SCP-1000-JPとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
項目名は『特別回収任務』。
| SCP-1000-JP | |
| 基本情報 | |
|---|---|
| OC | [Deleted] |
| 著者 | ZeroWinchester |
| 作成日 | 2016年7月9日 |
| タグ | 地球外 未収容 記憶媒体 |
| リンク | SCP-1000-JP
|
| SCPテンプレート | |
SCP-1000-JPは、とある小惑星探査機の付属物である。SCP-1000-JPの付属している探査機062-Aは、現時点で一切の遠隔操作を行えず、信号を受信すると、062-Aが試料を採取しようとしていた小惑星2001-AL120の軌道に微細ながら影響を与えてしまうため、天体衝突の危険性を鑑みて探査機062-Aへの信号送信は当面凍結されている。
もともと2003年に探査機062-Aは小惑星2001-AL120から試料を採取しようという『カササギ計画』のために打ち上げられ、財団も費用負担と一部機材の貸与を行ったのだが、約3.1AU (天文単位。1AUは約1.5億km。)まで飛んだところでとある恒星フレアにより交信途絶。その後も復旧を試みたが、2006年に機体喪失と見なされた。しかし約2年後、探査機062-Aから微弱な信号を受信した。普通ならありがたい話なのだが、この時到着予定地点の写真を見て研究者は驚愕。なんとその表面は日本列島中央部山岳周辺に酷似しているではないか。
こんな写真を送ってくるものだから、撮影続行命令を送信するのだが、その時わずかに小惑星2001-AL120の軌道が変化した。交信を続けるごとにその交信に応じて軌道が変化していくことがわかったのだ。財団はこの探査機062-Aと小惑星2001-AL120の間の異常な関連をアノマリーと認定、財団管轄とした。
ここまでで「ん?」と思っている読者も多かろうが、その疑問はいったん頭の横によけて、続きを読んでいただきたい。
ともかく財団は、探査機062-Aを回収せんがため、有人航行計画を立案。『ノストロモ計画』と名付けられたこの計画は、小惑星2001-AL120の表面に、スクラントン現実錨のパネル (以下、SRAパネル) を14基組み上げ、現地で探査機062-Aを『収容』してしまおうという計画である。――スクラントン現実錨というものは、「現実改変」を防ぐため、ヒューム値を特定の数値に固定する技術であったはずだ。探査機062-Aがなんらかの現実改変を起こしている、と財団は考えたのだろうか。
このノストロモ計画において、人的資源の回収は行われない――ようは、人員は使い捨て。現地で死んでくださいという非情な作戦を立案したのである。最も、既に約3.1AU、つまり約4.6億kmもの場所にある小惑星2001-AL120から帰ってくる宇宙船など用意できるものではなかったのだろう。接続船ナーシサス (乗員2名) と運搬車ロードジム (乗員2名)、14基SRAパネルを乗員も含めて送るのだ。
こうして、ミミズに寄生され人ならざるものに変質したSCP-109-JP-Aのエージェント・ジョーンズ、SCP-515-JPに遺伝子汚染され頭部がイエイヌになったエージェント・アッシュ、そしてミシマ博士。この3人には財団への多大な貢献を認め、『F4までの表象領域が特別に割り当てられ』るという。この時点では何を言ってるかわからないだろうから、これも頭の横によけておいていただこう。
ともかく3名は遺書を残すことが許された。エージェント・ジョーンズとエージェント・アッシュは異形と化した自分たちが職務を全うできることを感謝していたが、ミシマ博士はただひとこと。
君たちを許さない。
SCP-1000-JP - SCP財団
より,2022/10/13閲覧
こうして3名は接続船ナーシサスに乗り込み、小惑星2001-AL120への死出の旅に出たのだ。
だが――
ノストロモ計画の凍結が決定されました。探査機062-Aの収容は無期限に延期されます。 通達: オルメイヤー計画は継続されます。投入表象は増員予定です。
SCP-1000-JP - SCP財団
より,2022/10/13閲覧
ここからは、ミシマ博士の手記が続いていく。ここも、今の時点ではよくわからないであろう描写が続くが流し読みしていただきたい。
閲覧可能ファイル: ノストロモ計画(NST+002)およびオルメイヤー計画(OME+001)
探査機062-Aの周囲一帯には、天候が存在しており、温帯多雨高温気候が再現され、メインとしてコケやシダが、少数ながら種子植物も存在している。生き物は存在していないが、呼吸可能な湿潤空気により気密服を着用せずに船外活動ができている。この条件から、日本列島中央付近の環境が再現されていることがわかる。ただし、「現実強度」だけは脅威の550Hm/cm3。普通の人間は1Hm程度の現実強度しかなく、異常を持ったエージェント・ジョーンズとエージェント・アッシュでさえ、一桁Hm程度の現実強度しか持っていなかった。こうして、ふたりは外見こそそのままだが、獲得していた異常性質は失われた。ミシマ博士はこれを「正常性への希釈」と呼称している。
SRAパネルによる探査機062-Aの収容も全く進んでいなかった。着陸船ナーシサスと探査機062-Aは14.2km離れていて、標高差が2,450mあることから、運搬できない状況だった。また、着陸船ナーシサスの正常性への希釈を防ぐためにSRAパネルを7基、3人の睡眠を取るための場所の確保にSRAパネルを7基使用する必要があった。運搬車ロードジムは既に正常性に希釈されて後部の積載部品を喪失した。つまりこの時点で計画はもはや当初の形では実行不可能になってしまっていたのだ。
そこでミシマ博士は「そもそも小惑星2001-AL120が『日本』になってしまっている」原因を探ろうとした。そしてついに、ミシマ博士はそれを見つけた。それは探査機062-Aの分解中に見つかったものであった。剣のような形をしているが、そこに電源とモデムが接続され、電力が供給されている。通信規格が保全サーバーと一致していることから、ミシマ博士は解析の結果として一種の補助記憶装置であると断定した。そしてこの記憶領域には膨大な情報体が存在し、多数の知性反応が確認された。参照不可領域の存在から、ミシマ博士は「F5までの階層を保存している」、すなわち「高レベルクリアランス職員を内包した中枢領域の予備サーバーである」と結論づけるに至る。この職員の表象が小惑星2001-AL120の現実性に干渉してこの領域を作っているのであれば、SRAパネルで収容することは危険であるため、電源を確保して着陸船ナーシサスに収容している。
AL120表層上の過剰な正常性が、表象の総意なのだとしたら、やはり財団は、異常性を帯びた職員を排除したかったということでしょうか。24年前、私を排除したように。
SCP-1000-JP - SCP財団
より,2022/10/13閲覧
もうやめようよ
アッシュとジョーンズはすでに正常な世界になってしまった。ミシマ博士もそうなるだろう。「私」はいったいどうやってここに来たのか、もはや思い出せない。この星にも太陽は昇る。ここは「私」の産まれた星なのだから。
ここはこんなにもすばらしい。
どこにいるの?
これが、SCP-1000-JPの報告書である。
……ここまで読んできた読者諸兄はさんざん頭を捻ったに違いない。SCP-1000-JPの報告書でありながら、SCP-1000-JPよりも探査機062-Aと小惑星2001-AL120についての記載ばかりの報告書。耳慣れぬ『表象』なる単語。接続船ナーシサスと運搬車ロードジムの定員を超えた人員の送り込み。ミシマ博士の怒り。なぜ小惑星2001-AL120が『日本』になったのか、なんて謎以前にわからないものが多すぎる。というか、結局SCP-1000-JPとはなんだったのか、がわからないのだ。当然、SCP-1000-JPの異常性についても語られていないのだ。あくまで本報告書には探査機062-Aの収容計画とそれにともなう報告のみが載っているだけであるからだ。
さて、上述では省いたが実はとある部分でおかしな点がちらほら散見される。例えば、先述の遺書の件。3人の遺書はそれぞれ「保存書簡-NST-006」「保存書簡-NST-007」「保存書簡-OME-011」となっている。――気づいただろうか。接続船ナーシサスからの受信ファイルとして閲覧可能なファイル名は「ノストロモ計画(NST+002)およびオルメイヤー計画(OME+001)」となっている。ミシマ博士だけ遺書のファイル名が「保存書簡-OME-011」。つまり、ミシマ博士はノストロモ計画の人員として送り込まれたのではない。ミシマ博士は、オルメイヤー計画なる別の計画の人員として送り込まれたのである。そして、引用部の「ノストロモ計画は凍結します」の部分にもしかけがあり、実はここに0pxの文字でこう書かれているのだ (本記事でも0pxで引用してあるが、再掲しておこう)。
ノストロモ計画の凍結が決定されました。探査機062-Aの収容は無期限に延期されます。 通達: オルメイヤー計画は継続されます。投入表象は増員予定です。
ノストロモ計画はSRAパネルを別用途に使用せざるを得なかったため断念せざるを得なかったが、オルメイヤー計画は続行されている。つまるところ、オルメイヤー計画とはなんだったのかがわかればこの話は紐解けそうだ。
そしてもうひとつのヒントが『SCP-1000-JPのコンテストテーマ』。SCP-1000-JPはSCP-ENのキリ番コンテストよろしく、コンテストの優勝作品としてこのナンバーを勝ち取っている。そのテーマは『日本』であった。
さて、オルメイヤー計画そのものについて、SCP-1000-JPの報告書には一切記述されていない。これは、オルメイヤー計画がSCP-1000-JP収容担当の人間には知らされない極秘情報だからである。このオルメイヤー計画に関する記録書を書いたTaleこそが、『オルメイヤー計画の記憶
』である。更に後に公開されたTale『ノストロモ計画の最後
』とも合わせて読んでいきたい。
ということでこのTaleを見ていきたいのだが、このTaleを読む上で重要な理解がTale冒頭に記述されている。まず、財団には中央サーバーである"十束"というものがある。この十束にはF1-F5までの表象領域と呼ばれる保存領域が存在している。F1-F5というのは人間の人格を5つに分けて、それぞれを「表象」として保存するというものだった。なので、以後は「表象」と言われたら、データ上に生きている人格であると捉えてほしい。うち、F5は魂そのもののようである。地球に致命的なK-クラスシナリオが起きた時、『十束』のなかの人格たちが指導して地球を元に戻すのだ。層ごとに数は減っていき、F5層は549名しかいない。魂ごと保存されているわけだから、財団のかなり高位の存在であることは予測されよう。
この『十束』をバックアップするために、予備サーバーとして『草薙』が作られた。F5層の最大の問題点は「内包した人数に比例してヒューム値が上昇する」という問題点であった。これによって周囲のオブジェクトは異常性を失っていく。確保・収容・保護。この理念から何でもかんでも無力化させるわけにはいかないのだ。クソトカゲくらいは無力化したいだろうが。十束はとりあえずSRAパネルをふんだんに使って現実強度を通常値まで下げたが、予備サーバーを同じ地球に置いておくのも危ない、という議論がなされた。またそもそも地球に何かあったときのためのサーバーであるのに、2つとも地球に置くのもバックアップという観点ではあまりよろしくない。
そんなときに、日本天体開発公社 (YEGA) が探査機062-Aを小惑星2001-AL120に送るという「カササギ計画」を立案した。これに対して財団はこれ幸いとカササギ計画に出資する見返りとして、予備サーバーの『草薙』をその小惑星に置いてきてくれと依頼した。この予備サーバーを宇宙の惑星重力県外に設置しようという計画こそが『オルメイヤー計画』だったのだ。当然、この『草薙』もSRAパネルを取り付けられており、直ちに現実改変を引き起こすことはない――はずだった。
しかし、探査機062-Aは恒星フレアの影響を受けてしまう。なんとか小惑星2001-AL120には辿り着くのだが、ヒューム値が跳ね上がってそれが漏れ出した状態の『草薙』によって小惑星2001-AL120の表面は「日本」に塗り替えられてしまったのだ。そしてどういうわけか、地球からの通信をたどり、小惑星2001-AL120ごと探査機062-Aが地球に向かってきていた。理由は不明だが、地球に小惑星2001-AL120が激突すればひとたまりもない。財団はまずはなんとかこれを止めようと試みた。
ここで上記のノストロモ計画につながる。財団はとりあえず小惑星2001-AL120表面の現実改変をSCP-1000-JPとして登録。探査機062-Aごと収容するのがノストロモ計画であった。こうしてノストロモ計画の作業員としてエージェント・ジョーンズ、エージェント・アッシュ、ミシマ博士が送り込まれるが、550hmの空間において異常を持つ3名は正常性に希釈されてしまう (つまり、消失したということである) 。しかしこのとき、接続船ナーシサスに搭載していたもうひとつの予備サーバー「八尺瓊」 と「草薙」の接続に成功。
ここでノストロモ計画は凍結しているが、その後もオルメイヤー計画は「草薙」の復旧という方向で継続されている。ここから表象投入がはじまるのだ。
復旧作業1度目では「八尺瓊」に内包されていた表象をF4層から3名分「草薙」に投入したが、領域内時間にして2日、実時間10分で知性反応が消失。このとき、小惑星2001-AL120の軌道が変わった。
2度目ではF4層から5名の表象を「草薙」へ投入。今度は実時間35分で消失したが、領域内時間にして7日であり、表象たちはデータを送る余裕はあったようだ。曰く、「小惑星2001-AL120表面と同様に、「草薙」の表象領域内にも日本列島中央部が再現されていて、山頂に日本列島中央部を再現している財団職員の表象も複数いた。ただし小惑星2001-AL120の軌道修正を行っている表象の由来は不明だ」ということ。
1人多い。
SCP-1000-JP - SCP財団
より,2022/10/13閲覧
聡明な読者諸兄はもうお気づきのことだろう。そう、F5層の表象は549名しかいない。表象の数をx、ヒューム値をyとするならy=x、グラフにすれば右斜45°になる単純な比例グラフが成り立つはずなのに、実際のヒューム値は550hm。ひとり多いのだ。
このとき財団が「八尺瓊」に「「草薙」に表象を送れ」と指示しているときの信号を、「草薙」の内部の表象が逆探知して地球に向かっているようだというのが判明した。
3度目、今度はノストロモ計画のメンバーと同じ表象を「八尺瓊」から「草薙」に送ってみた。30日、領域内時間にして24年過ぎても尚その表象は生きていた。隠すこともなかろう、ミシマ博士の表象である。
ミシマ博士の表象は、山頂に辿り着いた。そしてそこで「探査機062-Aの形態」をとる表象を見つけた。中には表象サーバーが存在し、剣の形に偽装されていた。それを接続船ナーシサスと接続したミシマ博士は、自身の意識も接続する。そうして送ってきたメッセージは、だいたいは先述のものと同じなのだが、ところどころで「SRAパネル?」「アッシュとジョーンズとは一体誰のことなのでしょうか」などと別の意識が混入している。
雑に言えば、ノストロモ計画で実際に現地に辿り着いた (そして草薙に取り込まれた) ミシマ博士の表象と、「八尺瓊」にもともと保存され、「草薙」に投入されたミシマ博士の表象の意識が混ざってしまっているのだ。
これをそのまま載せれば、SCP-1000-JPの報告書を読んだだけでも違和感に気付く職員も多い。オルメイヤー計画については財団高位職員のみが知っているべきトップシークレットなので、なるべく違和感のないように都合の悪い部分を消去したのである。
ミシマ博士はエージェント・アッシュとエージェント・ジョーンズの表象と出会い、2人から励ましと、「軌道修正を行っている表象は純粋で強固な意思であり、我々が産み出した、よく知るなにか」であることを告げられる。そしてこのタイミングでその表象とも対話を行っているのだ。
そして、もうひとつ、ミシマ博士2人以外にも増えた表象が存在していて、その表象もこのなかで対話している。549名しかいないはずのF5表象の550人目、「小惑星2001-AL120の軌道を修正している」表象。――否、もっと正確に言えば、「地球に小惑星2001-AL120のサンプルを持ち帰る動機のある表象」。ノストロモ計画のメンバーは全員現地で自殺するつもりであったし、「草薙」と「八尺瓊」の表象も地球に帰る理由なんて無い。そう、小惑星2001-AL120を操作し、地球に向かっているのは、紛れもなく探査機062-AのF5表象――探査機062-Aの「魂」であった。「草薙」内部の現実改変は、モノにも魂が宿るという日本の文化 (擬人化) を齎した。5つのエラーが信号に混ざっているが、この画像ファイルをUnicodeの文字番号から復号すると「映像記憶」「感覚記憶」「実感」「自発意志」「魂」と分かる。F1-F5に対応しているのだろうが、探査機062-AもF1から順にF5までの表象を獲得したのだ。
ミシマ博士は、探査機062-Aの表象に語りかける。もう、持って帰らなくていいんだよ。だが、探査機062-Aはプログラム故に、「純粋で強固な意思」を有する。そして、彼は「帰る」のではない。探査機062-Aの魂は「小惑星2001-AL120でうまれた」のだから、彼にとっては地球は「行く場所」なのだ。このすれ違いでうまく行ってないのだが、財団はとりあえず信号をむやみに送って地球接近を早めるのではなく、ミシマ博士に探査機062-Aとの対話を行わせることで、制御出来ないかと考えている。故に、「対話は続けられる」。
』のなかで、「はやぶさ」が帰巣本能の強い鳥として、またもどってくることを期して名付けられたとするならば、このSCP-1000-JPにおける探査機062-Aにとっては日本は「行く先」なのだと解釈している。
』という作品を発表。一見すると財団コンテストをパロディにしたようなTaleだが、「八咫」がここで登場する。
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最終更新:2025/12/19(金) 12:00
最終更新:2025/12/19(金) 12:00
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