| 銀河英雄伝説の戦闘 | |
|---|---|
| イゼルローン回廊 帝国寄り宙点における戦闘 |
|
| 基本情報 | |
| 時期 : 宇宙暦798年/帝国暦489年 1月22日~ | |
| 地点 : イゼルローン回廊・帝国領方向 | |
| 結果 : 帝国軍の撤退 | |
| 詳細情報 | |
| 交戦勢力 | |
| 自由惑星同盟軍 | ゴールデンバウム朝銀河帝国軍 |
| 総指揮官 | |
| ダスティ・アッテンボロー少将 | アイヘンドルフ少将 |
| 戦力 | |
| イゼルローン要塞駐留艦隊 アッテンボロー分艦隊 艦艇総数2200隻 |
帝国軍哨戒部隊 艦艇総数1700隻前後 (同盟側推定) |
| 帝国暦時代 | |
| 前の戦闘 | 次の戦闘 |
| リップシュタット戦役 救国軍事会議のクーデター |
第八次イゼルローン要塞攻防戦 |
イゼルローン回廊帝国寄り宙点における戦闘とは、「銀河英雄伝説」の戦闘の一つである。
概要
宇宙暦798年/帝国暦489年1月下旬、イゼルローン回廊帝国領側の国境地帯を警備哨戒していた自由惑星同盟軍と、同様にイゼルローン回廊方面を警備中のゴールデンバウム朝銀河帝国軍とのあいだに生起した戦闘。
衝突した両軍の戦力はともに哨戒行動中の中規模部隊であり、実態としては偶発的な国境紛争の大規模な一例にすぎず、戦闘そのものは戦略的価値を持たなかった。
なお、この戦闘を示す明確な名称が存在しないため、当記事では便宜上の名称として「イゼルローン回廊帝国寄り宙点における戦闘」と称している。
背景
宇宙暦796/帝国暦487年のアムリッツァ星域会戦ののち、帝国と同盟の両国家はそれぞれに内戦(リップシュタット戦役・救国軍事会議のクーデター)に突入したため、翌797/488年を通して両軍のあいだに戦闘が生起することはなかった。
しかし、両国の間の交戦状態そのものは依然として続いており、同盟の国境を守るイゼルローン要塞にはクーデター鎮圧を終えたヤン・ウェンリー大将率いる要塞駐留艦隊が陣取り、両軍の勢力範囲が接触するイゼルローン回廊帝国領側宙域では両軍部隊が日常的に哨戒行動を実施する状況であった。
両軍の戦力
同盟軍側の戦力は、イゼルローン要塞駐留艦隊隷下のダスティ・アッテンボロー少将が指揮する分艦隊(旗艦は戦艦<トリグラフ>。分艦隊主任参謀ラオ中佐)で、兵力は大小2200隻。要塞駐留艦隊は前年の救国軍事会議のクーデターによる軍全体の消耗のあおりで多数の戦闘経験者が転出して新兵の補充を受けており、アッテンボロー分艦隊も多くを占める新兵の大規模訓練を兼ねて哨戒に出ていたものであった。
対する帝国軍哨戒部隊はアイヘンドルフ少将が指揮していた。同部隊はイゼルローン回廊方面の警備責任者であったカール・グスタフ・ケンプ大将の隷下にあり、同盟軍側の推定値では戦艦200~250隻、巡航艦400~500隻、駆逐艦約1000隻、宇宙母艦30~40隻から構成された。
戦闘経過
宇宙暦798年1月下旬、上記の通り訓練航海をかねてイゼルローン回廊帝国領側を哨戒中であったアッテンボロー分艦隊は、索敵システムに捕捉した1000隻を越える未確認艦船群を帝国軍艦隊と推定。報告を受けたアッテンボロー少将より訓練中止・第二級臨戦態勢が発令される。これと同時に分艦隊前部では敵の接近を示す通信波の混乱発生が認識され、分艦隊は約50分後の接敵を目して戦闘配置へと移った。
同盟帝国の両軍とも、事実上の国境地帯における日常的な哨戒行動を行っていたにすぎず、ほんらい積極的な交戦の意思はなかった。会敵の可能性自体もごく低いとみなされており、相互に相手の予想を越えて前進していた結果、偶発的な接触と交戦に至ったものだった。
戦闘の進展
1月22日、同盟軍が回廊内FRポイントと指定した宙点において両軍は交戦に突入する。兵員の多くが新兵で構成される同盟軍アッテンボロー分艦隊は最初から訓練中の人員をも戦闘要員に含む、いわば「“ボーイスカウトの集団”を指揮する」状況であり、救援の到着まで最小限の損害で持ちこたえる持久的戦術を選択せざるをえなかった。
両軍の戦闘は帝国軍側の優勢で進められた。しかし帝国軍は、相手がヤン大将麾下の同盟軍最精鋭部隊であるにもかかわらず、スパルタニアン・パイロットをはじめとする兵員の練度が奇妙に劣悪であることを疑問視しはじめた。一級の用兵家と知られる帝国軍指揮官アイヘンドルフ少将も、この疑念と“魔術師”ヤンの令名への警戒のため、急進せず慎重な、結果的には優柔不断ともいえる戦闘指揮に終始することとなる。
こうした帝国軍の姿勢は同盟軍にとっては意外なものだったが、戦線の維持を助けることにもなった。しかし同盟軍が兵員の練度に致命的な弱点を抱えているという事実は当然変わっておらず、帝国軍に感づかれれば極めて危険な問題としてアッテンボロー少将を精神的に圧迫しつづけた。
同盟軍の援軍
いっぽう、アッテンボロー分艦隊から急報を受けたイゼルローン要塞では司令官ヤン大将のもと軍幹部の会議が開かれ、異論なく可及的速やかな援軍派遣が決された。またその規模と行動についても、司令官顧問を務める客員提督ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ(中将待遇)の進言もあり、駐留艦隊全戦力をもって戦場に急行し、帝国軍に一撃を与えて撤退することに決定する。
ヤン大将が直接指揮する同盟軍側増援は戦闘開始から9時間後に戦域に到着し、1万隻以上という圧倒的な規模によって帝国軍側に強い衝撃を与えた。遠からず来着するであろう帝国軍側増援も規模で同盟軍側に劣ることから、これ以上の戦闘続行は自部隊と増援の各個撃破を招くのみであると判断したアイヘンドルフ少将は、艦隊を先導して速やかな退却に移った。
この時点で、同盟軍増援部隊はアッテンボロー分艦隊を救援するという出動目的を戦うことなく達成した。撤退する少数の帝国軍を無意味に追撃することは避け、あらためて監視衛星や電波中継衛星を配置し、味方の収容と応急修復が完了し次第、こちらも要塞へと撤収することとなった。
影響
戦闘は帝国軍の退却というかたちに終わったが、先述のようにこの戦闘は戦略的価値のない局地的・偶発的な遭遇戦にすぎないもので、当然勝敗の戦略的・外交的意味は小さかった。責任者のケンプ大将は帝国軍最高司令官ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥に謝罪しているが、「いちいち陳謝は無用」と赦されている。ただし、つづく同年4月の第八次イゼルローン要塞攻防戦(要塞対要塞戦)の指揮官人選にあたっては、ケンプ大将が部下の敗戦の雪辱を望んでいたことが若干の影響を与えることとなった。
同盟軍側では、この戦闘を受け、行動には用心を要すると判断された。帝国軍も同様に判断しているだろうと考えられていたが、第八次イゼルローン要塞攻防戦が発生すると、むしろ遭遇戦はこの要塞戦の前触れだったとみなされることとなった(実際には遭遇戦後の計画立案であり、直接の関係はない)。
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雌伏篇第一章「初陣」にて描写されたが、ストーリーは章題のとおり、母艦<アムルタート>乗組のスパルタニアン・パイロットとして初陣を戦うこととなるユリアン・ミンツに主な視点をおいている。
石黒監督版OVAでは第27話「初陣」において収録されている。
関連項目
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