ボワルセル(Bois Roussel)とは、1935年生まれの
フランスの競走馬。鹿毛の牡馬。
1938年の英ダービーを直線で20番手から1ハロンで先頭までごぼう抜きという凄まじい追い込みで制し、種牡馬としてもセントサイモン系中興の祖と呼ばれた名馬。
馬名は「ボアルセル」や、古い本だと「ボアラツスル」などの表記もある。
※同名馬として、1864年ジョッケクルブ賞(フランスダービー)を買った1861年生まれのフランスの牡馬がいる。
父Vatout、母Plucky Liege、母父Spearmintという血統。
父ヴァトーはセントサイモン系のフランス2000ギニー勝ち馬で、29戦6勝、1929年の凱旋門賞4着などの実績がある。種牡馬としては7世代しか産駒を残せなかったが、ボワルセルの他にサンクルー大賞勝ち馬Vatellorなどを輩出した。ボワルセルは4世代目の産駒。
母プラッキーリエージュ(プラッキーリージ)は現役時代はよくいる早熟馬止まりだったが、繁殖牝馬としては産駒12頭のうちデビューした11頭全てが勝ち上がり、うちステークスウィナー6頭。4度のアメリカリーディングサイアーに輝いたSir Gallahad、アメリカリーディングサイアーのBull Dog、フランスリーディングサイアーのAdmiral Drakeと、ボワルセルを含め3ヶ国で4頭のリーディングサイアーを出すという凄まじい成績を残した超名牝。ボワルセルは23歳のときに産んだ最後の仔である。
母父スペアミントは1906年の英ダービー馬。種牡馬としては1920年の英ダービー馬Spion Kopなどを輩出した他、Nearcoの母母父として世界中のサラブレッドの血統の中にその血が残っている。
両親ともそれまで所有していたオーナーが破産してフランスの馬産家レオン・ヴォルテラに引き取られ、フランスのボワルセル牧場という牧場に生まれた彼は、新たなオーナーの期待の表れか、牧場名そのまんまの名前を与えられることになった。
デビューは遅れ、3歳の4月。ロンシャン競馬場の芝2100m戦、ジュイーニュ賞でようやくデビューしたボワルセルは、ダリュー賞(仏ダービーの前哨戦の重賞)勝ち馬Astrologerをクビ差制して勝利する。この勝利がイギリスの馬主の目に留まり、そちらにトレードされたボワルセルは、2戦目でダービーステークスに臨むことになった。
無名の1戦1勝馬ということで大して注目もされておらず、しかもレースではスタートで大出遅れ、最後方追走になってしまう。直線に入り、先行した1番人気Paschと2番人気Scotish Unionが抜け出しての一騎打ちに大観衆も固唾を呑んでいたそのとき、大外からなんか1頭わけのわからない末脚でカッ飛んできたのがボワルセルだった。残り2ハロンで22頭立ての最後方から、残り1ハロンで先頭に立って、最後は流して4馬身差圧勝というから意味がわからない。なんだそれ。
しかしこのとてつもない勝ち方の代償は大きかったのか、フランスに戻ってのパリ大賞はNearcoの3着に敗退。このとき既に屈腱炎を発症していたそうで、翌年のアスコット金杯を目指して調整を続けたが、あえなく屈腱炎が再発してそのまま現役引退となった。通算3戦2勝。
引退後はイギリスで種牡馬入り。初年度産駒から英セントレジャー勝ち馬Tehranを出すという快調なスタートを切ると、4世代目からは凱旋門賞など重賞7勝を挙げた名馬Migoli、6世代目からは愛ダービー馬*ヒンドスタンを輩出するなど多くの活躍馬を出し、英愛リーディングでNearcoと鎬を削った。1949年の英愛リーディングサイアーはNearcoとされているが、ボワルセルであるとする資料もある。日本ではヒカルメイジが持込馬として1957年の日本ダービーを制している。
さらにボワルセル産駒は種牡馬としても優秀で、Tehranは1952年の英ダービー・キングジョージなどの勝ち馬Tulyarを出して同年の英愛リーディングサイアーに輝き、Migoliはアメリカの名ステイヤーGallant Manなどを輩出。日本でも*ヒンドスタンが五冠馬シンザンを筆頭に7度のリーディングサイアーに輝く大種牡馬となるなど、ボワルセル産駒は世界各国にセントサイモンの直系を広げたことから「セントサイモン系中興の祖」とも言われた。
ボワルセルは1955年10月21日、重度の蹄葉炎のため安楽死となった。20歳だった。
現在、直系は日本では2001年の帝王賞を勝ったマキバスナイパーを最後の栄光として滅び、世界を見渡してもアメリカに唯一残っていた直系種牡馬Demon Warlockが2023年に死亡したので、あとはほぼ滅亡を待つのみとなっている。しかしボワルセルがセントサイモン系の主流血統のひとつとして世界の競馬に残した足跡は消えることはないし、その血も優秀な後継たちを介して母系に入って残り続けていくことだろう。
| Vatout 1926 鹿毛 |
Prince Chimay 1915 栗毛 |
Chaucer | St. Simon |
| Canterbury Pilgrim | |||
| Gallorette | Gallinule | ||
| Orlet | |||
| Vashti 1921 鹿毛 |
Sans Souci | Le Roi Soleil | |
| Sanctimony | |||
| Vaya | Beppo | ||
| Waterhen | |||
| Plucky Liege 1912 鹿毛 FNo.16-a |
Spearmint 1903 鹿毛 |
Carbine | Musket |
| Mersey | |||
| Maid of the Mint | Minting | ||
| Warble | |||
| Concertina 1896 鹿毛 |
St. Simon | Galopin | |
| St. Angela | |||
| Comic Song | Petrarch | ||
| Frivolity |
クロス:St. Simon 4×3(18.75%)、Gallinule 4×5(9.38%)
Bois Roussel 1935
|Migoli 1944
||Gallant Man 1954
|||*ペキンリュウエン 1977
||||マキバスナイパー 1995
|*ヒンドスタン 1946
||ヤマトキヨウダイ 1960
||シンザン 1961
|||ミホシンザン 1982
||ダイコーター 1962
|||ブゼンダイオー 1974
||||コスモドリーム 1985
|||ニシノライデン 1981
||エイトクラウン 1962
||リュウファーロス 1963
|||アンドレアモン 1979
|ヒカルメイジ 1954
||アサホコ 1960
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最終更新:2025/12/27(土) 22:00
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