角栄に花束を(かくえいにはなたばを)とは、大和田秀樹による政治家・田中角栄を題材とした青年漫画である。月2回刊行漫画雑誌『ヤングチャンピオン』(秋田書店)において連載中。 2024年4月現在既刊11巻。
概要
新潟生まれの政治家であり国務大臣・総理大臣を歴任した「田中角栄」を15歳で新潟から上京した場面から描いている。
なお2017年まで週刊漫画雑誌「週刊モーニング」において連載されていた後に首相になり『所得倍増計画』を立ち上げた政治家「池田勇人」が主人公の『疾風の勇人』(全7巻、池田が首相になる前、吉田首相が下野した段階で打ち切り終了。)と田中角栄のキャラクターデザインが変わらないこと、田中角栄も池田勇人と同じく吉田学校の門下であることから実質的な続編もしくは、話の展開が合流することが考えられていた。(6巻でも疾風の勇人で描かれたドッジが池田とともに登場している。)
『疾風の勇人』を連載する前に『田中角栄』も構想に入っていたことを疾風の勇人の連載の際のインタビューで明かしている。
参考文献が30冊以上のリストや協力クレジットも単行本1巻に収録されており、綿密な取材を行っているがあくまでも、史実をもとにしたフィクションあり、ギャグ描写や冒頭が親友が令和改元まで生存したことになっている、山崎幹事長首班工作事件での田中の役割など史実を膨らませた描写もあることに留意すべきである。
単行本1巻の発売の際には新潟日報の1面に広告が打たれた。(なお、新潟日報が協力として1巻の巻末の参考文献リストにクレジットされている。)
単行本の内容は1巻は出身地の新潟県から上京し理化学研究所の総帥の大河内子爵との知己を得て建設事務所を立ち上げるまでの黎明期、2巻の展開は出征後の軍内での田中角栄についてを描いているようである。3巻は戦中の病気による内地への機関・復員と戦後衆議院議員になるまで、4巻は当選後の昭電疑獄までを描いており、この段階で田中角栄と池田勇人と出会いも描かれた。5巻はGHQの民政局の陰謀渦巻く、山崎幹事長首相首班工作事件を取り上げている。
6巻では炭管疑獄において逮捕・収監された、獄中選挙戦を含めどん底を味わいながら活躍する様子を描いている。
登場人物
- 田中角栄(たなか かくえい)
- 新潟県刈羽郡二田村(現在の柏崎市)出身の政治家。小学校卒業後15歳で上京し、地元のツテを頼り大河内子爵の書生となる予定だったが話が先方へ届いておらず頓挫する。その後角栄の遠縁が務めている建設会社に務める。中央工学校に通う学費を工面するために最初の建設会社を始め様々な職を転々とするが、やがて工学校を卒業したのちに建設事務所「共栄建築事務所」を設立し社長となる。
- 営業の名の下に理研の関連会社に務めている遠縁のツテを頼り理研を訪れるがそこで大河内子爵との知己を得る。大河内子爵が興味を持ち工場設備の勉強を進められ角栄は理研の勉強会に参加したり独学で工場設備について勉強したのち正式に理研から仕事を発注され事業が軌道に乗る。
- その後は土建の専門外の仕事(専門機械や企業買収)を求められたりしているが、とまどいつつも必死に食らいつき実現していたが、徴兵検査に甲種合格していたため徴兵され陸軍に入隊。二等兵として満州にある連隊に所属する。
- その当時の日本軍に蔓延していた私的制裁(いじめ)に漏れなく田中も遭い苦しむが、社長業の経験から整理整頓が得意であり、任されたことをきっかけに酒保の責任者となり認められるようになった。やがて日本の補給からは全く足りなかったため現地住民と交渉して必要物資を確保するまでになった。その連隊は最前線でノモンハン事件が起こった際には死者が続出したが、田中は後方にいたため直接的な被害は受けなかったが戦死公報の業務にはあたっている。
そのような陸軍での生活を送っていたが、重篤な肺病にかかり現地の野戦病院・陸軍病院では手に負えず日本に帰国して治療にあたったが、危篤に陥り死ぬ寸前までの状態に陥っていたが、急死の一生で回復し、陸軍を除隊して復員する。
- 入隊前に会社は整理していたが、理研と大河内子爵に挨拶をし仕事を得るとともに、友人から貸事務所となっていた坂本工務店を紹介され仕事場を確保し事業家として復活した。その坂本工務店に戻っていた娘はなと結婚し、坂本工務店の名跡を継ぎ株式会社に改組・改称した。家庭にも恵まれ一男一女を設けている。
- 戦後は地元長岡で衆議院議員総選挙に立候補するが、敗北してしまう。敗北後も腐らず各地を周り、田中工務店の長岡支店を設立するなど地道に地盤づくりを重ね日本国憲法施行の解散総選挙の際に当選し衆議院議員となる。その後は重鎮の元外務大臣・首相の幣原喜重郎に付き、吉田茂とも出会い吉田学校に入校する。
- 吉田内閣が下野し、芦田内閣となった際には炭鉱国営化法案を廃案に追い込むほか、民主自由党が政権に返り咲いた際の山崎幹事長首班工作事件での阻止でGHQ民政局の恨みを買ってしまい、吉田内閣が返り咲いた後に起こった炭管疑獄では検察により逮捕されてしまう。
- その後議員立法に作りに汗をかき、建築士法を立案し様々な人々に協力を国会でも可決し成立する。
- 入内島金一(いりうちじま)
- 本作の語り部であり角栄の右腕。令和改元のニュースを聞きながら103歳の大往生を遂げる。角栄が路面電車に跳ねられたところを目撃してからの知己となる。角栄の遠縁が務めている建設会社の社員であり角栄が入社したことからともに付き合うようになる。(なお史実と没年は相違がある)
角栄が入隊した後に入内島も陸軍に徴兵され入隊しており大陸に渡っていた。
- 大河内子爵
- 大河内正敏子爵。父親は大多喜藩(千葉県南部の藩)の藩主であり維新がなかったならば殿様であった人である。理化学研究所の三代目の所長であり研究されていたビタミンを事業化し大成功。数々の工場を建設し理研自体がの財閥化するほど発展に貢献した人物。角栄に興味を持ち、無茶振りな発注をしつつ人材や資材などはしっかりと提供し成功したらさらに角栄の本業の土建業以外の事業の難題を発注したり要求を突きつける。
- 地方に積極的に工場を建設しようと奮闘しているが、その真意は列強に追いつくために工業力・生産力を高めようとしていたのだった。
- 角栄が陸軍に入隊していた頃には東條内閣の内閣顧問に就任しており、理研を内陸部へ避難させることが課題となっていた。連合艦隊司令長官の山本五十六とも知己があり、彼に新潟出身の田中という人物がいるということを紹介している。
- 戦後は東條内閣の内閣顧問に就任していたことからGHQに目をつけられA級戦犯容疑者として巣鴨プリズンに収監されてしまう。
- ノブオくん
- 角栄のいとこで一歳下。角栄の事務所に社員として入社している。ガキ大将だった角栄の下っ端みたいな扱いであった。
- 角栄の姉
- 角栄の召集令状を持って新潟から上京する。また上京は角栄の身の周りの整理のためでもあった。地元では幼い弟・妹の面倒を見ている。
- 角栄の母
- 角栄に「お前は働いてから休みなさい」という格言を与えて東京に送り出した。角栄が地元に仕事で帰省した際には誤解から激怒したが、仕事と聞いて誤解は解けた。角栄の好物を餌に実家の帰省を促していた。
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