青崎有吾(あおさき ゆうご)とは、日本のミステリ作家。平成のエラリー・クイーンである。
概要
1991年神奈川県生まれ。明治大学文学部卒。大学時代はミステリ研究会に所属していた。
大学在学中からライトノベルの新人賞に投稿していたが、その選評で「ライトノベルよりミステリの賞に応募すべき」と言われ、在学中の2012年、『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。
あからさまに綾辻行人の「館シリーズ」の冗談パロディなタイトル、名探偵・裏染天馬はアニメオタクのダメ人間な高校生――という一見キワモノっぽい見た目に反して、中身はエラリー・クイーンばりのロジックによるゴリゴリの犯人当て本格。ロジックの粗も指摘されたが総じてミステリ界でも高い評価を得る。
続く裏染天馬シリーズ第2作の『水族館の殺人』で第14回本格ミステリ大賞候補(森川智喜『スノーホワイト』に敗れ投票数2位で落選)。本作で青崎には「平成のエラリー・クイーン」の称号が授けられたが、本人は荷が重いとわりと嫌がっている模様。「そもそも"平成のエラリー・クイーン"は有栖川有栖では?」との声もあり、「"平成のクイーン"は有栖川、"平成生まれのクイーン"は青崎」説や「有栖川は"浪速のクイーン"」説、「いや平成のクイーンは依井貴裕だろ」「いやいや氷川透だろ」など諸説紛糾している(冗談です)。
ともあれ以降も、裏染天馬シリーズのほか、19世紀末ヨーロッパオールスター大乱闘闇鍋伝奇本格ミステリ『アンデッドガール・マーダーファルス』シリーズ、トリック担当と動機担当のダブル探偵連作ミステリ『ノッキンオン・ロックドドア』シリーズなどを発表し、本格ミステリ界の俊英として活躍する。
2022年には『早朝始発の殺風景』がWOWOWでドラマ化。2023年には『アンデッドガール・マーダーファルス』がテレビアニメ化、『ノッキンオン・ロックドドア』がテレビ朝日系でドラマ化。
2024年、特殊ゲーム頭脳戦ものの『地雷グリコ』で第24回本格ミステリ大賞、第77回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門、第37回山本周五郎賞をトリプル受賞した。第171回直木賞候補にもなったが落選。
小説以外では、原作を担当する漫画『ガス灯野良犬探偵団』(作画:松原利光)が2023年から週刊ヤングジャンプで連載中。
青崎のデビュー以降、2010年代から世代の近い80~90年代生まれの本格ミステリの新人が続々と登場したこともあり、新世代の本格ミステリの旗手として扱われたりもする。評論家の佳多山大地が『新本格ミステリを識るための100冊』で「青崎以後」という歴史区分を提唱したりもしている。
実際、青崎もまた、
「21世紀の漫画・アニメ・ゲーム・ライトノベル文化の影響を強く受けている」
「同時に『本格ミステリであること』にきちんと強いこだわりを持つ」
「特殊設定ミステリ(それに類する作品)を書いている」
といったこの世代の本格ミステリ作家たちの特徴を兼ね備えている。(おそらく)最初の「90年代生まれの本格ミステリ作家」でもあり、2010年代以降の本格ミステリを語る上で外すことのできない作家に位置づけられるのは間違いない。
ミステリらしいミステリを読みたい人には『体育館の殺人』から始まる裏染天馬シリーズ、ミステリでもアクションでも伝奇でもなんでもいいから面白い話が読みたい、という人には『アンデッドガール・マーダーファルス』シリーズ、頭脳戦ものが好きな人は『地雷グリコ』がオススメ。
ただし複数のシリーズを抱えながら、本が出るのはだいたい年1冊ペースなので、『アンファル』は2巻と3巻の間が5年空いたし、裏染天馬シリーズも2024年現在、最新刊の『図書館の殺人』からもう8年以上新刊が出ていない。冊数が少ないので今からでもすぐ追いつけるが、追いついたあとは気長に構えよう。
作品リスト
- 体育館の殺人 (2012年、東京創元社→2015年、創元推理文庫)
- 水族館の殺人 (2013年、東京創元社→2016年、創元推理文庫)
- 風ケ丘五十円玉祭りの謎 (2014年、東京創元社→2017年、創元推理文庫)
- アンデッドガール・マーダーファルス1 (2015年、講談社タイガ)
- 図書館の殺人 (2016年、東京創元社→2018年、創元推理文庫)
- ノッキンオン・ロックドドア (2016年、徳間書店→2019年、徳間文庫)
- アンデッドガール・マーダーファルス2 (2016年、講談社タイガ)
- 早朝始発の殺風景 (2019年、集英社→2022年、集英社文庫)
- ノッキンオン・ロックドドア2 (2019年、徳間書店→2022年、徳間文庫)
- アンデッドガール・マーダーファルス3 (2021年、講談社タイガ)
- 11文字の檻 青崎有吾短編集成 (2022年、創元推理文庫)
- アンデッドガール・マーダーファルス4 (2023年、講談社タイガ)
- 地雷グリコ (2023年、KADOKAWA)
作品別の各種ミステリーランキング順位(判明分)
作品名 | このミス | 週刊文春 | 本格ベスト10 | ミス読み |
---|---|---|---|---|
体育館の殺人 | 圏外 | 圏外 | 2013年版5位 | 圏外 |
水族館の殺人 | 圏外 | 圏外 | 2014年版2位 | 圏外 |
風ケ丘五十円玉祭りの謎 | 圏外 | 圏外 | 2015年版8位 | 圏外 |
アンデッドガール・マーダーファルス1 | 圏外 | 圏外 | 2017年版20位 | 圏外 |
図書館の殺人 | 2017年版20位 | 圏外 | 2017年版2位 | 圏外 |
ノッキンオン・ロックドドア | 圏外 | 圏外 | 2017年版17位 | 2017年版18位 |
アンデッドガール・マーダーファルス2 | 圏外 | 圏外 | 圏外 | 圏外 |
早朝始発の殺風景 | 2020年版12位 | 圏外 | 2020年版19位 | 2020年版19位 |
ノッキンオン・ロックドドア2 | 圏外 | 圏外 | 2021年版23位 | 圏外 |
アンデッドガール・マーダーファルス3 | 2022年版17位 | 圏外 | 2022年版19位 | 2022年版18位 |
11文字の檻 | 2024年版12位 | 2023年19位 | 2024年版20位 | 2024年版9位 |
アンデッドガール・マーダーファルス4 | 圏外 | 圏外 | 圏外 | 圏外 |
関連リンク
- 青崎有吾(@AosakiYugo) - 本人のTwitter
- 対談 米澤穂信×青崎有吾 青春とミステリの、特別な関係 - 米澤穂信との対談
関連項目
親記事
子記事
兄弟記事
- 森博嗣
- 西尾維新
- 有栖川有栖
- 小林泰三
- 貴志祐介
- 芦辺拓
- 横山秀夫
- 芥川龍之介
- 宮部みゆき
- 歌野晶午
- 島田荘司
- 伊坂幸太郎
- 石持浅海
- 東野圭吾
- 森見登美彦
- 殊能将之
- 法月綸太郎
- 黒田研二
- 恩田陸
- 星新一
- 北山猛邦
- 北村薫
- 深水黎一郎
- 綾辻行人
- 大沢在昌
- 田中芳樹
- 小松左京
- 古処誠二
- 浅暮三文
- 浦賀和宏
- 小川一水
- 時雨沢恵一
- 神林長平
- 田中啓文
- 伊藤計劃
- 舞城王太郎
- 神坂一
- 麻耶雄嵩
- 乾くるみ
- 加納朋子
- 貫井徳郎
- 川原礫
- 奥田英朗
- 長谷敏司
- 石田衣良
- 小野不由美
- 今野敏
- 水野良
- 有川浩
- 詠坂雄二
- 氷川透
- 東川篤哉
- 道尾秀介
- 西村京太郎
- 米澤穂信
- 万城目学
- 森岡浩之
- 三崎亜記
- 古泉迦十
- 海堂尊
- グレッグ・イーガン
- 西村賢太
- 円城塔
- 田辺青蛙
- 田中慎弥
- 岩井志麻子
- 笹本祐一
- 朱川湊人
- 三田誠
- 真保裕一
- 品川ヒロシ
- 月村了衛
- 辻村深月
- 真梨幸子
- 佐々木譲
- 赤川次郎
- 梶尾真治
- 井上夢人
- 瀬名秀明
- 荻原規子
- 竹本健治
- はやみねかおる
- 池井戸潤
- 山田風太郎
- 船戸与一
- 北方謙三
- 連城三紀彦
- 高村薫
- 湊かなえ
- 三津田信三
- 誉田哲也
- 野崎まど
- 中山七里
- 似鳥鶏
- 泡坂妻夫
- 桐野夏生
- 倉知淳
- 黒川博行
- 広瀬正
- 相沢沙呼
- 皆川博子
- 牧野修
- 稲見一良
- 恒川光太郎
- 西澤保彦
- ジョージ・オーウェル
- 天藤真
- 町井登志夫
- 今邑彩
- ピエール・ルメートル
- 初野晴
- 羽田圭介
- 岡嶋二人
- 石川博品
- 藤井太洋
- 江戸川乱歩
- 若竹七海
- アガサ・クリスティ
- エラリー・クイーン
- 島本理生
- 横溝正史
- アーサー・C・クラーク
- 須賀しのぶ
- 篠田節子
- 宮内悠介
- 青山文平
- 真藤順丈
- 円居挽
- 松本清張
- 芦沢央
- 内田幹樹
- 細音啓
- 折原一
- 早坂吝
- 呉勝浩
- 西村寿行
- 久住四季
- 月夜涙
- 高木彬光
- 遠田潤子
- 中村文則
- 鮎川哲也
- 沼田まほかる
- 山本巧次
- 佐藤究
- 北森鴻
- 大山誠一郎
- 山田正紀
- 鳥飼否宇
- 白井智之
- 斜線堂有紀
- 夕木春央
- 矢樹純
- 井上真偽
- 方丈貴恵
- 紺野天龍
- 今村昌弘
- 魯迅
- 都筑道夫
- 仁木悦子
- 今村翔吾
- 辻堂ゆめ
- 土屋隆夫
- 紙城境介
- 林真理子
- 小栗虫太郎
▶もっと見る
- 2
- 0pt