JORGE JOESTARとは漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の小説化作品の一つ。筆者は舞城王太郎。
概要
『ジョジョの奇妙な冒険』25周年を記念して発表された小説プロジェクト『VS JOJO』の第3弾の作品である。
2012年9月19日に発売。
ジョナサン・ジョースターの実子でリサリサ(エリザベス・ジョースター)の夫にして、ジョセフ・ジョースターの実父でもある『ジョージ・ジョースターII世』を主人公にした小説作品。20年以上謎のベールに包まれていた空軍パイロットたる、彼の物語を舞城王太郎が執筆してくれる。
また、公式ホームページでは舞城自身の手によるイラストを見ることができる。ただしわー凄いやってぐらいネタバレが多いので『覚悟』が必要だ。
ストーリー - 20世紀初頭、欧州
俺の名前はジョージ・ジョースター。貴族だった祖父の名前からとったみたいなのだが、表記は JORGE ってラテン風にしてある。
スペイン、ラ・パルマ島に住むジョージ・ジョースターは今日もアントニオたちいじめっ子連中に泣かされ、同じ屋根の下で暮らしいつも彼をいじめっ子から守るエリザベス・ストレイツォ(リサリサ)にも「見てらんない!」と怒られている。
涙目で帰宅したジョージに母エリナ・ジョースターから告げられたのは、12歳になるリサリサが養父のもとへ去ってしまうということであった。ちょっと待て、それじゃあ明日からいじめられたら俺はどうすりゃいいんだと焦るジョージ。しかし、本当はこの家を離れたくはないと珍しく弱さをリサリサを見て、勇気をだそうと決意する……。
翌日、前日の決意も薄れがちなジョージは驚愕の事態を知らされる。「アントニオはな!ぺらぺらのピッタンコに潰されて死んでたんだ!」いじめっ子の死はやがて幼馴染リサリサの秘密と、母エリナの時代から続くジョースターの血統とディオという男との因縁、邪悪なる存在『吸血鬼』との戦いにまで発展。ジョージもまた否応なく巻き込まれてゆく。
「君は、多分『ジョージ・ジョースター』ってタイトルの物語の、ジョージ・ジョースターってキャラを生きるだけだよ」
登場人物
- ジョージ・ジョースター
- 本作の主人公。
ジョナサン・ジョースターとエリナ・ペンドルトン(ジョースター)の息子。表記は略してJOJOになるように『JORGE JOESTAR』となっている。
気が弱く内向的な性格。少年のころは同じ学校のいじめっ子からいつもいじめを受け、幼馴染のリサリサに助けられていた。後にツクモジューク・カトーと知り合い、無二の親友になる。成長してからも相変わらず臆病だが、飛行機や自動車に対して情熱を抱くようになり、更にその方面で才能を発揮したことが空軍パイロットになるきっかけとなった。波紋を使えない「普通の男」。しかしとある人物からは「勇気がある」とも言われている。また意外に女性にはモテるようだが、本人はそういう方面をあまり気にはしていない。
後にリサリサと結婚し、一児ジョセフを授かる。
原典であるジョジョの奇妙な冒険では「ジョージII世」とも表記され、空軍時代の司令官がゾンビであることに気づいてしまい、その確証を得ようとする過程で殺害されたと書かれている。
- エリザベス・ストレイツォ
- 通称リサリサ。
かつてエリナによって、ディオの襲撃にあった船から助けられた過去を持つ少女。その後はエリナの家でジョージと共に暮らしていたものの、12歳のとき義理の父ストレイツォの元に戻される。赤ん坊の頃からジョナサンやストレイツォの影響で仙道の秘術「波紋」を扱えたため、吸血鬼と戦う『波紋の戦士』として育てられた。
非常に気が強く、いつもいじめられているジョージを助けているのだが、当のジョージからは「乱暴な女の子」と思われている。本人はジョージのためなら無茶も辞さない。後に彼と結婚するものの……。
原典では息子のジョセフが主人公として活躍する第二部「戦闘潮流」に登場、ジョセフの導き手となる。
- ツクモジューク・カトー
- 東洋人の少年。ツクモジュークは漢字で『九十九十九』と書く。ハンサムで、頭が良くて、エキセントリックな自称『名探偵』。ジョージ・ジョースターとはふとしたことからよき友人となり、数年間コンビを組んで多くの難事件の解決に当たった。後に謎めいた言葉を残してジョージの前から姿を消す。
世界という物語には神のような力を持つ作者=『ビヨンド』がいて、名探偵とはその『ビヨンド』に選ばれた存在である、という独特の世界観を持つ。
元々は「大説」家である清涼院流水が書いた「JDCシリーズ」の登場人物であり、彼を主人公としたスピンオフ「九十九十九」を舞城王太郎が執筆した。JDCシリーズの九十九十九は世界最高峰の名探偵で、謎をとくためのデータが揃えば真相が必ずわかるという型破りな能力を持つ。またあまりにも凄まじい美貌のため、彼の素顔を見たものは必ず気絶してしまうので、常にサングラスを着用している。
- エリナ・ジョースター
- 旧姓ペンドルトン。ジョージの母。優しさと強さを併せ持つ女性。夫ジョナサンが宿敵ディオに殺害される瞬間にも立ち会ったが、その後だれにも言わない秘密を抱えることとなる。
- アントニオ・トーレス
- ジョージと同学年の少年で、彼をいじめる筆頭。しかし何者かによって皮膚一枚のようにペラペラに潰されて殺害される。
- ペネロペ・デ・ラ・ロサ
- ツクモジュークとジョージによって解決した、夢のなかで密室殺人を教唆する『密室先生』事件の被害者。道化恐怖症であり、密室先生がピエロの姿で夢のなかに現れたことが今でもトラウマとなっている。
成長したジョージと再会し、ふたたび彼女の周りで不可思議な事件が起こるようになる。なりゆきからジョースター家の一員となるが、どうやらジョージに気があるようだ。
- モーターライズ兄妹
- ジョースター家の故郷ウェイストウッドの住人。
兄スティーブンと長女ケントンは飛行機作りが趣味で、彼らのテスト飛行を目撃したジョージと友人になり、彼の人生を大きく変えることとなる。また兄スティーブンには秘密がある。
次女のダーリントンはジョージと同じクラスの学生。ジョージとは住む世界が違うような「お姫様」である。しかし妙にジョージを構いたがるのは彼のことが……
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ここから先はスッゲエ!大丈夫かな!ってぐらいネタバレを多く含んでいるので注意するに越したことはないはずだよなあと一応警告しておく。 |
ストーリー - 2012年、杜王町
僕の名前はジョージ・ジョースター。日本の福井県在住、十五歳のイギリス人だ……が、見た目も血筋もおそらく日本人そのものだ。
ジョースター家の養子ジョージは『名探偵』だ。ここ最近は一年前に解決した十五の密室殺人のことで頭がいっぱいだった。明らかにこれらは同一人物の意図によって、関連した事件として起こっていたことに気づいたのである。その誰かに導かれるように、一連の事件が暗に指し示していた場所を訪れたジョージの目の前に、異常な状況であらわれた少年は自ら「加藤九十九十九」と名乗った。
九十九十九の話はジョージにとって驚愕だった。なんと彼はジョージの住む大陸がひとつの世界とは別の、ばらばらになった大陸が存在する世界からきたというのだ!しかも九十九十九は100年前からきた人間だという!しかもしかも九十九十九の世界にもジョージ・ジョーターはいて、九十九十九とあっちのジョージは、こちらのジョージがこれまで解決してき事件と非常に良く似た事件を解決してきていたのだという!
やがてジョージが知るのは、【ジョージ・ジョースターは杜王町に近づくな。近づけば殺す】という『吉良吉影』からの伝言。九十九十九のいう『ビヨンド』に操られるように、ジョージはS市の『杜王町』へと向かう。そこで名探偵の解決を待っていたのは、漫画家岸辺露伴の邸宅『矢十字屋敷<アロークロスハウス>』を舞台とした加藤九十九十九殺しであった!
ジョージのこれまでの常識を打ち破る『スタンド』使いたちが跋扈する杜王町で、果たして名探偵は名探偵でいられるのか!? さらに(物理的に)動き出す杜王町と、さらに動き出すイタリアはマフィア『パッショーネ・ファミリー』の縄張りネーロネーロ島、地図にない国イギリスの所在、それからアメリカの有人宇宙飛行船と火星第三の月と究極生命体、そんでもって三十七巡した宇宙に十四の言葉に天国に行く方法になんか色々、まとめて解決してやれジョージ!!!
「僕がヘブンズ・ドアーで読んだ君の《本》には、君の西暁町に生まれて名探偵として大活躍して……っていうのは全部『偽書』ってタイトルで章分けされているんだよ」
登場人物
- ジョージ・ジョースター
- 本作の主人公。
幼いころ名前もないまま里子にだされ、ジョースター家に引き取られた。十五歳。みなにはジョジョと呼ばれる。福井県西暁町在住で、福井弁を喋る。名前はイギリス風だが外見は日本人。名前の表記はJOJI JOESTARであるが、将来はJORGEにしようと考えている。
細かいことがちゃんとしていないと気になる性格の『名探偵』。この若さでいくつもの事件を解決してきた。異様なまでに好奇心旺盛で、吉良吉影から杜王町に近づけば殺すという警告を受けたときも、一切の迷いなく杜王町へゆく気になっていた。また名探偵という職業柄イタリア語が喋れたり(これは同業の名探偵も可能)、はじめて知るスタンドという概念にもすぐ適応できたりする。
- 岸辺露伴
- 漫画家。『ピンク・ダークの少年』第八部を連載中。
半年前に購入したアロークロスハウスがさっそく殺人事件の舞台となり、それを解決しにきたジョージと知り合う。その漫画を描く執念によって、百戦錬磨のパッショーネのマフィアたちが素でひくほどの言動も見せる。しかし同じアロークロスハウスに住む少女・杉本玲美には優しい。
スタンド能力は人を本にしてその過去を見たり、命令を書き込んで遵守させることができる『ヘブンズ・ドアー』。
- 吉良吉影
- 謎に満ちた連続殺人鬼。
ジョージを(警告に見せかけて)誘き寄せるような「伝言」にその名前を残す。どうやら一度、杜王町のスタンド使い立ちに追い詰められたが姿を変えて逃亡したらしい。ジョージは彼こそが杜王町全体を揺るがす未曾有の事態を引き起こしていると推理する。
スタンド能力はどうやら吉良吉影の名前を口にした人間を殺害する、というものらしい。
- ディアボロ
- その姿を誰も知らない、ネーロネーロ島のマフィア・パッショーネのボス
パッショーネの裏切もの汐華初流乃とその部下によって追われている。また吉良吉影と対になるように、ネーロネーロ島全体を揺るがす未曾有の事態の要因だとジョージに推理される。
- ナランチャ・ギルガ
- ネーロネーロ島のマフィア・パッショーネの一員で、ボスのディアボロを裏切って汐華の下についている。ジョージとはさほど変わらない年齢。
ディアボロ探索に杜王町の名探偵たちが狩りだされたとき、ジョージにサポートとしてつけられた。いかにも少年っぽい顔立ちだがキレやすい。しかし仲間のために命をかける「訓練された兵隊」。ド低脳だが自称「俺は阿呆じゃねえ」とのことである。
スタンド能力は自分やそれに触れた他人の体内に無数の潜水艦を潜らせ、さらにそこからミサイルを放って攻撃することのできる『Uボート』。
- エンリコ・プッチ
- 神学校出、刑務所の教誨師から転進したという異色の経歴をもつ宇宙飛行士。
一見その出自を示すような紳士的な立ち振る舞いだが、自らの善意を信じて悪をなす「邪悪」だとジョージには評される。過去のとある事件を境に、『天国に行く方法』とそれを指し示す『十四の言葉』に取り付かれている。
スタンド能力は他人の頭から記憶及びスタンドをディスク状にして取り出し(取り出された人間は時間経過とともにどろどろになって溶けてしまう)、挿入した記憶ディスクの内容を見たりスタンドディスクの力を利用したり、さらに内容に書き加えて他人の心を組み替えたりすることもできる『ホワイト・スネイク』。
- カーズ
- 『柱の男』といわれる超生物の生き残り。かつて『エイジャの赤石』の力を得た『石仮面』によって『究極生命体<<アルティメット・シング>>」』となったが、ジョージの義理の曽祖父であるジョセフ・ジョースターの手で地球の火山を利用し宇宙へ放逐されていた。
宇宙でもカーズは「考えることを止めず」に、終わりと始まりを何巡もする宇宙のなかで何人ものカーズたちが火星の裏に蓄積され、どうにかして地球に帰還する方法を探っていた。宇宙飛行船『HGウェルズ』はその好機であり、搭乗していたジョージとも対面することとなる。
究極生命体なのでスタンドも見ることができるし、模倣することもできる。また知性のほうもおおよそ人間では到達し得ない領域にあり、カーズにすればジョージが解いてきた難事件も「くだらないパズル」である。
基本的には人間など食料に過ぎず(ただしカーズに食事は必要ない)、仕方ないが極めて傲慢な性格。しかし究極生命体になる前から人間の作る「物語」に柱の男にはない可能性を感じ、さらにとある場面では全生物の頂点としての矜持を見せる。ジョースターの名を持つジョージの、一種奇妙な「仲間」のような立ち位置。ジョージからは時々「カーズ先輩」とか「カーズっち」とか呼ばれる。
これは無数の世界にわたるディオとジョースター家の因縁の物語である。
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