未知との遭遇とは、1977年11月16日に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の代表作であり、SF映画の金字塔である。
日本では本国に遅れること約3ヶ月後の1978年2月25日に公開された。
概要
原題は「Close Encounters of the Third Kind」。直訳すれば「第三種接近遭遇」という意味になる。略称としては「CE3K」など。
それまでの宇宙人を描いたSF作品とは異なり、題名の通り、宇宙人との遭遇、それを巡る一般人たちの不思議な体験、そして最終的に友好を結ぶという点が重点的に描かれている。
特撮技術もこの頃の作品としては『スター・ウォーズ』と並ぶオーバーテクノロジーに見える作品ではあるが、実際にはプラモデルを使っていたり、山を覆う雲に至っては「水槽にミルクを入れて巨大な雲を発生させる」という現在でも使われる手法が使われていたりする。
公開当時は大きなヒットとはならなかったものの、再上映や国外(とりわけ日本)で作品の評判が高まると、'80年に一部シーンを追加編集した特別編が公開されるなど、スピルバーグの代表作として世に認知されるようになり、彼自身もSF映画作品の第一人者として知られるようになる。
日本ではこの作品の公開とほぼ同時期に『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』や『宇宙戦艦ヤマト (劇場版)』などがヒットしたこともあり、空前のSFブームを巻き起こし、本作はその一端を担った重要作として語られることも多い。
バージョン違いについて
この映画には上記のとおりスピルバーグ自身の手で複数のバージョンが製作されている。これは「ゾンビ」や「ブレードランナー」と同じく、かなり複雑化している。
以下に各バージョンが生まれるに至った経緯を解説する。
なお、これらのバージョンは日本では2007年12月19日にリリースされたDVDボックスおよびBlu-ray discボックス『未知との遭遇 製作30周年アニバーサリー アルティメット・エディション』(以下“AUE”)で映画館で公開されたものについては全バージョンがソフト化された。
現在では、さらにこれを1本のディスクに纏めた廉価版BDのスペシャル・エディションが発売されている。再生環境を持っている人であれば今から買うならこのスペシャル・エディション一本をお勧めする。
劇場公開版
本作が初めて世に公開されたもの。1977年版とも。日本で最初に映画館のスクリーンに映されたのももちろんこれ。
このバージョンにのみ、ロイが発電所で働いているシーンが存在し、彼の本職が明確に描かれている(他のバージョンでは、発電所の車自体は映っているが、職員であることは少々わかりづらい)。
また、細かい部分では宇宙船が初めて現れたシーンで一般人が「月ロケットよりハイウェイの方が進んでいる」と皮肉を言うシーンや、封鎖された街の兵士にロイが「スミス」と名乗って適当な言い訳をするシーンがあったりするのもこのバージョンだけである。
また、中盤の山場でもあるヘリコプターからの逃避行はこのバージョンが一番長く、他のバージョンでは細かい部分がカットされている。135分。実は後述の通り、当時のVHSなどでは全編入りきらなかった上、特別篇の公開があったこともあって、長年封印されたバージョンと化していた。AUEにて初ソフト化。
特別篇
初公開の3年後1980年に、初公開時に盛り込めなかった場面を追加撮影し「マザーシップ内部の描写」を条件に再編集されたもの。
最も大きな追加シーンとしてはこのバージョン以降盛り込まれることになる砂漠で幽霊船が発見されるシーンのほか、前述の通りマザーシップの内部が新たなシークエンスとして追加された。
スピルバーグ自身は「内部を想像する」という映像の引き出すマジックが奪われることを嫌ったため、この「マザーシップ」の映像はこのバージョンのラストだけで確認できる。
しかし、このシーンで冒頭の小さい光の正体が明かされるという伏線の回収も行われているので、カットされたことで小さな光が何だったのか?はわからなくなった。
エンド・クレジットの後半に使われたのはディズニー映画『ピノキオ』の主題歌「星に願いを」である。主人公が家族に『ピノキオ』を観に行こうと話している場面では、妻ロニーは主人公を「ジミニー・クリケット」(『ピノキオ』に登場するコオロギのキャラクター)と呼んでいる。
小型の円盤のアイディアを練る段階で、マクドナルドのm字シンボルそっくりの円盤が考案された。実際には多少形が異なるが、小型円盤がマクドナルドの看板の前で自分の仲間を眺めるかの如く小停止し、ハンバーガーの画が映る(バリーが「アイスクリーム!」と叫んだ後)というシーンに採用された(が、流石にスポンサー的に露骨過ぎるためか、シーン的にも冗長でもあるためか、後の版ではカット)。
また、全体的なシーンの推敲もやり直され、若干シーンの順番も異なるほか、冒頭のロイ一家の導入シーンが新たに撮影され、細かい部分が多くカットされたことで全体的な長さは全てのバージョンで最も短い132分となっている。公開時期の関係で、日本国内でビデオ化されるのは早かったものの、DVDにはファイナル・カットが採用されたこともあって、DVDになるのは遅れてしまい、AUEにて初のデジタルソフト化となった。
ソフト版
VHS、LDで最初に発売された際にメディア上の制約で編集されたバージョン。劇場公開版と特別篇を元にロイのファーストコンタクトが差し替えられ、ロイたちがデビルズタワー麓へ連行後のヘリから脱出するシーンがカットされているほか、ロイが家族とマッシュポテトを食べるシーンの前半部分がカットされている。当時発売されたビデオでしか見られないので、今となっては結構レア?
ファイナル・カット版
1999年に公開20周年を記念して特別篇から再編集されたバージョン。
特別篇をベースにしているので、砂漠の幽霊船のシーンなどは残されているほか、ロイが狂ったようにデビルズタワーの模型を作るシーンをはじめとして、カットされたいくつかのシーンを復活させたほか、スピルバーグ自身が最も望んでいたマザーシップ内部描写の削除、フイルムのデジタルリマスター等を行った。
この結果、137分と一般上映されたものとしては最も長いバージョンとなった。AUEにはさらにリマスター収録されている。この映画では唯一DVDが単品販売されており、レンタル用も基本的にこのバージョンが提供されているので、ニコニコユーザーにとっては最も入手しやすい版であるといえよう。
アメリカABCテレビ放映版
現在確認されているものの中で最長のバージョン。劇場公開版に特別篇の追加シーンを盛り込んだもので、143分ある。
完全版(?)
ファンの手によって作られたとされる非公式版。劇場版、特別篇、ファイナル版全てのシーンをつなぎ合わせているもので、合計145分~147分ほどになるといわれる。技術と時間があれば君も作ってみよう。
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