リノ・エアレースはアメリカネバダ州リノ・ステッド空港で毎年9月に行われるエアレース。世界最速のモータースポーツとして知られる。正式名称はReno National Championship Air Races & Air Show
概要
毎年9月に1週間かけて行われる一大航空イベント。
レースは参加する飛行機の種類ごと6クラスに分けられている。それそれ規定のコースを周回し、速さを競う。
ステッド空港とその周囲の荒野に数本立てられた、パイロンと呼ばれる高さ約15mの目標塔の外側を飛ぶ「パイロンレース方式」で行われ、パイロンよりも内側、または低高度を飛行するとペナルティが課せられる。
コースは上空から見ると楕円形だが、実際には約70mの高低差がある。また高速での操縦中はパイロンの目視が難しく、パイロットの経験と高い技術が要求される。
草野球ならぬ草レースとして、パイロットは退役軍人、元テストパイロットやスペースシャトルの船長、または飛行機とは無縁の職業に就く者など、老いも若きも様々である。チームは家族同然(あるいは親族一団)となって参加している。
正式名称が示す通り、レースの合間には官民、新旧を問わず多くの航空機が飛行展示を行い、こちらも人気が高い。日本からは旅行会社のツアーも組まれている。
歴史
1964年、退役軍人のビル・ステッドにより、リノの農業用飛行場で開催されたのが始まりで、現在最も長い歴史を持つエアレースである。1966年には旧ステッド空軍基地(1949年に訓練中死亡したビルの弟・クロストン・ステッド空軍中尉にちなみ1951年に命名)が民間に開放されたのを受け、現在の開催地へ移動した。
現在に至るまで9.11テロの影響があった2001年を除き毎年開催されている。
クラス
アンリミテッド
リノ・エアレースにおける最高峰のクラスで、「ピストンエンジンによるプロペラ推進、乾燥重量4500ポンド以上」の他には制限がない。多くのチームはP-51、F8F、シーフューリーなど第二次世界大戦の戦闘機を極限まで改造した機体で参加するが、過去にはオリジナルのレース専用機体も登場した。現在のルールでは全長約8.1マイルのコースを6周(決勝のみ8周)する。最速の機体は周回速度が約500mph=805km/hにも達する。迫力あるレース展開で、最も人気の高いクラス。
ジェット
2002年から新設されたジェット機のクラス。当初はチェコ製練習機のL-39のみの参加であったが、2007年からは主翼後退角15度未満、アフターバーナー未装備の機体が参加可能となった。現在はL-29、T-33、T-2、マジステールといった機体も参加し、アンリミテッドを上回る記録も出ている。コースはアンリミテッドと同じ。
スポーツ
市販或いはキットの高性能単発機によるクラスで、出場する機種には5機以上の量産規定と民間機としての連邦航空局の滞空証明が義務付けられている。スポーツ機メーカーの販促が絡む面も。エンジン排気量は650立方インチ以下で過給も可。下位階級が約7マイル、上位が約8.1マイルのコースをそれぞれ6周。最高速度は400mphを超え、アンリミテッドに次ぐスピードを誇る。
フォーミュラ・ワン(IF1)
排気量200立方インチで100hpのコンチネンタルO-200エンジンを搭載し、固定ピッチプロペラ、固定脚、翼面積66平方フィート以上、空虚重量500ポンド以上などの規定がある。全長約3.2マイルのコースを8周し、速度は約250mph。
AT-6/SNJ
AT-6 (空軍呼称)/SNJ (海軍呼称) 練習機によるワンメイクレース。 機体に対する改造が厳しく制限されているため接戦になりやすく、パイロットの操縦と各チームの微妙なセッティングの差が勝敗を左右する。
コースは約5.0マイルを6周。速度は210~220mphほど。スピード感よりもコース取りの駆け引きを楽しむ玄人好みなレース。
バイプレーン(複葉機)
ライカミングまたはスーペリア製で排気量360立方インチ以下のエンジンを搭載、固定ピッチプロペラ、固定脚、翼面積は75平方フィート以上で、小さい側の主翼面積が総翼面積の1/3を越えること等の規定がある。 参加機の大半が日本でもおなじみのアクロ機、ピッツスペシャルで占められる。コース、速度はフォーミュラワンと同じ。
唯一の日本人、トニー・比嘉氏が#31 Tango-Tango(ピッツS1S)で参戦中。上位に食い込む活躍を見せている。
レースシステム
予選が週前半の月曜から水曜ににかけて行われ、各機がコースを1周するタイムアタックを行う。
木曜からの本戦では、各機が予選の平均速度によって上位から4階級(ゴールド、シルバー、ブロンズ、メダリオン)に振り分けられ、各階級でそれぞれ 「ヒートレース」を行う。各ヒートレースで上位の機体は翌日にひとつ上の階級に繰り上がる。
木曜から土曜の3日間、合計3回のヒートレースの結果で、日曜に行われるゴールド、シルバー、ブロンズ各階級の決勝戦の参加機、及びそのスタートポジションが決まる。
繰り上がりの例(2006年アンリミテッド) ※機数やレース数は参加機数やクラスによって変更有り
予選順位 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
ゴールド |
1~6 |
― |
ヒート2A 7機 |
ヒート3A 8機 |
ゴールド決勝 9機 |
シルバー |
7~13 |
ヒート1A 7機 (1位がゴールドへ) |
ヒート2B 7機 (1位がゴールドへ) |
ヒート3B 8機 (1位がゴールドへ) |
シルバー決勝 9機 |
ブロンズ |
14~20 |
ヒート1B 7機 (1位がシルバーへ) |
ヒート2C 7機 (1~2位がシルバーへ) |
ヒート3C 8機 (1~2位がシルバーへ) |
ブロンズ決勝 9機 |
メダリオン |
20~27 |
ヒート1C 7機 (1位がブロンズへ) |
_ (1~3位がブロンズへ) |
_ (1~3位がブロンズへ) |
― |
レースはフォーミュラ・ワンとバイプレーンが離陸からのスタート、それ以外のクラスでは先導機に導かれ飛行する各機が"Gentlemen, You have a Race"の合図とともに一斉にコースに進入する「ローリングスタート方式」を採る。
パイロンより内側、または低高度を飛ぶことを「パイロンカット」と言い、1回につき2秒×周回数のペナルティがレースタイムに加算される。反対にあまりに高高度や外側を飛んだ場合も失格となる。
事故
参加機体の多くは本来の仕様要求を超えた改造が施されており、更に超低空を高速かつ密集して飛行するため、レース中の事故が後を絶たないのも事実である。過去には機体の故障、空中分解、接触等で多くのパイロットが死亡している。
この内、2011年の#177 The Galloping Ghost(P-51改造機)の墜落は、制御を失った機体が観客席に突っ込むというリノ・エアレース始まって以来の大惨事となった。この事故でパイロットを含む11人が死亡、また多くの負傷者を出し、この年の事故以降のレースは全て中止された。
一時はレース自体の存続も危ぶまれたが、関係者の尽力により、2012年からは一部規定・規則を改め開催されている。
関連動画
YouTubeに比べると、ニコニコ動画での関連動画は多くない。
関連商品
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関連コミュニティ
関連項目
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