クライマックスシリーズとは、2007年より日本のプロ野球で行われているプレーオフ制度である。通称「CS」。
この制度の土台となった、2004年から2006年のパ・リーグのプレーオフについても本記事で解説する。
概要
セントラル・リーグ(セ・リーグ)とパシフィック・リーグ(パ・リーグ)それぞれにおいて、上位3チーム(Aクラス入りしたチーム)が、日本シリーズ出場権をかけて争う短期決戦である。これを制したチーム同士で、日本シリーズが開催される。
2006年までのセ・リーグ、2003年までのパ・リーグは、レギュラーシーズンで優勝したチームがそのまま日本シリーズ出場となっていたが(※2004年から2006年にかけてのパ・リーグに関しては後述)、このCS導入によって、2位や3位のチームにも日本一になれる機会が与えられることになり、Aクラス入りに新たな価値が生じた。
同時に、優勝チームは無条件で日本シリーズに出れるわけではなくなったため、優勝決定後も決して気を抜けない状況となった。
優勝を逃した後であっても、ファンはCS出場の可能性が残されている限り目を向け続ける。また球団にとっても、CSが地元で開催されれば多くの入場者を獲得できるため、興行効果は非常に大きなものである(NPB自体の収益となる日本シリーズと異なり、CSの収益はレギュラーシーズン同様に球団のものとなる)。
CSが導入されたことで消化試合が大幅に減り、終盤戦からポストシーズンにかけて新たな盛り上がりを見せていると言えよう。
一方で、レギュラーシーズンで3位以内に入りさえすればどんなチームも無条件で出場可能となるため、可能性だけで言えばリーグ優勝できなかったチームどころか、勝率5割未満(借金持ち)のチームが日本シリーズに出場し、そのまま借金チームが「日本一」になることもあり得る(もっとも、交流戦が導入されている以上「優勝チームが借金持ち」になる可能性もゼロではないが)。そのため、「日本一」という称号はもう相応しくないのでは、あるいは出場条件が緩いのではと指摘する声もある。
また、すでに導入から10年以上経った制度ではあるものの、それ以前、優勝チーム同士で日本シリーズを行うことが当たり前だった時代が圧倒的に長かったこともあり、どれだけぶっちぎりで優勝しても数試合負けただけで日本シリーズに出れなくなることについては、否定的な意見も少なからず存在する。
このあたりについては、まだ議論の余地があるだろう。
なお、CS導入以降レギュラーシーズン2位以下のチームが日本シリーズに出場した例は以下の7回である。
年 | チーム | レギュラーシーズン順位 | 優勝チームとのゲーム差 | 日本シリーズ結果 |
---|---|---|---|---|
2007年 | 中日 | 2位 | 1.5 | 日本一 |
2010年 | ロッテ | 3位 | 2.5 | 日本一 |
2014年 | 阪神 | 2位 | 7.0 | 敗退 |
2017年 | DeNA | 3位 | 14.5 | 敗退 |
2018年 | ソフトバンク | 2位 | 6.5 | 日本一 |
2019年 | ソフトバンク | 2位 | 2.0 | 日本一 |
2024年 | DeNA | 3位 | 8.0 | 日本一 |
また、レギュラーシーズン3位のチームがファーストステージを制するケースはこれ以上に多く、特にパ・リーグでは2010年から2015年まで連続して3位のチームが2位のチームを破ってファイナルステージに進出していた。セ・リーグも2016年以降は全て3位のチームが2位のチームを破ってファイナルステージに進出している。
その他、CS出場経験のないチームは2016年にDeNAがAクラス入りしたことで消滅。また、2021年にオリックスがリーグ優勝したことでファイナルステージに出場経験のないチームも消滅し、さらに同年にオリックスがCSも制したことで、CS導入後12球団全てが日本シリーズに出場したことになった。
全体の流れ
出場チームの決定
クライマックスシリーズに参加できる球団は、開催予定日2日前までに各リーグで3位以上(Aクラス)のチームである。
もし、3位に位置するチームが複数現れた場合、
セでは
を優先順位として3位進出チームを決める。
一方、パでは
を優先順位として決めている。
ファーストステージ
2009年までの名称は「第1ステージ」。どちらも2位のチームの本拠地球場で開催される。
3試合2勝先取制。
ファイナルステージ
2009年までの名称は「第2ステージ」。どちらも優勝チームの本拠地球場で開催される。
4勝先取制だが、優勝チームには予めアドバンテージとして1勝が与えられるため、開催されるのは最大でも6試合まで。
なお、導入初年度となった2007年の第2ステージは2006年までのパリーグ単独のプレーオフのセカンドステージと同様5試合、3勝先取制で行われ、アドバンテージは与えられなかった。
全日程終了後、セのファイナルステージ勝利チーム VS パのファイナルステージ勝利チームで日本シリーズが開催される。
詳細は日本シリーズを参照。
ルール
基本的なルールはレギュラーシーズンと同様であり、延長12回までで再試合は無し。指名打者(DH)はパ・リーグのみ採用。予告先発は両リーグで採用(2017年まではパ・リーグのみだった)。
引き分けが発生して勝敗数が並んだ場合は、レギュラーシーズンにおける上位チームがそのステージの勝者となる。
たとえば、ファーストステージにおいて2戦終了時に2位チームが1勝1分となった場合は、3戦目は行わず2位チームがファイナルステージに進出する(仮に3戦目を行って3位チームが勝ったとしても、勝敗数が同じ(1勝1敗1分)にしかならないため)。
勝ちか引き分けで上位チームのステージ勝利が確定する試合では、引き分け以上が確定した(=下位チームの勝ちがなくなった)時点でコールドゲームで試合終了となる。
天候不良などで試合中止、あるいはノーゲームとなった場合の予備日は、ファーストステージは1日、ファイナルステージは2日用意されている。パ・リーグの場合は必要に応じてダブルヘッダーを行うこともある。それを含めても勝敗数が同じで決着がつかなかった場合は、引き分け発生時同様、上位チームがそのステージの勝者となる。
特例
- 2020年は新型コロナウイルスの影響で開幕が大幅に遅れたため、セ・リーグはCSの開催を中止し優勝チームがそのまま日本シリーズに進出する形となった。一方のパ・リーグは短縮という形を取り、従来のファイナルステージに相当する優勝チームと2位チームの試合のみ3勝先取制(優勝チームのアドバンテージ1勝は例年通り導入)で実施した。
- 2020年、2021年はレギュラーシーズンにおいて延長戦に関する特別ルールが設定されていたため(前者は10回終了時点で同点の場合引き分け。後者は延長戦自体行わず9回終了時点で同点の場合引き分け)、CSでも同様のルールを採用した。なお、これ以前にレギュラーシーズンで延長に関する特別ルール(3時間半経過後は新たなイニングに突入しないというもの)が採用されていた2011年、2012年は、通常通り最大12回まで時間制限なしで行う形を取った。
各年の対戦結果
MVP
年度 | セントラル・リーグ | 球団 | パシフィック・リーグ | 球団 |
---|---|---|---|---|
2007年 | 表彰なし | サブロー(第1ステージ) ダルビッシュ有(第2ステージ) |
ロッテ 日本ハム |
|
2008年 | アレックス・ラミレス | 巨人 | 涌井秀章 | 西武 |
2009年 | 脇谷亮太 | 巨人 | ターメル・スレッジ | 日本ハム |
年度 | セントラル・リーグ | 球団 | パシフィック・リーグ | 球団 |
2010年 | 和田一浩 | 中日 | 里崎智也(ファーストステージ) 成瀬善久(ファイナルステージ) |
ロッテ |
2011年 | 吉見一起 | 中日 | 内川聖一 | ソフトバンク |
2012年 | 石井義人 | 巨人 | 糸井嘉男 | 日本ハム |
2013年 | 菅野智之 | 巨人 | 田中将大 | 楽天 |
2014年 | 呉昇桓 | 阪神 | 吉村裕基 | ソフトバンク |
2015年 | 川端慎吾 | ヤクルト | 内川聖一 | ソフトバンク |
2016年 | 田中広輔 | 広島 | 中田翔 | 日本ハム |
2017年 | ホセ・ロペス | DeNA | 内川聖一 | ソフトバンク |
2018年 | 菊池涼介 | 広島 | 柳田悠岐 | ソフトバンク |
2019年 | 岡本和真 | 巨人 | 今宮健太 | ソフトバンク |
年度 | セントラル・リーグ | 球団 | パシフィック・リーグ | 球団 |
2020年 | (開催中止) | 中村晃 | ソフトバンク | |
2021年 | 奥川恭伸 | ヤクルト | 杉本裕太郎 | オリックス |
2022年 | ホセ・オスナ | ヤクルト | 吉田正尚 | オリックス |
2023年 | 木浪聖也 | 阪神 | 杉本裕太郎 | オリックス |
2024年 | 戸柱恭孝 | DeNA | 山川穂高 | ソフトバンク |
パ・リーグのプレーオフ
2004年から2006年までの3シーズンにおいて、パ・リーグでは優勝決定後の消化試合を減らす目的で、シーズン終了後にプレーオフを実施していた。これが興行的に成功を収めたこと、さらにこの3年間いずれもパのチームが日本一になったことから、セ・リーグでも導入を推す声が挙がり始め、2007年からはCSとしてセパ双方で開催されることになった。
レギュラーシーズン2位のチームと3位のチームが対戦→勝った方が1位のチームと対戦、という流れは現在のCSと同じだが、大きく異なるのは、日本シリーズ出場チームのみならずリーグ優勝および最終的な順位もこのプレーオフで決めていた、という点である。このため、2004年の西武と2005年のロッテは共に、レギュラーシーズン2位でありながら最終的な順位は1位(優勝)、そしてダイエー→ソフトバンクは、その2年ともレギュラーシーズン1位でありながら優勝できず、最終的な順位は2位となっており、順位表では2年とも1位と2位のゲーム差が-4.5として扱われている。
なお、2006年はレギュラーシーズン1位の日本ハムがそのままプレーオフも制し優勝している。
セカンドステージ(現在のファイナルステージに相当、5試合、3勝先取制)には、当初は2位に5ゲーム差以上をつけてのレギュラーシーズン1位という条件がなければアドバンテージは得られなかった。最終年の2006年は、無条件でアドバンテージが与えられた。
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関連項目
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