モータースポーツとは、モーターやエンジンを使って稼働する乗り物を用いて行われる競技・スポーツである。一般的に4輪または2輪の競技を指すことが多い。
概要
カテゴリと呼ばれる競技ランクや競技種別の違いによって定められた規則(ルール:モータースポーツではレギュレーションと呼ぶことが多い)に従い、自動車、バイク(オートバイ)、モーターボートや飛行機などモーターやエンジンを動力源とする乗り物を用いて「速さ」もしくは「距離」を競う競技である。
そのうち、自動車・バイクのモータースポーツには、主に以下のものがある。
- ロードレース
- レース場やサーキットなどの舗装されたクローズドコースにて行われる競技。ナンバー登録されている市販車で行うことも可能だが、一般には競技専用に作られた公道は走れないマシン(レーシングカー、またはレーシングバイク)を使う。同時に複数台がスタートし、規定周回に達した時点での順位(スプリントレース)、または規定時間に達した時点での走行距離を争う(耐久レース)。おもにこの2種類があるが、両者を分ける明確なラインは定められていない。参加するドライバー(ライダー)は、公道を走るための免許は不要だが、レース主催者や運営組織の定めるライセンスを持つ必要がある場合が多い。
- 公道レース
- 公道を閉鎖して行われるレース。ロードレースと同じく、スプリントレースと耐久レースがある。恒久的な施設なしでレースが開催できるため、費用的なメリットから欧米では盛んに行われている。安全のためのランオフエリア(コース外の余分な場所)が確保しにくく、ブラインドコーナー(見通しの悪いコーナー)が多くなるので難易度や危険性は高くなる。また、交通手段を長時間閉鎖することになるので、周辺住民の理解と協力が必要になる。これが障壁になって、日本ではほとんど行われていない。
- ラリー
- 主に公道を使い、市販された乗用車をベースにしたマシン(ナンバー登録されており、公明正大に公道を走ることができるクルマやバイク)で行われる競技。なので、ドライバー(ライダー)は開催国で通用する公道用の免許を持つ必要がある。決められた区間を決められた時間で正確に走ることが要求されるロードセクションと、決められた区間の走行タイムを競うスペシャルステージ(SSと呼ぶ)から成るが、どちらか一方の要素のみで構成される場合もある。ほとんどが舗装された状態の良い路面で行うロードレース・公道レースと異なり、未舗装の悪路(ダート)や舗装されていても条件の悪い峠道・山道(ターマック)で行うため、ドライバーは同乗するナビゲーター(コ・ドライバー)の指示に従いつつ、常に状況判断をしながら走らなくてはならない。もちろん二輪の場合はライダーが自身で状況把握と判断をしなければならない。
- ドラッグレース
- 直線道路に2台のマシンを並べてスタートし、わずか1/4マイル(約402.33m)の距離を加速して駆け抜けるタイムを競う。アメリカにおいては非常にメジャーなカテゴリーであり、細かなクラスとルールが定められた上で盛んに行われている。よくゼロヨンレースと混同されるが、これはきっちり400mであり、特にルールの定まったイベントはない。要するにゼロヨンレースの方は自動車の加速性能の目安を図るための個人的競技の場合がほとんどである。
- トライアル競技
- 決められた区間をいかに速く正確にゴールするかを競う。スラローム競技であるジムカーナやダートトライアルなどがある。開催するのに大きな施設を必ずしも要しないため、入門的なカテゴリーとして親しまれている。二輪自動車では複雑な地形(人工的に作られる場合もある)を、いかに足をつかずに走破するかを競う競技が多い。
- アメリカンモータースポーツ
- これらのうち、アメリカでイベントが発祥して開催されているモータースポーツは特にアメリカンモータースポーツと呼んで区別されることがある。これは、ヨーロッパ中心のモータースポーツとくらべてその競技のスタイルや興行面などで独自の発展を遂げているためである。
モータースポーツはスポーツじゃない?
しばしば語られることとして、「モータースポーツはスポーツじゃない」というものがある。
そう主張する側の論理はたいてい
「自分の体では走らず、エンジンにまかせて後はアクセルペダルを踏んでハンドルを回すだけの簡単なお仕事でしょ?」
というようなものである。
たしかに、日本においては「スポーツ=自ら体を動かすこと」という公式が人々の脳に焼き付いている傾向がある。そのために、モータースポーツは車やバイクなどの動力で動くもので競うからスポーツでない…!というのである。
ちょっと待て。その前にこの動画を見てほしい。
あの世界一熱い男であり、押しも押されもせぬスポーツマンである松岡修造が、半泣きになっているのである。
いかに、モータースポーツが半端無く自ら体を動かすのと同様の身体能力を要求するかが解ろう。
そう、白鳥などの水鳥が一見優雅に泳ぎながら水中では懸命に足を掻いて水を蹴っているように、ドライバーたちは、加速・減速・コーナーリングの度に、脳みそを揺さぶられそうになり、五臓六腑をかき回されそうになりながらマシンを華麗に操っているのである。
そして、ドライバー以外のメカニックなどのチームスタッフも、マシンを作り上げて最高のスポーツとするために体を張って奮闘しているのだ。
第一、当大百科「スポーツ」の記事を熟読していただければ、「スポーツ=体を動かす」が固定観念に過ぎないことがわかるだろう。要はルールにそってみんながエンジョイ出来ることならなんでもスポーツなのである。
もちろん、個人的好き嫌いや興味関心の問題だから無理強いはしないが、ぜひとも上のような色眼鏡を一度捨てた上で、下に紹介されたような動画を見てほしい。そして、「モータースポーツって面白いかも」と少しでも思ってくれれば、編集者としてはこの上ない喜びである。
主な4輪モータースポーツ
- フォーミュラカーレース(アメリカではオープンホイールとも呼ぶ)
- ツーリングカー・スポーツカー・プロトタイプ系
- ラリー
- ジムカーナ
- ダートトライアル
- サーキットトライアル(2014年度からJAF選手権開催)
- ストックカー
- ドラッグレース
- その他
車両規格
過去に存在したカテゴリー・シリーズ等
- 旧FIA車両規格車両規定
- スピードカー・シリーズ
- チャンプカー→IRLと統合
- IRC(インターコンチネンタルラリーチャレンジ)→FIA ERC(ヨーロッパラリー選手権)に統合
- FIA GT選手権→FIA GTシリーズに移行の後、現在はブランパンスプリントシリーズとして開催
- FIA GT3ヨーロッパ選手権→同上
- WTCC→WTCRに取って代わられる。
- ワールド・シリーズ・バイ・ルノー→F1スーパーライセンスのポイント制導入により衰退。
- ALMS(アメリカン・ルマン・シリーズ)→Grand-AMと合併、2014年からUSCCとして開催
- Grand-Am→ALMSと合併、2014年からUSCCとして開催
- フォーミュラニッポン→スーパーフォーミュラへ移行
- 全日本F3選手権 → 2020年からスーパーフォーミュラ・ライツへ移行
主な2輪モータースポーツ
- MotoGP(旧WGP)(ロードレース世界選手権)
- マン島TTレース
- モトクロス世界選手権
- スーパーバイク世界選手権(SBK または WSB)
- 全日本ロードレース選手権(SUPERBIKE または JSB)
- 鈴鹿8耐
- オートレース
- ニーラー
4輪・2輪以外のモータースポーツ
日本のサーキット
モータースポーツを題材にしたフィクション作品
- グラン・プリ
ジェームズ・ガーナー、イヴ・モンタン等出演。1960年代なかばのF1世界選手権を舞台にした映画。当時の古いサーキットの様子が数多く見られるなど、記録映画としても貴重。 - 栄光のル・マン
スティーブ・マックイーン主演。1970年のル・マン24時間を舞台にポルシェとフェラーリの対決を描く映画。 - レーサー
ポール・ニューマン主演、1960年代のインディ500を描く映画。 - ラッシュ/プライドと友情
ダニエル・ブリュール、クリス・ヘムズワース主演。1976年のF1を舞台にニキ・ラウダとジェームス・ハントの対決を史実をベースに描く映画。日本語吹き替え版はなぜかキンキキッズの堂本兄弟が出演。どうしてこうなった。 - フォードvsフェラーリ
マット・デイモン、クリスチャン・ベール主演。1966年のル・マン24時間を描く映画。アカデミー賞音響編集賞、編集賞受賞。 - 汚れた英雄
大藪春彦の小説。後に草刈正雄主演で映画化。全日本ロードレース選手権やロードレース世界選手権を舞台に日本人ライダーの活躍と愛欲の日々を描く。 - capeta
作者は曽田正人。2000年代を舞台に、レーシングカートを始めた少年がF1を目指す漫画。最もヒットしたモータースポーツ漫画の一つ。 - F
作者は六田登。1980年代後期~1990年代初期を舞台に、親への反抗からレースを始めた青年が父の存在を追い抜くまでの物語。モータースポーツ漫画である以前に家族ドラマ・ヒューマンドラマ漫画であり、鬱展開が山盛り。読みたい人は覚悟が必要。 - HAYATE
作者は風堂じゅん。1992年~1994年のF1を舞台に、日本の弱小プライベーターF1チームにふらりと現れた青年が、チームとともに世界チャンピオンを目指す漫画。 - ロケットでつきぬけろ!
作者はキユ(現・松井勝法)。レーシングカートを始めた少年がF1を目指す物語。ちなみに連載は上記capetaより早い。タイトル通りロケットでつきぬけることになった打ち切り漫画。 - 赤いペガサス
作者は村上もとか。1977年のF1を舞台に、特殊な血液型を持つ日系イギリス人の青年がワールドチャンピオンを目指す漫画。主人公と実の妹との道ならぬ恋など、ある意味時代を先取りしていた。 - サーキットの狼
作者は池沢さとし(現・池沢早人師)。街道レーサー(今で言う走り屋)の青年が、サーキットでのレースに目覚めていく漫画。当時の世にスーパーカーブームを巻き起こした。 - よろしくメカドック
作者は次原隆二。町の小さなチューニングショップの男が、自ら製作したチューニングカーでレースに参戦していく漫画。 - バリバリ伝説
作者はしげの秀一。1980年代の日本を舞台に、峠の走り屋の高校生の少年が、レースの世界にデビューする漫画。やがてWGPに舞台は移っていく。二輪のモータースポーツ漫画の代表的存在である。 - ふたり鷹
作者は新谷かおる。同じ日に同じ病院で産まれた2人の「鷹」が、数奇な運命をたどりつつライバルとして2輪レース(こちらは主に耐久レース)の世界で戦う漫画。 - トップウGP
作者は藤島康介。幼なじみで年上の女性に憧れて2輪レースの世界に飛び込んだ少年が、MotoGPを目指す漫画。 - マッハGoGoGo
1967年放映のアニメ。タツノコプロのオリジナル作品。スポーツカーレースがテーマであり、後にリメイクされたり、ハリウッド映画になったりと現在でも割と有名。 - アローエンブレム グランプリの鷹
1977年放映のアニメ。主役マシンが、ティレルの6輪車を上回る8輪車(リアタイヤが一軸並列ダブルタイヤ)というトンデモなデザインである。尤も、この時期の他のレースアニメも似たり寄ったりで、ロボットアニメまがいのマシンばかりであった。そして、主人公轟鷹也の師匠として、ニック・ラムダ(どう見てもニキ・ラウダ)が登場する。肖像権?なにそれおいしいの?な良き時代である。 - 新世紀GPXサイバーフォーミュラ
1991年放映のアニメ。ナビゲーション用AIを搭載した超ハイテク架空フォーミュラカーのレースを描く。 - つうかあ
2017年放映のアニメ。レーシングニーラーの女子高校生全国大会を描く。
モータースポーツの祭典
関連項目
その他
関連動画
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