80cm列車砲とは、ドイツ陸軍が開発・実用化した世界最大の列車砲である。
概要
宿敵フランスが作り上げた対ドイツ要塞線であるマジノ線を攻略するために考案・開発された世界最大の列車砲である。ドイツが誇る重工業企業のクルップ社によって、一号機「グスタフ」と二号機「ドーラ」の二台が製造された[1]。
その見た目の迫力さと色々と突っ込みどころ満載な設計思想、そして大艦巨砲主義を愛する日本人の性故か、ドイツのトンデモ兵器たちの中では高い知名度と人気を誇り、サブカルチャー界隈でも度々80cm列車砲をモチーフとした兵器が登場している。
口径は80cmで、砲身長は28.9m。 全長42.9m、全高11.6m、総重量は1350tにも及び、7tもの砲弾を約37km先まで発射することができるという規格外の巨砲であった[2]。そのあまりの巨大さ故に運用には砲操作に約1400人、防衛・整備等の支援に4000人以上の兵員と技術者が必要になる。
線路に乗っているのは射撃地点での話で、射撃地点へは分解して輸送される。そのため、実際の砲撃には、整地やレールの敷設、組み立てなどに数週間を必要とする。射撃時は砲弾そのものの装填にも時間がかかり、1時間に3、4発程度しか発射することはできなかった。他にも砲身を左右に振ることができない、砲弾の輸送のために専用の貨物列車が必要、100発程度の使用で砲身を交換しなければならないなどの難点を抱えており、よく言えばロマン砲、悪く言えば欠陥兵器であった。
運用
「ドーラ」が実戦に参加したのかどうかは分かっていない。「グスタフ」は1942年にクリミア半島にあるソ連軍のセバストポリ要塞に対する攻撃に使われ、30~40発を発射したといわれる。その内の1発は要塞の地下弾薬庫にまで突入して爆発し、これを完全に破壊している。また、1944年9月のワルシャワ蜂起の際、ワルシャワ市内に30発を発射しているが、どの程度の被害を与えたのかは不明。[3]
その後は戦況の悪化に伴い、グスタフもドーラも連合軍に接収されることを恐れたドイツ軍自らの手によって破壊され、その短い歴史に幕を下ろしたのであった。ちなみに、当初の開発目的だったマジノ線への攻撃に使用されることは終ぞ無かった。
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関連項目
- 列車砲
- 軍事 / 軍事関連項目一覧
- ナチス・ドイツ
- 第二次世界大戦 / 独ソ戦
- 大砲 / キャノン
- 大艦巨砲主義
- ロマン砲
- 砲兵
- 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス(一号機が元ネタ)
- No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ(二号機が元ネタ)
- 少佐(HELLSING)・・・かの有名な演説で触れられている。彼曰く「レジスタンスを都市区画ごと木端微塵にしたときは絶頂するような気分」だったらしい。
- エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ・・・彼女が使用する聖遺物『極大火砲・狩猟の魔王』としてドーラ列車砲が登場する。
脚注
- *なお、名前の由来はそれぞれクルップ社会長と設計者の妻の名前からとられている。
- *戦艦として史上最大であった大和の大砲が46cmということを考えればその巨大さが窺い知れる。
- *「兵器と戦略」江畑謙介 朝日新聞社 1994 pp.126-127
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