春の祭典(露:Весна священная/仏:Le Sacre du printemps/英:The Rite of Spring)とは、イーゴリ・ストラヴィンスキーが作曲したバレエ音楽である。
ストラヴィンスキー三大バレエのひとつ。
ストラヴィンスキーの集大成とも言える、20世紀の近代音楽を語る上では欠かせない名曲でもある。
セルゲイ・ディアギレフが率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の為に制作され、キリスト教化される以前のロシアをモチーフとした独特の雰囲気が特徴。1913年に発表され、その後何度か改稿を繰り返している。
楽しげなタイトルとは裏腹に、不協和音が飛び交い、聞く人を震撼させる強烈なインパクトを与える。ある意味タイトル詐欺である
振付はロシアの天才ダンサー、ヴァーツラフ・ニジンスキーが担当した。「火の鳥」「ペトルーシュカ」と異なり、ストラヴィンスキーは組曲に編曲していないため、バレエが無い一般的な演奏会でも、オリジナルの構成のまま演奏されている。
1913年、パリ・シャンゼリゼ劇場にて初演となったが、大騒動が起こったことでも有名である。
サン=サーンス、ドビュッシー、ラヴェルといった大作曲家も観客に加わったこの演奏会は、序奏の時点から不協和音の連続に早くもブーイングが起こった。サン=サーンスは演奏開始からわずか3分ほどで帰ってしまったと言う。
凶暴なメロディーやリズムに加え、ニジンスキーの考案した奇抜かつ前衛的な踊りや異教徒を演じるダンサーの衣装など、何もかもが予想の斜め上をいく展開に観客の多くがついていけず、批判派と肯定派が喧嘩になって怪我人が出る始末だった。ヤジや罵声が飛び交う中、演奏側やダンサーも並大抵ならぬ災難に巻き込まれた形となったが、それでもなんとか最後まで演奏を続けることが出来た。
ただし、この前に行われたゲネプロは何事も無く上演されたため、アンチが意図的に妨害して炎上させたという説もある。
当時の新聞に「春の災典」(Le Massacre du Printemps)とまで書かれた初演だったが、逆に言えば観客がショックを受けるほどに、それまでのバレエはおろか、音楽の概念をぶち壊した革新的なものでもあった。まさに音楽の歴史を塗り替えた1ページでもあったのである。事実翌年の公演では大成功をおさめ、高く評価されている。
2006年には、BBCがこの初演の様子を描いたドラマ「Riot at the Rite」を制作している。
一方、ストラヴィンスキーにとっては一つの頂点に達したとも言え、これ以降の作品は新古典主義へと変化していく。
バレエは二部構成となっている。
古きロシアに春が訪れ、2つの村同士が対立。踊りを奉納する乙女らを誘拐し、或いは遊戯に戯れる中で長老が登場。豊穣への感謝として大地への口づけを行う。
乙女達は神秘的な踊りを踊るが、そこで太陽神イアリロへの生贄として一人の乙女が選ばれた。生贄の娘は激しく踊り狂い、ついに力尽きて死ぬ。
1920年の再演ではニジンスキーが解雇された後を継いだレオニード・マシーンが振付を担当し、大喝采を浴びた。ちなみにこの再演にはココ・シャネルが多額の援助をしており、彼女なくしては上演はおそらく不可能だったと思われる。
以降も『春の祭典』に挑む振付師が続く。最も知られるのはモーリス・ベジャールが1959年に発表したもので、鹿の交尾にヒントを得たという振付は傑作として評価されている。
また失われたニジンスキー版も現存する資料を基に8年がかりで復刻、1987年に上演された。その後パリ・オペラ座の定番演目となっており、非常に人気が高い。
ハリウッドの名作であるパニック映画「ジョーズ」のメインテーマは、春のきざしの序盤の旋律とリズムをモデルにしたと言われている。
上述の初演の様子を映画化したもの以外にも、ディズニー映画「ファンタジア」でも「春の祭典」が制作されている。
地球の誕生から恐竜の絶滅までを描いたこの作品は、元のストーリーと全く異なるものであり、アメリカに移住していたストラヴィンスキー本人はコレジャナイと批判したと言う。続編「ファンタジア2000」も含め、存命中の作曲者の作品が使われたのは本作だけである。
いけにえの賛美が流れるティラノサウルスとステゴサウルスの戦いに固唾を呑み、祖先の儀式で灼熱地獄の中、恐竜たちがバタバタと倒れる姿を見てどうあがいても絶望と思った人は数知れないだろう。故に、曲調から「禿山の一夜」よりこちらの方が怖かったという人も少なくないはずである(「禿山の一夜」は映像こそおどろおどろしいが、曲自体はずっと聴きやすい)。
また映像もかなりリアルに描かれており、休憩を挟んで曲も絵柄も古典的なベートーヴェンの交響曲「田園」とのギャップが凄まじい。
日本では、NHK教育で放送されていた「音楽ファンタジーゆめ」でもこの曲が登場した。
しかし曲が曲だけに、当然のように子供たちにトラウマを植え付けた。後半のアニメーションも、電子のような物体が、次々に様々なものに電撃を浴びせて電化製品に変えてしまうというものである。映像が田中秀幸ではなかったのがせめてもの救いか。
左:馬 右:脱ぐ
左:ファンタジア 右:音楽ファンタジーあくむ 音楽ファンタジーゆめ
掲示板
3ななしのよっしん
2017/04/23(日) 15:57:04 ID: 767UbPkpZF
この曲の楽譜も、まさに暗号文みたいなもので
名手カラヤンもどう指揮していいのかわからなかったそうだ。
ストラヴィンスキーもこの曲を書いてからぱったり現代音楽から
足を洗うが、やりたいことを残さずやりきったという印象。
まあ、これ以上の曲を書けというのはさすがに無理。
4ななしのよっしん
2020/04/17(金) 00:29:25 ID: CIdh9PXoiB
いけにえの賛美
タイトル:“Glorification de l’élue” de “Le Sacre du Printemps”
5ななしのよっしん
2022/07/07(木) 17:31:25 ID: omvMbg2tcs
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最終更新:2023/03/21(火) 21:00
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