『艦隊これくしょん-艦これ- 陽炎、抜錨します!』とは、ブラウザゲーム『艦隊これくしょん~艦これ~』の小説版の一つである。全7巻。ファミ通文庫から出版された。
概要
メディアミックスの一環として出版されたノベライズ版「艦これ」。
サブタイトルが長いので、他レーベルのノベライズと区別する際には「陽炎抜錨」「陽炎小説」「陽抜」等と略される事も。
本作は、陽炎率いる「第十四駆逐隊」の活躍を描く王道熱血バトルモノとして評価が高い。
メディアミックスとしては本家ゲームではほとんど目立っていなかった艦娘達をメインに抜擢する珍しい構成。特に駆逐艦娘に焦点を当てられて描かれており、「明日いなくなっているかもしれない」シリアスな世界観で懸命に生きる彼女たちの、独特な雰囲気を持った作品となっている。
何気に艦これの各種メディアミックスの中でも(アンソロジー系統を除き)単行本がトップバッターで刊行された作品でもあり、単行本3巻、4巻、5巻、7巻には冊子付属の特装版も(通常版に併せて)発売されている。
2015年12月末に発売された第7巻にて完結。この時点でノベライズ版艦これの作品、および完結した艦これ関連作品では最長となった。
あらすじ
呉鎮守府から横須賀鎮守府に突然異動となった駆逐艦娘「陽炎」は、転属早々「第十四駆逐隊」の嚮導艦(駆逐隊の指揮艦)を任される。
しかし、そのメンツは一癖も二癖もある問題艦が集まった「寄せ集め」駆逐隊だった―
登場人物
第十四駆逐隊
横須賀鎮守府に転属した陽炎が嚮導艦として任された駆逐隊。
鎮守府でのはぐれ者を集めた部隊のようで、どの艦娘もどこか一癖ある事情を隠している。
なお、実際の歴史での第十四駆逐隊は戦争中には空席となっている。
- 陽炎
陽炎型駆逐艦1番艦。主人公。
呉から横須賀に転属してきた駆逐艦娘。着任早々第十四駆逐隊の嚮導艦を任される。
陽炎型の長女らしく、明るくて努力家。
直接的な言及は無いが、2巻・3巻における独白などから艦娘になる前はかなり厳しい生活環境で生きていたかのような事が示唆されている。 - 曙
綾波型駆逐艦8番艦。1巻のヒロイン。
とある出来事がきっかけで駆逐艦の仕事をバカにしているひねくれ者の全方位ツン娘。
「天才」と言われるほどで艦娘としての能力は非常に優秀。 元は駆逐艦の仕事を誇りに思う真面目な性格だったが、船団護衛に失敗したことが原因でこのような性格になってしまった。 - 皐月
睦月型駆逐艦5番艦。
明るく人懐っこい性格。トレーニングが好きで座学が苦手な筋肉バカ。
陽炎の横須賀鎮守府でのルームメイトとなる。
常に体を鍛えてるのは睦月型の艦としての性能の悪さを補うため。 - 潮
綾波型駆逐艦10番艦。
お節介扱いされながらも曙をかばう弱気な艦娘。隠れ巨乳。
曙がプライドを踏みにじられた船団護衛任務で唯一無傷であったことが、彼女に対する負い目となっている。 - 霰
朝潮型駆逐艦9番艦。
元は陽炎のいた第十八駆逐隊所属であり、陽炎とは旧知の仲。
超絶無口。戦隊の割り振りの時に黙っていたせいで第十四駆逐隊に回された。
普段はあまり目立たないが、比較的新鋭の朝潮型であるため砲撃の腕は非常に優秀。 - 長月
睦月型駆逐艦8番艦。
古風な喋り方をする艦娘。霰を一方的に気に入っている。
威勢のいい武人めいた言動は実は虚勢。睦月型の性能の悪さのために砲撃がド下手であり、霰を守ると言って側にいたが実際は腕のいい彼女を頼ってだけだった。 1巻でコンプレックスを克服してから大きく成長し、頼もしい艦娘となった。
横須賀鎮守府
1-2巻及び7巻の物語の舞台。神奈川県横須賀市。
戦艦・空母などの主力艦が揃った比較的規模の大きい鎮守府。
- 愛宕
高雄型重巡洋艦2番艦。横須賀鎮守府の秘書艦。
金髪で巨乳、ふわふわとした喋り方の艦娘。駆逐艦娘に自分のことを「お姉ちゃん」と呼ばせようとしている。
陽炎曰く「お色気担当」。この世界でも彼女の画像が大量に出回っているらしい。
本作での彼女は言動や見た目に反して気配り上手な非常に優秀な秘書艦。陽炎にとっては隠し事のできない相手のようだ。 - 高雄
高雄型重巡洋艦1番艦。
愛宕とは違って常識的。普通人ゆえに癖の強い人材相手には苦労が絶えず、あまり余裕の無い面も。
2巻では摩耶、妙高、五十鈴を伴って出撃したE海域からの撤退戦において不知火と共に壮絶な死闘を繰り広げるが…… - 夕雲
夕雲型駆逐艦1番艦。呉鎮守府で訓練中だったが、陽炎の佐世保鎮守府から横須賀鎮守府への帰還と合わせて他の姉妹艦6人と共に横須賀鎮守府所属になる。 - 提督
横須賀鎮守府の主。陽炎を呉鎮守府から引き抜いた張本人。一見すると典型的なセクハラ提督のダメ男っぽいが……
2巻で艦娘の足の裏を見ることとうなじを舐めることが好きなド変態だと判明する。横須賀の提督に収まっている以上はただの変態ではないのだが……
呉鎮守府
陽炎が元いた鎮守府。広島県呉市。過去編として4巻の舞台になる。
- 不知火
陽炎型駆逐艦2番艦。
かつての陽炎のルームメイトで相棒。クールな雰囲気通りの性格であり、砲雷撃戦の技術も非常に高い。
同じく第十八駆逐隊のメンバーである霞も呉鎮守府に所属している。
2巻では横須賀鎮守府に転属する。普段は冷静な反面キレた時は恐ろしく、一度頭に血が上ると止まらない。 - 黒潮
陽炎型駆逐艦3番艦。
かつての陽炎のルームメイト。 - 霞
朝潮型駆逐艦10番艦。
呉鎮守府時代の陽炎の同僚で、陽炎の元の所属である第十八駆逐隊指揮駆逐艦にして呉鎮守府駆逐艦のまとめ役。勇ましい性格の持ち主。 - 神通
川内型軽巡洋艦2番艦。陽炎と不知火の上官。
一見気弱そうに見えるが容赦の無い訓練を行う鬼監督。自身も同じメニューを平気でこなす超人でもある。
その厳しさは駆逐艦たちを誇りに思う故であり、陽炎は憧れの人物として尊敬している。 - 大淀
大淀型軽巡洋艦。呉鎮守府秘書艦。鎮守府の事は釘一本まで詳細に把握していると云われ、彼女の前では誤魔化しも役に立たないと(神通とは違った意味で)恐れられている。 - 熊野
最上型重巡洋艦4番艦。2巻で名前のみ言及されたが、本格的な出番は鈴谷共々3巻から。 - 鈴谷
最上型重巡洋艦3番艦。 - 呉の提督
呉鎮守府の提督。横須賀の提督とは同級で互いに張り合う仲。
呉の駆逐艦たちのまとめ役的な存在であった陽炎が横須賀に引き抜かれてしまったため、再三返すように要請している。
リンガの老提督曰く、艦娘とは一定の距離を取り、立ち入ったり立ち入らせたりはしないとのこと。
提督として着任した当初は、艦娘を戦地へ送ることへの重責から酒に溺れ、依存症すれすれにまでなった過去があるとのこと。
リンガ泊地
- 叢雲
吹雪型駆逐艦5番艦。
老提督の秘書官を務める駆逐艦娘で、彼とは初期艦として任命されてからの長い付き合い。 - あきつ丸
特種船丙型揚陸艦。
リンガ泊地に着任したばかりの新米艦娘で、揚陸艦という特殊な立ち位置から戦闘能力が低いことが悩み。
艦娘になる前は元々陸軍の人間であり、彼女にとっての主戦場は海ではなく陸。3巻終盤で浜辺に乗り上がって来たワ級を数体、白兵戦で切り伏せるという大活躍を見せた。
『陽炎、抜錨します!』に登場した艦娘の中で、何気に始めて艦娘になる前の素性が明言された登場人物でもある。 - 老提督
リンガ泊地に務める老提督。
幌筵泊地
5巻舞台。千島列島の最北端でカムチャッカ半島を見る。
横須賀から作戦に参加するため第十四駆逐隊が遠征する。
- 阿武隈
長良型軽巡洋艦6番艦で幌筵泊地秘書艦。元は横須賀鎮守府第一水雷戦隊の旗艦だった。 - 木曾
球磨型軽巡洋艦5番艦。元舞鶴鎮守府所属。まるゆに対して何くれとなく面倒を見ている。 - まるゆ
三式潜航輸送艇。木曾と仲が良い - 涼風
白露型駆逐艦10番艦で大湊警備府秘書艦。幌筵に向かう途中の陽炎たちが立ち寄った大湊で出会う。
佐世保鎮守府
- 那智
妙高型重巡洋艦2番艦。佐世保鎮守府秘書艦。秘書艦に任命された陽炎に秘書艦の心得や仕事の手順を指導する。 - 文月
睦月型駆逐艦10番艦。皐月と長月の佐世保での同僚。5巻でも救援で幌筵に来ているが、本格的登場は6巻から。 - 白露
白露型駆逐艦1番艦。第二七駆逐隊指揮駆逐艦で秘書艦経験あり。 - 時雨
白露型駆逐艦2番艦。雪風と並び称される「佐世保の時雨」その実力は歴戦の陽炎も唸らせるほど。
作中設定
本作における「艦娘」は、志願して適性審査を受けた市井の少女が、過去の大戦で沈んだ史実上の艦船の名を襲名するというものになっており、他メディアミックスに比べて、今を生きる「人間」としての艦娘達のメンタリティに比重を置いた側面が強くなっているが、反面「モデルとなった艦の歴史・記憶」についてはやや曖昧にされている(2巻では断片的に「元々の人格に後付けされている」と思しき描写が存在)。
その他、原作ゲームにおけるゲームシステム諸々も作中の設定として肉付けされており、近代化改修、改造、解体、羅針盤、うずしおといった要素がシナリオ中の重要なファクターとして取り扱われている。
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関連項目
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