原ショゴス 単語

ゲンショゴス

3.3千文字の記事

原ショゴスまたはプロト・ショゴス(Proto-Shoggoth)とは、クトゥルフ神話における怪物名前である。はらショゴスではない。

概要と初言及の経緯

他の訳語としてはショゴスの原、最初のショッゴスなど。

この言葉はH.P.ラヴクラフト狂気の山脈にてAt the Mountains of Madness』のラスト近くで、発狂してしまった登場人物のうわ言として初めて言及された。なお“the proto-shoggoths”と複数形になっている。一緒に出てくる言葉は以下の通り[1]

この人物が束の間正気を取り戻した際には、これらの言葉はかつて読破したネクロノミコンだと言いっていた[3]

小説への登場

リンカーターは『Dreams of the Black Lotus』という小説1987年に発表した。これは2年後に、いわゆる『(リンカーター版)ネクロノミコン/The Necronomicon: The Dee Translation』の一部として組み込まれた。日本語訳は『魔道書ネクロノミコン外伝』に収録されている。

これはカーターの『Black Lotus』(1965)[4]というが元になっている。

あらすじは、アルハザードが麻薬により精神離脱の魔術を使い、の地下にあるウボス(ウッボス)の視するというもの。このヌグ=ヤーの深み[5]ムノムクァが封印されている場所であり、そこには何故かショゴスの巣もあった。
その巣にが自生しているのに気づいたアルハザードの精神体はオエーー!!!!となって逃げ帰ってしまうというオチ

この場面では、「穢らわしいい窖(a foul black pit)…辺りの彫刻の施された縁には液がこびりつき (a carven rim of beslimed rock about it)…原ショゴスの原初のゼリーからの不快極まりない (the vile phosphorescence of the primal white jelly of the proto-Shoggoths)…」という描写が出てくる。

つまり『狂気の山脈にて』の言葉は本当にネクロノミコンから取られたもので、リンカーターが後付けで作った「ネクロノミコン編者としての」理屈では、「ラヴクラフトがこのネクロノミコンを読んで」自分の小説にパクって載せた用語なのだ。
ファンからのリスペクト作品でパクリ野郎扱いをされてしまうラヴクラフト御大

詳しい説明はないものの、このウボスには普通ショゴスと原ショゴスが別々にいたように思える。ゼリー状の生き物が棲んでいる場所がい窖と表現されるのはおかしな話だし。

TRPG設定におけるアレンジ

クトゥルフ神話TRPG』作品世界における原ショゴスは人造の偽ショゴスとでも言うべき存在だ。
ゲームデザイナーランディ・マッコール[6]TRPGシナリオ療養所にて/The Asylum』(1983)で創作した設定がそのまま使い回されている。
このシナリオ現在クトゥルフ・フラグメントexit_nicoichiba 』に収録されている。

原ショゴスはショゴスとは異なり、異界科学古代の秘儀によって作り出された奉仕種族である。

別名〈知性を持った変形するもの (Intelligent Shape-Shifters)〉。

原ショゴスの見た人間片のようであり、人間と似ている筋肉、眼や乳首へそなどの器官を確認することができる。体からは人の四肢に似た触手が生えており自由に曲げることができるのだという。

人間と同様の体組織であるため、人に移植かもしれないと考えると医療の発展に貢献することができるかもしれない生物である。

常に全身は震えており呼吸し波打っている原ショゴスの体にある大きな傷口のような裂けは内部へと続いており、その先には腸を含めた内臓が詰まっているという。

基本的にはその形状は自由であり、器官も自由に場所を変えることができるという。しかし質量を変えることはできないため、伸びた分だけ縮む部分があるということには少し安心できるところだろう。

原ショゴスの知性はショゴスよりも優れており小さな原ショゴスであれば人間に化け、人間として振る舞う程度の知識はあるといわれている。彼らが単独で成長して大きくなることはなく、互いに吸収しあい一つになることで大きな原ショゴスへと成長するといわれている。

その他のゲーム作品での扱い

ボードゲームクトゥルフ・ウォーズ』の『拡張セット: チョー=チョー人勢力/Tcho-tcho Faction Expansion 』exit_nicoichibaでは、クトゥルフ神話TRPGの作品世界と同じ設定の原ショゴスをチョー=チョー人量産している。これは、どちらのゲームメインゲームデザイナーが同じサンディピーターセンなのが理由。
クトゥルフウォーズ世界でのチョー=チョー人ウボ=サスラと組んでいる。クトゥルフ神話作品の一部では、古のもの(エルダーシング)はウボ=サスラから生み出された組織をショゴスの原(の細胞)として使った…という設定が採用されている場合があるので、ウボ=サスラの同盟者が原ショゴスの名を持つ怪物を使役するのはそれなりに筋が通っている。
ゲームコマとして付属している原ショゴスフィギュアをよく見ると、人間死体を苗床としていることが見て取れる。いや、これは人間擬態するために被っていた皮なのかも…。

Goodman Games2009年PDF出版したダンジョンズ&ドラゴンズ第4版データ集『Critter Cache 6: Lovecraftian Bestiaryexit』では、しくも古のものが使役する原ショゴスが掲載されている。ここでのスペリングProtoshoggothで、ハイフンは付かない。
古のもの生命技師(elder thing lifecrafter)がそこら辺の死体にちょいちょいと細工すると、死体が溶け合わさって撹拌する有機原形質の山に変わり、こちらに性の擬足を伸ばしてくる。 この怪物は生命技師に全に制御されている上に、古のものトラペゾヘドロン(この世界観では遠距離攻撃用アイテム)で援護射撃を仕掛けてくるので非常に厄介だ。

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関連項目

脚注

  1. *ここにしか出ない固有名詞は青空文庫The Creative CATによる日本語訳語exitに準じた
    ただし「彫刻された稜線」のみ南條竹則の『クトゥルー神話傑作選』exit_nicoichibaに依っている
  2. *かつてエジプトのファロス島に存在したアレクサンドリアの大灯台exitにちなんで、ファロスという言葉自体が灯台の意味を持つようになった
    なおこの語は『ラヴクラフト全集第4巻』で「古のファラオたち」と誤訳されたことがある
  3. *ラヴクラフト小説では、冒涜的な書物を読んでも書かれていることを信じなければすぐには出ない。それが真実だと認めざるを得なくなったときに発狂することになる。この法則は『新クトゥルフ神話TRPG(第7版)』にルールとして取り入れられている
  4. *集『ルルイエの夢Dreams from R'lyeh』としてめられたのが1975年ウィルバー・ナサニエル・ホウグのカーターが編纂したという設定
  5. *the ghastly deeps of Nugg-yaa。ウボスのほうのりはthe Black Lake of Ubboth
  6. *Randy McCall
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