レフ・ランダウ 単語

レフランダウ

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レフ・ダヴィドヴィチ・ランダウ(Лев Давидович Ландау, Lev Davidovich Landau)はソヴィエト連邦理論物理学者である。

概要

ランダウは、物理学の全ての分野に通し、幅広い業績を残した。とりわけ、低温物理学では超流動超伝導理論的解明に大きく貢献。ソ連理論物理学の中心的人物で子も多い。子のエフゲニー・リフシッツとともに書いた教科書シリーズ理論物理学教程」は名著の誉れが高く、本棚に飾っておくだけで賢くなった気がする簡潔で明晰なスタイルで豊富な内容を論じていると評判である。

生涯

生い立ち

1908年1月22日、バクーで生まれる。当時のバクー世界最大の田で、ダヴィド・リヴォヴィチ・ランダウ石油会社の技師長をしていた。リュヴォフィ・ヴェニアミノヴナ・ガルカヴィ=ランダウ医師で、兄弟が一人。ランダウくから数学の才を示し、14歳でバクー大学入学16歳レニングラード国立大学に編入した。

大学の講義に出るのは週2回、それも友人に会ったり大学での出来事を知るためだった。だが怠けていたわけではなく、むしろ非常に熱心に勉強した。一日15時間から18時間もに向かい、にまで数式を見るほどだった。アインシュタイン一般相対性理論の美しさに魅せられ、当時(1925-26年)まさに成立期にあった量子力学ハイゼンベルクやシュレーディンガーの論文から学んだ。ランダウは、時の曲率や不確定原理に、想像もできないことを理解しうるという、天才叡智を見て取った。1927年、19歳の誕生日の二日前に大学卒業し、レニングラード物理工学研究所の大学院生になった。

留学

1929年教育人民委員部から海外留学を命ぜられヨーロッパ立つ。1年半の留学の間にベルリンアインシュタイン、ゲッチンゲンのボルン、ライプツィヒハイゼンベルクコペンハーゲンボーアケンブリッジのディッラク、チューリッヒのパウリと、偉大な物理学者にはみんな会った。一会えなかったのはフェルミだけだと後にっている。コペンハーゲン量子力学研究の中心地であり、ボーア宰するセミナーの雰囲気はランダウに大きなを与えた。ランダウボーアを師と仰ぎ、その後も二度(1933年1934年コペンハーゲンを訪れている。

イギリス滞在中には同人の実験物理学者ピョートル・カピッツァと出会った。ランダウより14歳年長のカピッツァはキャベンディッシュ研究所のラザフォードのもとで研究をしていた。カピッツァとの交流から金属中の自由電子の示す反磁性、いわゆる「ランダウ反磁性」の論文を書き上げた。

ハリコフ

後、1932年ハリコフのウクライナ物理工学研究所の理論物理学部長に任命され、同時にハリコフ大学ハリコフ機械工業大学物理学の講義を受け持つこととなった。研究所の自室のドアには「L・ランダウ 注意、噛み付くぞ!」と書いた名札がかけられた。ハリコフでランダウは初めて子を持ち、自分の教師としての才を自覚するようになる。「理論ミニマム」を始めたのも、「理論物理学教程」の構想を持ったのも、この頃だった。

理論ミニマム」というのは、詳細な書籍の一覧と書物からの抜や雑誌論文を含む理論物理学教授と試験である。試験は数学二部門と物理学七部門(力学、場の理論量子力学統計物理学、連続媒体の力学、巨視的電気力学、相対論的量子力学)からなる。この試験に合格しても、ただランダウの手帳に名前と合格の日付が書き込まれるだけである。ランダウ電話をして受験したいと言えばでも受験できたが、試験は難関で、合格したのは1934年から1961年までの間に43人でだった。

モスクワ

1934年休暇イギリスからモスクワに帰ってきたカピッツァは出を禁じらた。代わりに新たな研究所が建てられることとなり、裁量もカピッツァにまかされた。こうしてモスクワ物理問題研究所が設立され、1937年にランダウはその研究所の理論部長になる。

1938年4月27日から28日にかけての深夜、ランダウモスクワの自宅で逮捕された。スターリンを糾弾するビラを配布しようとしたというのがその理由である。カピッツァはただちにスターリン手紙を書いて釈放をめたが効果はなかった。ランダウと連絡が取れないのでヨーロッパ物理学者の間にも逮捕の噂は広まり、ボーアスターリン手紙を書いた。翌年、大粛清が下火になってきたのでカピッツァは首相モトロフ手紙を書いた、現代物理学の最もめいた領域で新たな発見をしたが、本邦でこれを説明できる理論はランダウをおいて他にいない、と。逮捕から一年後のメーデー前日にランダウは釈放された。カピッツァが手紙に書いた新たな発見とは、液体ヘリウム超流動のことで、その後、実際にランダウ超流動理論を発表しを解明したのだった。

1939年、ランダウハリコフ時代に知り合ったコーラ・ドゥロヴァンツェヴァと結婚1946年には息子が生まれ、イーゴリと名付けられた。ランダウによれば「あらゆる名のうちで、最高の名」がイーゴリだそうだ。

戦時中、物理問題研究所はカザンに疎開した。この時期にランダウは流体力学の研究に取り組み、衝撃波理論をたてたが、鉛筆も手に入らない困窮状態だったので、すべての計算を頭の中でやったという。戦後ソ連は原水爆開発を注ぎ、物理学者たちも駆り出された。スターリンのために働くことは不本意だったが、自分の身の安全のためにランダウは計画に参加した。KGBによって盗聴された会話記録では自分の遇を「学識ある奴隷」といっている。ランダウ水爆開発に対する貢献によって、二度のスターリン賞と社会主義労働者英雄称号を得ている。

自動車事故

1962年1月7日日曜日、ランダウモスクワの自宅から友人の運転するでドゥブナの子のところへ向かった。その途上、前凍結した路面でスリップし対向線のトラックと衝突、ランダウ瀕死の重傷を負った。医師物理学者たちの懸命な努のすえ、一ヶ半後にようやく危険な状態を脱した。4月8日には事故後初めて言葉を発した。その年の11月1日、ランダウノーベル物理学賞が贈られた。受賞理由は「凝縮物質、特に液体ヘリウムの先駆的研究」に対して。12月10日病院内でメダルが授与された。ランダウをつきながらも歩いて現れ、冗談を言ってみせた。

事故後ランダウ研究に復帰することはなかった。1968年3月24日容態が突然悪化、すぐに入院して手術を受けた。一旦は回復に向かったものの再び悪化。4月1日午後9時50分、死去、享年60。最期の言葉は「私は幸せだった。すべて順調だった」

エピソード

ランダウは極度の筆精で、論文はすべて共著者に書かせ、手紙は私的なものであろうが口述でタイピストに打たせた。1930年代の中頃からは単著の論文ですら全部リフシッツが書いている。ランダウ自筆の文書はほとんどなく、最長のものはKGBに書かされた6ページの自調書である。

ランク付けが好きで、論文から女性から何でも5段階に分けた。階級は対数ケールで、理論物理学者なら、1級のものは2級のものに対して理論物理学への貢献が10倍といった具合である。量子力学確立させたボーア、シュレーディンガー、ハイゼンベルク、ディラック、フェルミらは1級、アインシュタインは別格で1/2級に格付けられた。ランダウは自身を2.5級にランク付けたが後に2級に引き上げた。

ハリコフ時代には研究所の同僚をランク付けし、に応じて計算し直した給与表を貼り出した。エイプリルフールの冗談だったが上には受けなかった。

友人子からはダウという称で呼ばれた。これはレニングラード大学時代に友人たちから付けられたもの。

業績

理論物理学教程

世界的に有名な教科書シリーズ理論物理学の全分野を系統立てて叙述しようという遠大な構想で、ランダウの生きているうちには完成しなかったが、死後、リフシッツが他の子とともに完成させた。論理的な構成、題材の配列、結果の導出法など、ランダウリフシッツが一から考え抜いて書き上げたことが伺える内容となっている。エネルギー運動量擬テンソルや相対論的流体方程式のように、独自の結果が書かれていることもある。

最初は全8巻の予定だったが、統計物理学が第一部・第二部に分かれ、連続媒質の力学が流体力学と弾性理論の二冊に分かれて最終的には全10巻になった。

  1. 力学
  2. 場の古典
    特殊相対性理論真空中の電磁気学、一般相対性理論を扱う。
  3. 量子力学(非相対論的理論
  4. 量子電気力学
    最初は相対論的量子力学というタイトルで計画、出版されていたが訂。
  5. 統計物理学
  6. 体力
  7. 弾性理論
  8. 連続媒質中の電気力学
  9. 統計物理学 第二部
    場の量子論の手法を使って、低温物理を扱う。
  10. 物理運動
    ボルツマン方程式を基礎に輸送現を取り扱う。

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