シャルル・カミーユ・サン=サーンス(Charles Camille Saint-Saëns,1835-1921)は、フランスの作曲家である。
生まれは官吏の家庭であり、モーツァルトと並ぶ程の神童と称され、2歳でピアノを弾き、3歳で作曲をしたという逸話が残っている。
音楽家として、作曲、オルガン、ピアノなどでその才能を発揮したほか、詩、天文学、数学、絵画でも一流であり、多才な人物として知られているが、非常に嫌味な性格を持つことでも有名である。
ストラヴィンスキーが作曲を手掛けたバレエ『春の祭典』初演では演奏開始後に速攻で憤慨して退席、「楽器の使い方を知らない者の曲は聞きたくない」と言い残したという。
20世紀初頭、印象主義音楽が台頭する中、上記のように近代音楽を批判する立場を取り、従来の古典主義、ロマン主義を貫き続けたため、世間的な評価は不遇であった。
印象主義の先駆けとなった作曲家であるドビュッシーはそのような彼を批判したが、一方で「サン=サーンスほどの音楽通は世界広しと言えどもいない///」とも語っている。しかしながらサン=サーンスは、このツンデレドビュッシーが書いた作品をことごとく酷評している。
かと言って、彼が全くデレないわけでもなく、組曲『動物の謝肉祭』の「水族館」では、印象主義の技法を使っていたりする。
そんなサン=サーンスも時代の流れには逆らえず、ロマン主義音楽と現代音楽の転換期に前者の音楽を貫き続けた彼を、当時のフランスは受け入れなかった。歴史の犠牲になった作曲家の一人と言えよう。
しかし1881年にアカデミー会員に選出、2年後にオペラ「ヘンリー八世」が大成功すると、批判的な意見はなりをひそめた。その後は名誉博士号や勲章を次々と拝領、1913年にはレジオン・ドヌール勲章の最高位である「グラン・クロワ」を贈呈される栄誉に輝く。
1921年、アルジェリアを旅行中に死去。86歳の大往生で、生前の多大な功績により国葬が執り行われた。
古典的な合理主義を根底に持ちながら、ロマン派の情緒を漂わせる作風は、穏やかで知的な印象をもたらす。
以下の3つの作品が特に有名である。
1886年作曲、全14曲。
元来はプライべートな夜会での演奏目的で、室内楽編成用で作曲されたものである。
他の作曲家の曲のパロディが風刺的に用いられており、サン=サーンスは2度非公開で演奏したきり「白鳥」以外の曲の生前の演奏・出版を禁じた。
1 | 序奏と獅子王の行進曲 | ピアノの序奏に始まり、勇壮な旋律が弦楽器によって奏される。 |
2 | 雌鶏と雄鶏 | ピアノと弦楽器が鶏の鳴き声を模倣し合い、クラリネットが登場する。 |
3 | 騾馬 | ピアノが激しく上下する旋律を強奏する。 |
4 | 亀 | オッフェンバックの『天国と地獄』のギャロップの旋律を、弦楽器がわざとゆっくりと演奏する。 |
5 | 象 | コントラバスの独奏曲。軽やかなワルツである。 |
6 | カンガルー | ピアノによってカンガルーが飛び回る様子を描写する。 |
7 | 水族館 | ピアノのアルペジオが添えられた幻想的な旋律。稀少楽器のグラスハーモニカ(アルモニカ)が指定されているが、チェレスタやグロッケンシュピールで代用されることが多い。 |
8 | 耳の長い登場人物 | 第2曲とは異なる驢馬ののどかな鳴き声を、ヴァイオリンが模倣する。音楽評論家への皮肉を込めた曲だと言われる。 |
9 | 森の奥のカッコウ | ピアノの静かな弱奏に重ねて、クラリネットがカッコウの鳴き声を模倣する。 |
10 | 大きな鳥籠 | フルートが細かで軽やかなパッセージを飛ぶように奏でる。 |
11 | ピアニスト | ピアノの練習曲を、わざと下手に演奏する。組曲を連続して演奏する場合は、区切らないで次の曲にそのまま入る。 |
12 | 化石 | 自身の作品である『死の舞踏』や、民謡『きらきら星』など、様々な楽曲が組み合わされる。 |
13 | 白鳥 | チェロの独奏曲として有名。組曲の中で唯一、生前の公開演奏と楽譜の公開が許された。伝説的バレリーナ、アンナ・パヴロワの演目『瀕死の白鳥』で使用されている。 |
14 | 終曲 | 各曲の旋律が、再度『天国と地獄』のフィナーレの旋律にそって登場する。『ファンタジア2000』で、オーケストレーションを拡大して使用された。 |
1872年に歌曲として作曲され、1874年に管弦楽曲としてまとめられた。サン=サーンスは4つの交響詩を作曲したが、本作品が最も有名である。ここでの「死の舞踏」は、黒死病(ペスト)のことを指す。
詩人アンリ・カザリスの奇怪な詩を元に書かれた曲である。詩中の「踊る者どもの骨がかちゃかちゃと擦れ合う音」をシロフォン(高音の木琴)で表現したところ、当時、「作曲者の悪趣味の極み」と非難絶賛された。また、独奏ヴァイオリンは、E線を半音低くチューニングしたスコルダトゥーラ(変則調弦)であり、冒頭に登場する独奏の減5度の和音(AとEs)が開放弦となる。音の響きが均一にすることを意識したものと考えられよう。
1886年。サン=サーンスの円熟期に完成された、生涯最後の交響曲である。初演直後に亡くなった友人フランツ・リストに献呈した。
彼自身も管弦楽作品の最後の試みになることを意識していたらしく、技巧的なピアノの楽句や、教会のパイプオルガンの響き、端麗なオーケストレーションが盛り込まれており、まるで彼の生涯を自叙したような作品になっている。
パイプオルガンと2台のピアノが技巧的に用いられているのがこの交響曲での最も大きな特徴である。
2つの大きな楽章の中にそれぞれ2つの結合された楽章が存在するという、4楽章構造のような2楽章構造をなしており、伝統的な形式をから発展させた新たな形式を意識している。
第1楽章 | 第1部 | アダージョの導入部の後、アレグロモデラートとなり、メンデルスゾーン風の第1主題と変ニ長調の穏健な第2主題が続く。 |
第2部 | ポコアダージョの静かなコーラル。オルガンがピアニッシモで登場し、もの哀しい表情を見せる。 | |
第2楽章 | 第1部 | スケルツォ。再びアレグロモデラートの躍動的な弦楽器の旋律の後、ピアノ連弾の忙しないプレストが続き、金管楽器が厚く響く。 |
第2部 | オルガンが壮大に和音を強奏しハ長調に転調、循環主題がマエストーソで高らかに奏でられる。アレグロのフーガが始まり、エネルギーに富んだクライマックスを迎える。 |
まったくもって余談だが姓のサン=サーンスのサンはSaintがあらわすように聖を意味する。したがってサン=サーンスを日本語に無理矢理訳すとすれば聖サーンスのようになる。
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最終更新:2023/03/24(金) 00:00
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