインは、自身で夜中に肉屋まで鳥肉を買いに出かけるようになったのだとか。そこを退勤中のナイトハルト・ミュラーが見かけ、何を考えたか理由まで探り出し、ミッターマイヤーやらロイエンタールやらビッテンフェルトやらていこくももたろうで言う狼鳥虎に披露している。話を聞いたうち、帝国軍の双璧はさすがに沈黙を守ってノーコメントを貫いた。反対に案の定毒づいてみせたのがビッテンフェルトで、「犬どうし気が合うのだろう」というコメントであった。
その後も、飼い主が自邸に帰宅した際、真っ先に出迎え、「尊大に尻尾をふって、彼の飼主が玄関をはいることを許可した」りしている。どこまでも殊勝さとは縁のない犬であった(まぁ飼い主もその点似たようなものではあるが……)。
時は流れ新帝国暦3年7月26日、犬がオーベルシュタインの犬になってから4年ちょっと後のことである。
オーベルシュタインの犬の飼い主にして新帝国の軍務尚書・元帥という重任にあったオーベルシュタインは、ヴェルゼーデ仮皇宮の執務室にあって地球教最後の残党のテロ攻撃を受け、致命の重傷を負った。彼は自邸の執事ラーベナルトへ伝えるべき言葉として、遺言状の位置とともに「犬にはちゃんと鳥肉をやってくれ。もう先がながくないから好きなようにさせてやるように」と遺して逝った。
その場の人間には「ラーベナルト」が誰だかわからなかったせいで末期の台詞になりそびれたが、事実上、オーベルシュタインの犬の飼い主が人生の最期に気にかけたことは、主君でも王朝の未来でもなく、自分が飼うオーベルシュタインの犬の行く末であった。
舞台版外伝「オーベルシュタイン篇」では、オーベルシュタイン家と「オーベルシュタインの犬」をめぐるオリジナルストーリーが展開された。
この作品における「オーベルシュタインの犬」とは、オーベルシュタイン家が代々受け継ぐ銀河帝国非公式の秘密諜報組織「ハウンド」に対する帝国軍内部の蔑称である。作中ではオーベルシュタインと異母兄シュテファン・ノイマンを中心に、この「ハウンド」の物語が繰り広げられる(詳細は別記事「シュテファン・ノイマン」を参照あられたい)。
その幕切れは、劇団かかし座による影絵で表現された「犬」とオーベルシュタイン(演:貴水博之)が出会い、そして去っていくシーンであった。
「Die Neue These」では、未来のオーベルシュタインの犬の飼い主との出会いが帝国暦490年春へと一年遅くされた。そのかわり、ちょうどこの時期にあたるラインハルト統治下での帝国社会の変化を追いかけるナビゲーター的な役割として、第二十八話で印象的な初登場を飾ることとなった。
未だオーベルシュタインの犬ならぬ野良犬として帝都オーディンの中心街を逍遥しており、ラインハルトの邸宅の前で警備の兵士に構われたり、街中で庶民的な昼食を楽しむビッテンフェルト、メックリンガー、オイゲンのトリオのもとに顔を出してビッテンフェルトが差し出した肉に塩対応したり(差し出されたシュバイネハクセは豚のローストであるからして、鳥でもなければ煮込まれてもいない次第)、グレゴール・フォン・ミュッケンベルガーがオフレッサーの墓参りをしているところに居合わせたりしている。
そして最終的に、まだオーベルシュタインの犬を飼っていないオーベルシュタインがちょうど退勤するところに到達。例のやり取りを経て、犬は無事オーベルシュタインの犬となったのであった。
――意外な反応もありましたか。
オーベルシュタインの犬を出したときは、あれほど受けるとは思いませんでしたよ(笑)。
――そうですか。
うん。人名辞典風に言うと、【オーベルシュタイン/オーベルシュタインの犬の飼い主】という感じですね。
――まさか、それはないと思いますが(笑)。
でも、あのときは本当にこちらが面食らうくらい受けましたね。
この記事は、まぁそういうことである。
掲示板
13 ななしのよっしん
2023/07/15(土) 11:54:43 ID: cq6q4cu25C
川原泉が後書きで、「(この素晴らしい)作品世界に何かしらのキャラとして参加したいものだ、オーベルシュタインの犬でもいいから」とか書いてたな
14 ななしのよっしん
2024/03/19(火) 11:32:17 ID: yyuozL/udC
説明が回りくどすぎて草
15 ななしのよっしん
2024/05/21(火) 15:02:52 ID: kUXTus+LUs
「血も涙もないような策を平然と出すド有能だが味方からすら嫌われまくるド嫌われ者の重臣が、何を思ったかある日偶然出会った野良犬を突然飼い始めた上重臣なのにわざわざ自ら大好物を買いにいったり死期を悟った時にはわざわざ執事に後を託す言葉を遺すくらいには大事にしていた」
というだけで確かに妙に面白い話なのはわかるとして、
関連項目も
・作中で犬を飼っていたことが明言されている方々
・イヌ科の生き物に例えられる方々
と良い感じにオチとして効いてて面白く、一応は原作に存在する人物をきちんと存在しているとはいえある意味存在そのものがネタみたいな記事としては秀逸な構成だと思う……w
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最終更新:2025/12/13(土) 08:00
最終更新:2025/12/13(土) 08:00
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