2000年、コミケット主催で開かれた2回のシンポジウムを誌上再現!
もはや知らないでは済まされない!?
マンガ、パロディ、評論など、表現に関わる人たち、同人誌やHPなどを主催する人たちが
知っていなければいけない著作権のさまざまについて考える。
(本書 帯より)
概要
毎年2回開催されるマンガ・アニメ同人誌展示即売会『コミケット』。その準備会が2000年2月と11月に開催した「マンガと著作権に関するたシンポジウム」でのパネラーのやり取りを、主にマンガ・同人誌に関連する著作権関連資料とともに誌上ライブ形式でまとめたものが本書である。
本書前半は、シンポジウム第一回目としてマンガ評論家やパロディも一つの方法論とするマンガ家ををパネラーに、引用のあり方やパロディとは何でありどうあるべ きかなど、これまでの問題を整理する方向で総花的に語ってもらい、後半ではシンポジウム第二回目として漫画やインターネット の問題について考えている弁護士や弁理士+パロディマンガ家をパネラーに現在の漫画における著作権について現状での法解釈を語ってもらっている。
今日では日本のメディア産業の支える柱の一つともいわれるマンガ・アニメ産業。
しかしながら著作権という視点から見てみると、長い間この業界では著作権という考えをおざなりにしてきた。
───マンガ家の作品中における他作品からの図版等の引用やパロディ。
───出版社の原稿管理や印税、出版権の管理。
───ファンサイドの二次創作活動や資料集、研究・評論書、HP運営における著作権問題。
そんな中、シンポジウムと前後して、マンガ「ゴーマニズム宣言」に書かれた内容を評論する際にそのマンガのカットを無断掲載したことの是非について争った『漫画の引用事件』、酷似したキャラを使用した性的描写が含まれるオリジナルビデオが同一性保持権を侵害しているか否かを争った『ときめきメモリアル同人ビデオ事件』、エロパロ同人誌を製作・発行していた個人が逮捕・刑事告訴された『ポケモン同人誌事件』などが発生。
これらを受けて、マンガ家・出版社サイドの権利を守っていくという意味合いにおける「著作権」を考えると同時に、読者・ファン・研究者・同人誌作家などユーザーサイドにおける問題を見直していこうというテーマでシンポジウムは開催された。
著作権とは、作品をつくるもの・自分を他者へ表現する者にとって自分を守ってくれるものであると同時に、自分と同じく表現する者とどう対していくべきかという問題も含んでおり、それはプロ・アマ・ファンすべて同じである。(要約)と、当日司会も務めた本書監修者でコミケット準備会初代代表の米沢嘉博は"本書の刊行にあたって"で述べている。
本書はマンガと著作権を扱った数少ない本、引用やパロディを行う側から論じた本として、マンガ・小説等のプロ作家や同人誌作家だけでなく、ニコニコ動画にて動画を製作・投稿する動画投稿者やニコニコ大百科を編纂している編集者も読んでおいて決して損はない書籍と言える。
目次
本書の刊行にあたって
第1回 ~マンガ家・評論家編~
出席者:夏目房之介(評論家) 高取英(評論家) 村上知彦(評論家) 竹熊健太郎(評論家) いしかわじゅん(マンガ家) とり・みき(マンガ家) 高河ゆん(マンガ家)
著作権法の概要/著作権上で許される引用とは/著作権が保護するものと保護しないもの/過去にあった著作権裁判/マンガを批評する側、される側/批評される側の感情/これだけは見せたくない!?/著者が行方不明で連絡が取れないときは?/著作権者の権利と利益の保護/マンガはいろいろなものを吸収して進化した/パロディの定義/フランスにおけるパロディ法/「ターザン」と「タルゾン」/アメリカの「フェアユース」の公理/パロディ表現の豊かさ/パロディと盗作の違い/コミケットにおけるパロディ本の問題点/批評としてのパロディとファン創作としてのパロディ/パロディをする側とされる側/パロディ、もじりは文化の伝承か?/パロディはファン同士の会話/完全なオリジナルは存在しない/ファン活動の同人誌を不特定多数に売る危険性/コミケットは場所を提供するだけ
著作権法(抜粋)
第2回 ~法律専門家・マンガ家編~
出演者:牧野二郎(弁護士) 飯田圭(弁護士) 石井裕一郎(弁理士) みなもと太郎(マンガ家)
パネラーあいさつ/インターネット時代の表現の自由/インターネット上の新しい著作権/商標権と特許権/何が著作権を侵害するのか/どこまで引用が許されるのか/パロディの宝庫「ホモホモ7」/背景の街並みの看板は書き換える必要があるか/作中での歌詞の引用と替歌の問題点/映画のストーリーをマンガ化した場合/ゴジラが都庁を蹂躙したら?/写真をそのまま模写することの違法性/NASAの地球の写真に著作権はあるか/「魔法使いサリー」が名前を変えた理由/音楽における著作権の制度/コラージュにおける創作性/原著作者と二次著作物の関係/法人著作物の場合の権利の在り方/肖像権とパブリシティ権/法解釈はつねに変化してゆく/許諾を受けたパロディは面白いか/著作権を勉強するには/希少本の複製にはどんな問題があるか/これから著作権とどう向き合っていくか
マンガ、アニメ、ゲームに関する著作権関連事件判例抄
著作権関連ブックガイド
(全217ページ 定価¥1,000 ISBN4-88379-089-4)
関連項目
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