小林泰三 単語


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小林泰三とは、日本の小説家である。
読みは「こばやしやすみ」で「たいぞう」ではない。本屋ではたまに間違った棚に置かれている。また、全く同じ字で「たいぞう」と読む、『日本の国宝、最初はこんな色だった』などの著作がある美術史学者がいるが、もちろん別人。

概要

1962年京都生まれ。1995年、短編「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しデビュー。元々奥さんが応募を目指し書こうとしていたが、書けないのでアンタが書けと応募締切の数日前に言われ、ぱっと書き上げ応募したらしい(本人談)。

作品は短編集が中心で、長編はあまり多くない。SF、ホラー、クトゥルー、ミステリー、はては恋愛まで幅広いジャンルを書き分けるが、得意なジャンルはSFとホラー。SFの設定を利用してホラーを、SFを利用してミステリーを、などジャンルを越えた設定もお手のもの。SF界隈ではデビュー当初から高い評価を得ており、野尻抱介、林譲治とともにハードSFの新たな旗手としてNHKトリオと呼ばれていた(らしい)。ミステリ方面でも『密室・殺人』『アリス殺し』などで高く評価されている。

デビュー作の『玩具修理者』や代表作の『ΑΩ』など、ホラー系の作品ではじゅるじゅるとした汁気の多い描写が目立つ。また近年は光文社文庫の書き下ろし作品などで、やたらと極端な方向に突き進む人間たちを描くエスカレーション型のブラックコメディをよく書いており、絶望的に噛み合わない会話を書かせたら当代随一。

ホラー系は趣味と性格と底意地と読後感の悪い(褒め言葉)話が多いので、初めて彼の小説を読む人は、『海を見る人』や『天体の回転について』、『天獄と地国』などのSFから手を出すのもいいだろう(内容自体は結構ガチのハードSFで、そっちも悪趣味な作品は入っているが)。

ホラーが大丈夫という人は、『玩具修理者』『人獣細工』『家に棲むもの』『脳髄工場』などで、じゅるじゅるとした描写とその裏に張り巡らされた物語の罠を存分に堪能すべし。ミステリー好きの人は『アリス殺し』か『密室・殺人』、『殺人鬼にまつわる備忘録』あたりから読むのがオススメだが、ミステリーを書いてもやっぱりおよそマトモではないので(『密室・殺人』はプロの評論家・書評家の間でも人によってオチの解釈がまるで違ったとか)、非常に邪悪なミステリーを読む覚悟をしてどうぞ。

1998年に短篇「海を見る人」でSFマガジン読者賞を、2012年に『天獄と地国』で、2017年に『ウルトラマンF』で星雲賞日本長編部門を受賞している。また2012年には『大きな森の小さな密室』がなぜか10万部ほどのヒットになった。現在は『アリス殺し』に始まる〈メルヘン殺し〉シリーズが世界各国に翻訳されており、最大のヒット作になっているらしい。

2020年11月23日に、癌で闘病中であったところ、大阪府内の病院で死去した。[1]

作品リスト

  1. 玩具修理者 (1996年、角川書店→1999年、角川ホラー文庫)
  2. 人獣細工 (1997年、角川書店→1999年、角川ホラー文庫)
  3. 密室・殺人 (1998年、角川書店→2001年、角川ホラー文庫→2014年、創元推理文庫)
  4. 肉食屋敷 (1998年、角川書店→2000年、角川ホラー文庫)
  5. 奇憶 (2000年、祥伝社文庫)
    → 忌憶 (2007年、角川ホラー文庫[書き下ろし2編追加・改題])
  6. ΑΩ (2001年、角川書店)
    → ΑΩ 超空想科学怪奇譚 (2004年、角川ホラー文庫[改題])
  7. 海を見る人 (2002年、ハヤカワSFシリーズJコレクション→2005年、ハヤカワ文庫JA)
  8. 家に棲むもの (2003年、角川ホラー文庫)
  9. 目を擦る女 (2003年、ハヤカワ文庫JA)
    → 見晴らしのいい密室 (2013年、ハヤカワ文庫JA[収録作変更・改題])
  10. ネフィリム 超吸血幻想譚 (2004年、角川書店→2007年、角川ホラー文庫)
  11. 脳髄工場 (2006年、角川ホラー文庫)
  12. モザイク事件帳 (2008年、東京創元社)
    → 大きな森の小さな密室 (2011年、創元推理文庫[改題])
  13. 天体の回転について (2008年、ハヤカワSFシリーズJコレクション→2010年、ハヤカワ文庫JA)
  14. 臓物大展覧会 (2009年、角川ホラー文庫)
  15. セピア色の凄惨 (2010年、光文社文庫)
  16. 人造救世主シリーズ
    1. 人造救世主 (2010年、角川ホラー文庫)
    2. 人造救世主 ギニー・ピッグス (2011年、角川ホラー文庫)
    3. 人造救世主 アドルフ・クローン (2011年、角川ホラー文庫)
  17. 完全・犯罪 (2010年、東京創元社→2012年、創元推理文庫)
  18. 天獄と地国 (2011年、ハヤカワ文庫JA)
  19. 惨劇アルバム (2012年、光文社文庫)
  20. アリス殺し (2013年、東京創元社→2019年、創元推理文庫)
  21. 百舌鳥魔先生のアトリエ (2014年、角川ホラー文庫)
  22. 幸せスイッチ (2015年、光文社文庫)
  23. 記憶破断者 (2015年、幻冬舎)
    → 殺人鬼にまつわる備忘録 (2018年、幻冬舎文庫[改題])
  24. 世界城 (2015年、日経文芸文庫)
  25. 安楽探偵 (2016年、光文社文庫)
  26. 失われた過去と未来の犯罪 (2016年、KADOKAWA→2019年、角川文庫)
  27. クララ殺し (2016年、東京創元社→2020年、創元推理文庫)
  28. ウルトラマンF (2016年、早川書房→2018年、ハヤカワ文庫JA)
  29. 因業探偵 新藤礼都の事件簿 (2017年、光文社文庫)
  30. わざわざゾンビを殺す人間なんていない。 (2017年、一迅社)
  31. ドロシイ殺し (2018年、東京創元社)
  32. パラレルワールド (2018年、角川春樹事務所→2019年、ハルキ文庫)
  33. 因業探偵リターンズ 新藤礼都の冒険 (2018年、光文社文庫)
  34. C市からの呼び声 (2018年、創土社)
  35. 人外サーカス (2018年、KADOKAWA)
  36. 神獣の都 京都四神異譚録 (2019年、新潮文庫nex)
  37. 代表取締役アイドル (2020年、文藝春秋)
  38. 杜子春の失敗 名作万華鏡 芥川龍之介篇 (2020年、光文社文庫)
  39. ティンカー・ベル殺し (2020年、東京創元社)
  40. 未来からの脱出 (2020年、KADOKAWA)

関連商品

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人造救世主

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関連項目

  • SF
  • ホラー
  • 小説家の一覧
  • 長門有希の100冊
  • 野尻抱介

脚注

  1. *作家・小林泰三先生ご逝去のお知らせ
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