鮎川哲也賞とは、東京創元社が主催する推理小説の公募新人文学賞。賞金はない印税全額。
概要
1988年、東京創元社が全13巻の書き下ろし推理小説シリーズとして刊行した「鮎川哲也と十三の謎」(この叢書で宮部みゆき、北村薫、有栖川有栖、山口雅也などがデビューしている)において、13冊目を「十三番目の椅子」として一般公募[1]し、今邑彩が『卍の殺人』で最優秀賞に選ばれデビューした。
翌年、この「十三番目の椅子」を発展させる形で発足したのが鮎川哲也賞である。そのため、鮎川哲也本人も第7回まで選考委員に入っていた。
本格らしい本格推理小説を受け入れるほぼ唯一のミステリ新人賞として、初期から芦辺拓、二階堂黎人[2]、加納朋子、近藤史恵、北森鴻、飛鳥部勝則などを送り出し、また受賞パーティが本格推理作家の交流の場となることで、新本格ムーブメントにおいて多大な役割を果たした。
21世紀に入ってからは一時やや低調な時期が続いたものの、ゼロ年代後半以降は似鳥鶏、七河迦南、相沢沙呼、青崎有吾、市川憂人といった作家を送り出し、2017年の第27回受賞作『屍人荘の殺人』(今村昌弘)はミステリーランキング三冠を達成してベストセラーに。その後も方丈貴恵を送り出すなど、現在の本格ミステリ界を支える若手・中堅どころを輩出している。
また受賞に至らなかった最終選考作が後に刊行される例が多いのも特徴で、篠田真由美、貫井徳郎、矢口敦子、城平京などが本賞の最終選考作で東京創元社からデビューしている。西澤保彦、柄刀一、氷川透、紺野天龍なども本賞への応募作が後に他社で刊行されており、本賞出身と言えないこともない。
大百科に記事のある受賞・候補作
大百科に記事のある受賞・候補作家
- 今邑彩 (「十三番目の椅子」最優秀賞 『卍の殺人』)
- 芦辺拓 (第1回受賞 『殺人喜劇の13人』)
- 西澤保彦 (第1回最終候補 『聯殺』) ※『仔羊たちの聖夜』の原型
- 加納朋子 (第3回受賞 『ななつのこ』)
- 貫井徳郎 (第4回最終候補 『慟哭』)
- 北森鴻 (第6回受賞 『狂乱廿四孝』)
- 城平京 (第8回最終候補 『名探偵に薔薇を』)
- 氷川透 (第8回最終候補 『眠れない夜のために』)※『密室は眠れないパズル』と改題して原書房から刊行
- 飛鳥部勝則 (第9回受賞 『殉教カテリナ車輪』)
- 似鳥鶏 (第16回佳作 『理由あって冬に出る』)
- 相沢沙呼 (第19回受賞 『午前零時のサンドリヨン』)
- 青崎有吾 (第22回受賞 『体育館の殺人』)
- 市川憂人 (第26回受賞 『ジェリーフィッシュは凍らない』)※ニコニコ大百科ではマル憂P名義
- 今村昌弘 (第27回受賞 『屍人荘の殺人』)
- 方丈貴恵 (第29回受賞 『時空旅行者の砂時計』)
- 紺野天龍 (第29回最終候補 『神薙虚無最後の事件』)※応募時は「天堂薫」名義
関連項目
脚注
- *これは1956年、講談社の「書下し長篇探偵小説全集」第13巻が「十三番目の椅子」として公募され、鮎川哲也が『黒いトランク』で受賞したことに倣ったもの。
- *ただし二階堂の佳作受賞作『吸血の家』は東京創元社からは刊行されず、立風書房から刊行された。そのためなのかどうかは不明だが、鮎川賞出身にも関わらず二階堂の単著が東京創元社から出たことは未だに一度もない。
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