レッツゴードンキとは、2012年生まれの日本の競走馬である。
低迷期に入ってから再び復調して善戦マンになった、珍しい牝馬。
父キングカメハメハ、母マルトク、母父マーベラスサンデー。父は説明不要の名種牡馬、母も条件馬ながらダート短距離で5勝を挙げた一端のスピード馬だった。半兄には園田を中心に地方競馬で16勝を挙げたマルトクスパートがいる。
このレッツゴードンキという馬名、意味は「さあ進もう『ドンキホーテ』のように」とある。この名前をつけたのは、驚安の殿堂でお馴染みのディスカウントストア「ドン・キホーテ」の創業者である安田隆夫氏。馬主と安田氏が知り合いだったかららしいが、営利目的の命名を認めていないJRA的にはけっこうスレスレである。実際CMの有名なワードを馬名につけようとして却下された某院長もいたし。まあ、このケースでは小説「ドン・キホーテ」の主人公という意味に解釈されて事なきを得たようである。
デビューは2歳8月の札幌競馬場。3番人気ながら3馬身差で完勝すると、札幌2歳Sでは7番人気に反発して3着と好走する。これなら、とアルテミスSでは1番人気に推されるが、ココロノアイをハナ差捕まえられず2着に敗れてしまう。
阪神JFでは、ここまでの安定した成績が評価され2番人気。レースではこれまで通り中団でレースを進め、直線で馬群の間から力強く抜け出す。しかし残り100mでとんでもない急加速を見せたショウナンアデラに一瞬でかわされ、またも2着。2歳女王の夢はあっさり吹っ飛んでしまった。
明けて2015年は定石通りチューリップ賞から。ここでも2番人気となったレッツゴードンキは、今までの中団待機から一転、なんと逃げの手に出る。多少掛かり気味ながらも直線半ばまで粘るが、しかし今度は後ろから来たココロノアイに捕まり3着。重賞3連続の銀メダルとなる。
迎えた本番の桜花賞では、きさらぎ賞を圧勝し大器と噂されたルージュバックが一本被り。レッツゴードンキは5番人気にとどまる。
3枠6番からスタートしたレッツゴードンキ、最初の1ハロンで岩田康誠に軽く促され先頭に立つ。馬群はひと固まりで、後ろに控えたルージュバックを気にしてか、逃げるレッツゴードンキを誰もつつこうとすらしない。1000m通過は62秒9!2400mのレースでも遅いと言われそうな時計である。マイル戦の桜花賞ではそれはもうスローもスロー、超のつくどスローであった。しかも前走と違い、レッツゴードンキはいたって落ち着いていた。こんなもの、逃げ馬に勝ってくれと言っているようなものである。
案の定、直線でレッツゴードンキはどんどん後続との差を開いていく。後続もスローだから脚はたまっているのだが、逃げ馬も同じだけの余力があるのだから後ろの馬は勝ちようがない。結局上がり3ハロンも33秒5でまとめ、4馬身差で逃げ切り勝ち。勝ち時計は1分36秒0と過去10年で最も遅く、良馬場では94年以来の超スロー決着。JRAのレースレーティングでは史上最低レベルの105.00を頂いてしまうという喜んでいいのか悪いのかわからない結果になってしまった。
オークスは案の定距離の壁にぶち当たり10着。秋に向けて休養に入る。
秋は復権を目指しローズSから始動。3番人気に支持されるが後方待機の3頭にあっけなく差し切られ4着。秋華賞は控える競馬を試すが、ミッキークイーンのはるか後ろでブービー17着という悪夢の結果。エリザベス女王杯は回避しマイルCSに進むが6着。鞍上の岩田康誠の不調と歩を合わせるように深刻なスランプに陥ってしまう。
翌2016年は短距離路線に進むが、阪急杯で2番人気を裏切り6着、高松宮記念は久々に中団待機の作戦に出るが8着。ヴィクトリアマイルでも10着。なんかもう、やっぱり桜花賞はまぐれだったのかなぁ・・・なんて感じになっていた。
夏も休まずサマースプリント戦線に出走。もうダメだと思われたか函館スプリントSではGⅠ馬なのに7番人気。しかしここで3着と久々に好走すると、キーンランドCも3着に突っ込む。しかしスプリンターズSではやっぱりダメで9着。次走には初ダートのJBCレディスクラシックが選ばれ、ああ、ついにダート落ちか…と思ったら、重馬場の中積極策に出て、前年のダート女王ホワイトフーガに半馬身差まで食い下がり2着に突っ込んでしまう。そういえば母親はダート馬だし、キンカメ産駒もホッコータルマエ筆頭にダート馬が多いんだった…。
続いて出走したのは前年新設された重賞のターコイズS(この年はグレード格付け無しの「重賞」。実質GⅢ)。牝馬限定の中山芝1600m戦である。芝ではまだちょっと信頼できないと思われたか6番人気にとどまるが、なんと最後方から直線で馬群をすり抜けるように伸び2着に突っ込む。あんたそんな競馬もできたのか、と大勢が驚いたところで2016年が終了する。
5歳初戦は1400mになって2年目の京都牝馬S。この時期だしそこまでメンバーも揃わなかったので、2歳のアルテミスS以来となる1番人気を背負う。ここではデビュー当時のように中団で控えると、マクり加減に大外から進出。そのまま豪快に差し切り、桜花賞以来1年10か月ぶりの重賞制覇を果たす。
阪急杯は使わず、高松宮記念に直行。混戦模様の中2番人気に支持される。小雨のぱらつく稍重の馬場もダートで好走経験のあるレッツゴードンキにはプラスとなると思われた。
本番、レッツゴードンキは2枠3番を活かし後方のインで末脚を溜める競馬を選択。4角でで各馬が馬場のいい外を狙ったところを突き一気に進出。ぽっかり空いた最内を馬場をものともせずに猛然と突っ切ったが、外を伸びたセイウンコウセイに届かず2着。しかし前年スプリンターズSで叩き潰されたレッドファルクスには先着し、その力を示した。しかし岩田が「マイルは合う」と言った割にヴィクトリアマイルは11着にコケる。
秋はスプリンターズSに直行。ファンも支持していいのか悪いのかもうわからなくなったようで、単勝10.8倍の5番人気に落ち着く。1番人気はレッドファルクスである。
またも1枠2番の好枠をもらったレッツゴードンキは、ゲートはポンと出たが中団に控え、やはり徹底してインにこだわる競馬。4角でもたつくレッドファルクスを後目に、最内から逃げ粘るワンスインナムーンをねじ伏せるようにかわす。しかし、外でエンジンに火がついていたレッドファルクスが大外を一瞬のうちに飛んで行ったところがゴール板。僅かクビ差でGⅠ2勝目を逃し、岩田は「夢を見過ぎたかな」と悔しがった。
香港スプリントを最大目標に定めた陣営は、輸送になるJBCスプリントを回避しスワンSに出走。1番人気に支持されるが、かなり緩くなっていた馬場を気にしてか3着。地方のダート重馬場も普通に走れてた気がするけど、この日は台風が直撃し、この後記録的な不良馬場になっちゃうほどの悪天候だったし仕方ない。
一介のマグれ逃げ馬でも早熟馬でもない実力を示せたレッツゴードンキ。戦績をよく見ると、岩田が絶好調だった時期に桜花賞を勝ち、岩田の不調の時期はまるで勝てなくなり、岩田の復調に合わせるように再び好走を始める…という、岩田の調子のバロメーターみたいな馬にも見えてくる。短距離GⅠ2戦はどっちも岩田の得意技「最内強襲」が実ったものだったし。
もう一つ、レッツゴードンキは非常に可愛いと評判である。ルックスも明るい栗毛につぶらな瞳で愛らしい(ただし馬体は現在500kg台とけっこうデカい)。性格も非常に人懐っこく、人が近づくと顔を寄せてくる。そして服にかぶりつく。
また、2016年の高松宮記念の発走前、待機所に備え付けてあったカメラを見つけるや飛び込んできて、ひとしきりカメラアピールをして去るという謎の行動に出たこともあった。
ちなみに、レッツゴードンキを担当する調教助手は、JRA史上6人目の女性騎手だった西原玲奈さん、その人である(現在は結婚して前原玲奈さんである)。騎手引退後、最後に所属していた梅田厩舎で調教助手となり、レッツゴードンキが担当馬で初めてのGⅠ馬となった。いわく、レッツゴードンキは女性の方が好きなのだそうである。キマシ。
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最終更新:2024/05/21(火) 04:00
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