ウド・デイター・フンメル(Udo Dater Fummel)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
概要
ローエングラム朝銀河帝国の官僚。同盟首都ハイネセンにおける帝国高等弁務官の首席補佐官を務めた。
独創性には欠けていたものの、法知識に富み、行政処理に長けた勤勉な人物。
石黒監督版OVAでは、面長であごひげと口ひげを整え眼の細い、怜悧そうな官僚としてデザインされているほか、テロップ、ナレーション双方で「ウド・ディター・フンメル」と表記・発音されている。
経歴
帝国暦490/新帝国暦1年、バーラトの和約によって同盟首都ハイネセンに設置された帝国高等弁務官の首席補佐官に任じられたのがウド・デイター・フンメルである。彼の役割はその職名のとおり高等弁務官ヘルムート・レンネンカンプ上級大将の補佐役であったが、同時に秘密裏に軍務尚書パウル・フォン・オーベルシュタイン元帥にレンネンカンプの動静を直接報告する役目をもあたえられていた。
こうしてハイネセンに着任したフンメルは、すぐさま同盟の数多い国法・政令の調査にあたった。
ヤン・ウェンリー逮捕への関与
この年の7月20日、バーミリオン星域会戦で戦死したとされるウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツが実際には生存し、ヤンの手引きにより艦艇を率い潜伏している、という無根拠の密告(ただし事実ではあった)を受けたレンネンカンプは、同盟政府に対しヤン・ウェンリーの逮捕を勧告した。フンメルはその夜にレンネンカンプの執務室に呼ばれ、ヤンの法的な扱いについて助言をあたえた。
レンネンカンプは”勧告”のとおりヤンに反和平活動防止法を適用させるつもりでいたが、フンメルはバーラトの和約に伴い成立した同法を遡及適用することは不可能であると指摘し、むしろ国防軍基本法の利用を主張した。ヤンによるメルカッツへの軍用艦艇供与は国家資産の処分にかんする職権濫用であり、一般刑法においては背任横領罪にもあたる、としたのである。これは明らかに不名誉な罪状と言わざるをえず、清廉さに評判のあるヤンの名声への大きな打撃にもなりうるやり口であった。
しかし、こうした強引なヤンの逮捕”勧告”は同盟政府の過剰な防衛反応とヤンの旧部下たちの暴発を誘発し、事態はレンネンカンプの拉致および自死とヤンのハイネセン脱出という急変を迎えることとなる。
ジョアン・レベロ暗殺への関与
ヤンの脱出後、帝国高等弁務官府はレンネンカンプ拉致を公表すれば帝国の権威に傷がつきかねないということもあって沈黙を保った。この時期のフンメルは「ある種の夜行動物のように弁務官府の闇にうずくまり、爪と犬歯をとぐのにいそがしかった」という。
同年11月10日、皇帝ラインハルトは同盟に対し再度宣戦を布告し、翌新帝国暦2年1月のマル・アデッタ星域会戦において同盟軍最後の機動戦力が消滅する。この時期、いまだハイネセンに留まっていたフンメルは同盟軍の統合作戦本部長代理ロックウェル大将らに接触し、同盟元首ジョアン・レベロ議長の暗殺を教唆、実行させた。
ラインハルトがハイネセンに到着したのち、証言や証拠からこの不名誉な暗殺教唆があきらかとなった。フンメルは詰問に対して「陛下の御手をわずらわせることをおそれたため」と答えたが、ラインハルトは「殊勝な心がけだが、それならレンネンカンプの軽挙を制するべきだったのだ。いまさらさかしげにふるまって予に恩をうるつもりか」とするどく反駁すると、フンメルを即日更迭して帝都オーディンへ送還した。
能力と職務
フンメルは該博な法知識、課題を効率よく秩序立てて処理しうる行政能力、そして勤勉さの三つをあわせ持つ、官僚としては優秀な人物であった。反面「精神には独創的なものはいたってとぼしかった」とされるが、「なまじ独創性だの芸術的感性だのがゆたかな人物など、軍事占領行政に必要どころか有害なだけ」であるから、高等弁務官の首席補佐官という役職において問題はなかった。要するにホーランドは駄目ってことね
もとより帝国高等弁務官は「たんに外交代表というにとどまらず、同盟の国政を監視し、帝国の利益を最大限に擁護しなくてはならない」役職でありながらも、その職権はバーラトの和約に明記されており、形式上は明確な独立国である自由惑星同盟における権力行使には限界があった。ゆえにこそ、その職権を極限まで活用するためにフンメルのような人間の能力と知識が必要とされたのである。
こうしたフンメルの能力と知識の一端が、ヤンを逮捕したときの進言にあらわれている。彼はレンネンカンプの計画の法的な瑕瑾を指摘するだけでなく、従来の同盟法を活用することで、ヤンの名声にも傷を付けうる、より有用な案を提示してみせている。こうした、同盟法を研究・利用して帝国の公敵を排する彼のなしようは、「知能犯罪者めいたやりくち」とすら評されるものであった。
このように、レンネンカンプ高等弁務官にとってはフンメルは補佐役として満足すべき存在であった。しかし、レンネンカンプの死後に彼が行ったレベロ暗殺教唆は帝国にとってはむしろ不名誉につながるものであり、皇帝ラインハルトの不興を買うこととなった。のちのエルネスト・メックリンガーの言を借りれば、彼もまた「獅子の友となりえぬ男だった」のであろう。
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関連項目
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