恥知らずのパープルヘイズとは、上遠野浩平によって著された小説作品である。
概要
「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物であるパンナコッタ・フーゴを主人公に据えた、スピンオフ作品。
第5部『黄金の風』完結から半年後の後日談が描かれている。
正式なタイトルは『恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より-』。
2011年9月16日に集英社より発売。
荒木飛呂彦の執筆30周年、及び「ジョジョの奇妙な冒険」連載25周年の記念企画「ARAKI 30th & JOJO 25th / 2011-2012 JUMP j BOOKS Presents Special Project“VS JOJO”」の第1弾として発表された小説作品で、著者は「ブギーポップは笑わない」などの作品で名高い上遠野浩平。イラストは荒木飛呂彦が手掛ける。
同年12月には西尾維新によって第2弾『JOJO'S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN』が完成。
翌年の2012年9月19日には第3弾『JORGE JOESTAR』が発売。
主に本編中でブチャラティ達と袂を別ったフーゴ、及びジョルノ達のその後が補完されている。
また、第5部は他のパートとの繋がりが薄いとされているためか本作では他のパートとの接点が作品中のいたる所に見られるのも特徴の1つである。あと、「根掘り葉掘り」の言葉の矛盾も書の中で解決されている。
もちろん、上記の通り「連載25周年記念」の作品であり「ジョジョの奇妙な冒険」本編の公式な続編ストーリーではないため、本作で独自に登場する設定などは本編とは一切関係無い事も付け加えておく。もっとも、公式へフィードバックしても違和感が無いくらいに上手く補完されていたり組み合わさっている内容も少なくないが。
2014年3月には文庫版が発売。こちらの新書版には、トリッシュがかつての仲間・ブチャラティの墓を訪れる書下ろしストーリーが新規に収録されている。
ストーリー
ジョルノがディアボロを倒して組織「パッショーネ」を新たに掌握してから半年が経過した頃、フーゴは過去にチーム仲間だった現組織のNo.2であるミスタよりスタジオ・ジュゼッペ・メアッツァまで呼び出される。
ブチャラティ達を裏切ったフーゴに対して改めて組織への忠誠を示させるべく、ミスタはジョルノ達が進めている裏社会の清浄化の一環として、ディアボロの遺した旧組織の象徴にして負の遺産たる麻薬チームの討伐を命じる。ミスタが連れて来たスタンド使い「シーラE」と同行を命じられながら、フーゴは「任務を達成できなければ、あらためてオレがお前を殺す」とかつてのチーム仲間に冷酷に告げられるのだった。
自らが人生を懸けた人物であるブチャラティの死の事実を聞かされ、かつて自分が選んだ「ブチャラティの元を離別する」という選択肢は間違っていたのだろうかと苦悶する中、フーゴは自らと同様の事情を抱えたチーム仲間と共に新たな任務へと赴く。
登場人物
パッショーネ構成員
- パンナコッタ・フーゴ
- 本作の主人公。かつてブチャラティチームの一員としてジョルノ達と行動を共にしていたが、ブチャラティがジョルノと共に組織を裏切った際にただ一人付いて行けず、ブチャラティ達と離反する。「組織の恩恵なくして自分達は生きられない」という冷静な判断によってフーゴは単身生き延びるが、やがてジョルノがディアボロを倒して組織の頂点に立った後はバーでピアノを弾きながらも「ジョルノ様を裏切った恥知らず」「組織の信頼を失った者」として周囲からは蔑まれながら生きていた。その折、かつてのチーム仲間であった組織のNo.2であるミスタに呼び出され、組織への忠誠を確かめるためにディアボロの負の遺産である麻薬チームの壊滅を命じられる。
今作では、本編で語られなかったフーゴ自身の生い立ちの詳細も描かれている。
スタンドは殺人ウイルスを周囲へ撒き散らしあらゆる生物を喰らい尽くす「パープル・ヘイズ」、及びその進化形態「パープル・ヘイズ・ディストーション」。
- ジョルノ・ジョバァーナ
- 第5部「黄金の風」の主人公。新・パッショーネのボス。ディアボロを倒し新たに組織を掌握してからは「正体を隠す必要が無くなった」と、自らが以前からボスであったように振る舞っており組織を新たにまとめ上げ、さらにスピードワゴン財団とも手を結ぶ事で組織を今まで以上に拡大していく一方、ブチャラティの遺志を継いでミスタやポルナレフ達と共に裏社会の清浄化を推進している。
スタンドは「ゴールド・エクスペリエンス / ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」。
- グイード・ミスタ
- パッショーネのNo.2。ジョルノと共にディアボロとの決戦に唯一生き残って、組織の副長へと上りつめた。
ミスタ自身のジンクスから「2は掛け合わせると4になるから」とNo.2の称号を拒否したミスタはNo.3を自称している(No.2はポルナレフに譲ったとされている)。
プロローグにてフーゴをジュゼッペ・メアッツァまで単身呼び出し、麻薬チームの壊滅を命じる。
スタンドは「セックス・ピストルズ」。彼らも以前までよりも豪勢な食事にありつけているんだろうなぁきっと。
- サーレー
- パッショーネの構成員。後述のズッケェロ共々、かつてジョルノ達とポルポの遺産を横取りしようとして争った経歴があるため、そのマイナス分を清算するべくフーゴ達とは別に麻薬チームの壊滅を命じられた。
あらゆる物を空間へ固定するスタンド「クラフト・ワーク」で麻薬チームの1人・ビットリオへ戦いを挑むが・・・
- マリオ・ズッケェロ
- パッショーネの構成員。前述のサーレーと共に、麻薬チームの壊滅を命じられた。
しかしマッシモの「マニック・デプレッション」の前に成す術無く敗れ・・・
-
- (以下、小説版オリジナルの登場人物)
- シーラE
- パッショーネのボス親衛隊。本作におけるフーゴのチーム仲間。15歳。
本名は「シィラ・カペッツート」といい、名前のEは復讐(erinni)から来ている。かつてフーゴが倒した暗殺チームのメンバー「イルーゾォ」へ復讐し姉の仇を取るために組織へ入団したのだが、その目的のために暗殺チームとボス親衛隊の連絡役を務めていた事が明るみとなってしまった事で、忠誠を示すために麻薬チームの討伐を命じられた。もっとも、イルーゾォはブチャラティ達に倒されており目的を果たす事はできなくなったものの、イルーゾォの死に様をジョルノの口から聞かされた事から、ジョルノに対しては深い恩義を感じている(シーラEはジョルノがイルーゾォを倒したと思っている為、真に彼を倒したのがフーゴである事を彼女は知らない)。
スタンドは殴った場所に唇を作り出し、その場所で囁かれていた陰口を発する「ヴードゥー・チャイルド」。
- カンノーロ・ムーロロ
- パッショーネの構成員。一昔前のギャング映画のイメージそのままの伊達男な容姿が特徴。32歳。
かつて組織を裏切った暗殺チームのギアッチョに焼けた写真の復元を依頼され、それがギアッチョとジョルノ達が戦うきっかけとなった事から、彼も同様に身の潔白を示すべくフーゴやシーラE達と行動を共にする。第5部本編でリゾット達とディアボロが敵対するよう仕向ける呼び水として、「ソルベとジェラートがディアボロの身辺を嗅ぎ回っている」と密告したのも彼の仕業で、また暗殺チームにもディアボロに関する情報を与えていた。ジョルノにその事と彼の持つ薄っぺらな心理を見抜かれて以降は、ジョルノに心からの忠誠を誓っている。
フーゴ達と共に行動する一方で、麻薬チーム壊滅とはまた別にジョルノに密命を受けて行動しているらしい。
スタンドは全53体のトランプの兵隊で構成される群生型スタンド「オール・アロング・ウォッチタワー」。目的場所などを占い導き出す能力もあるらしいが・・・。
麻薬チーム
ディアボロが組織を支配していた頃に、麻薬が社会へ急速に蔓延していった元凶でもあり、ディアボロと組織の主たる収入源ともなっていた存在。ディアボロがジョルノ達に倒されてからは「ディアボロ率いる旧パッショーネの負の遺産」として、裏社会の清浄化を図るジョルノ達率いる新組織から追われる身となっている。本作の敵役。
もっとも彼らが存在していると、暗殺チームがディアボロに勝利していたとしても結局麻薬ルートを乗っ取る事は出来なかった事になってしまうが、それはそれで。
- ヴラディミール・コカキ
- 麻薬チームのリーダー。物静かな態度・言動が特徴の老人。70歳。
パッショーネに入団する以前からギャングの世界で生きており、ディアボロが力による屈服ではなく交渉によって仲間に加入させたとされるほどの実力者で、チーム内でも彼への信頼は厚かった。ジョルノが組織の新たなボスとなって以降はチームを守るために姿を消すが、ジョルノが刺客を差し向けて以降は戦う事を選ぶ。
戦闘ではマッシモに「あんたのスタンド能力に勝てるヤツはいない」と評される程のスタンド能力と持ち前の話術によってフーゴとシーラEを軽くあしらい、「争いを生み出す元凶」としてムーロロを始末しようとするが・・・
スタンドは相手が感じた感覚を本人の身体に定着させる霧雨のスタンド「レイニーデイ・ドリームアウェイ」。
- マッシモ・ヴォルペ
- 麻薬チームの中核。麻薬を製造する能力を持つ、長身が特徴の青年。25歳。
ジョルノが抹殺対象の筆頭に挙げている人物で「マッシモさえ始末すれば、他のメンバーは最悪全員逃がしても構わない」とまで評している。
過去にはフーゴが通っていた大学の同期でもあり、大学時代はフーゴを軽蔑していた一方、彼の大学での生き様に共感を覚える部分もあったという。また、元はイタリアの貴族の家の生まれであり、かつては料理人を目指して貴族の名を捨てたアントニーオ・ヴォルペという兄がいたという。
スタンドは生命力を過剰に促進してドーピングのように超人的な能力を覚醒させる「マニック・デプレッション」。人間以外にも、塩に脳内麻薬を過剰分泌する能力を与える事で麻薬を無尽蔵に製造していた。しかし身体に過剰な負荷がかかるため長時間能力の恩恵を受けられない弱点があり、それを克服するためにかつてナチスドイツが行っていたとされる不死の研究を頼りに、「ジョジョ」の象徴たるあの研究対象を手に入れようとしている。
使用者の肉体を蝕んでいく点については、前述の彼が持っていたスタンド能力とは対極に位置する力ともいえる。
- ビットリオ・カタルディ
- 麻薬チームのメンバー。16歳。
後述するスタンド能力のため、或いは自傷癖による自傷行為のため全身に無数の傷痕がある。
組織の差し向ける刺客から逃げ延びながらシチリアへと向かい、マッシモの命によってジョルノ達へ対抗できる力を手に入れるためにシラクサのドゥオーモに隠されている例のアイテムの回収へ向かう。
スタンドは自身の受けたダメージの7割を刀剣に映っている対象へ移す「ドリー・ダガー」。
- アンジェリカ・アッタナシオ
- 麻薬チームのメンバー。16歳。
「血液がささくれ立つ」という先天性の病気を抱えているため、血管の中に無数の針が流れているかの如き激痛に苛まれている。その痛みから逃れるべく、麻薬中毒者となった。この病気ゆえ本人には戦闘能力もなく、常にマッシモの側を離れる事ができないのだが、後述のスタンド能力でチームの支援を行っている。
スタンドは他人の魂を無意識に自動追尾して、相手を心身共に末期の麻薬中毒患者と同様の状態へ堕落させたり、その相手を幻覚を見せる事で思い通りに操る「ナイトバード・フライング」。
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