エルネスト・メックリンガー(Ernest Mecklinger)は「銀河英雄伝説」の登場人物。
石黒監督版アニメでのCVは土師孝也(「わが征くは星の大海」では戸谷公次)。
「Die Neue These」でのCVは大場真人。
ラインハルト・フォン・ローエングラム麾下の提督。
艦隊旗艦はクヴァシル(石黒監督版)、ガンダルヴァ(Die Neue These)。
星を砕く者・黎明篇~風雲篇
登場は外伝「星を砕く者」にて、オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵邸の警備担当者としてミューゼル姓時代のラインハルトと出会う。この時の階級は准将。アンネローゼの友人のヴェストパーレ男爵夫人を通じてラインハルトに情報を流し、誼を結ぼうと接触をはかる。艦隊参謀としてラインハルトの艦隊に配属され、第四次ティアマト会戦に従軍。
アスターテ会戦時までに転属しているが、ラインハルトが元帥府を開設すると、中将・艦隊司令官として諸将に加わる。同盟軍の帝国領侵攻では同盟軍第8艦隊を攻撃して後退させた。リップシュタット戦役でも武勲をたて、敵地を占領するや即座に美術館や博物館に駆け込み、戦火から美術品の保護を行っている。
ラインハルトが帝国宰相になると、大将に昇進。統帥本部次長に就任。この時、統帥本部総長代理であるオーベルシュタインの部下となっていると思われるが、接点は描写されていない。
ある時にヒルダの依頼をうけて、彼女の従弟のキュンメル男爵の見舞いに訪れている、その時、重篤の病をかかえながらもペットを飼うような代償行為を行なっていない男爵の様子に違和感をいだく(キュンメル男爵の真意が分かるのは後の事となった)。同僚であるケンプが戦死した時には、その妻子の所へ訃報を伝えるべく使者をつとめた。
”神々の黄昏”作戦では後方待機となり、軍務省と元帥府の事務を決裁し、補給と後続部隊編成の大任にあたった。
飛翔~回天篇
ラインハルトが新王朝を開き皇帝となると、上級大将に昇進。大本営がフェザーンに移されるとオーディンに残留し、後方総司令官に任命され旧帝国領の査閲・指揮権を預かった。
回廊の戦いの開始にともないオーディンを発ち、イゼルローン回廊の反対側に艦隊15,900隻を布陣してヤン艦隊の背後を扼して侵入、しかしヤンは20,000隻以上の艦隊を率いて迎撃。メックリンガーは戦略的合理性からヤンの全戦力を50,000隻以上と見積もらざるを得ず、一戦も交えずに後退する事となった。結局ヤンの戦力は迎撃分が限界で、ブラフによって後退した事で迎撃から急転したヤンに大敗したビッテンフェルトから批判される。これについて、根拠のある言い分はあったものの声高に反論する事はなかった。
帝都がフェザーンに遷都されると、ケスラーの代わりにオーディンの防衛も任される。
第二次ランテマリオ会戦では、11,900隻の艦隊を率いてイゼルローン回廊から新領土に進軍、二正面作戦の一面を担った。同時にイゼルローン政府が、帝国か叛乱軍か、どちらに協力するかの反応を問う外交使節も兼ねた。回廊の通行を許したイゼルローン政府に対しては礼節を示し、全軍にヤンの霊に対して敬礼の指示を行う。会戦は短期決着に終わった為、戦闘の機会は得られなかったが、一方面を扼して戦略的には寄与を果たした。艦隊はヴルヴァシーの治安と、同地事件の捜査にあたり。そこでアルフレット・グリルパルツァー大将が自身を利する為に不正を働いた事を知り、手厳しく弾劾する。後にフェザーンに帰還。
落日篇
ヒルダが皇妃となり、大本営幕僚総監の職を辞すると、その後任となる。
ハイネセンの混乱の収容に赴いたラインハルトに随行。シヴァ星域会戦では、総旗艦ブリュンヒルトに搭乗し、ラインハルトの主席幕僚として補佐を行った。ラインハルトが重体に陥ると代わりに艦隊中央部を統率し、司令長官ミッターマイヤーとの無言の連携を行う手腕を見せたものの、情報の統制での混乱、ミッターマイヤーもラインハルトの容態への懸念から判断を狂わせ、イゼルローン軍のブリュンヒルトへの強襲を許す事となった。
後に帝都フェザーンに僚友達と共に帰還し、ヴェルゼーデ仮皇宮にてラインハルトの臨終を見届ける事となった。ラインハルトの死の場面を「……かくて、ヴェルゼーデは聖なる墓となった」と記している。
ラインハルト崩御後に摂政皇太后ヒルデガルドにより元帥に列せられ、僚友とともに「獅子の泉の七元帥」として後世に名を残した。
能力
軍人としても芸術家としても優れた能力を備え、「芸術家提督」「文人提督」の異名をとる。
艦隊司令官としては手堅い力量を有し、大艦隊を率いて多くの武勲を立てたが、それ以上に参謀としての手腕は得がたいものがあった。後方から戦力の配置、投入を図る戦略家型の将帥。軍人として、実戦(一個艦隊司令官)、軍令(統帥本部次長、大本営幕僚総監)、軍政(軍務尚書候補)の三系統の分野での能力を認められていた。
軍官僚としても有能で、”神々の黄昏”作戦ではオーベルシュタインが前線に赴いていた為、実質的に帝国軍後方を預かっていた。ミッターマイヤーもオーベルシュタインの更迭を上奏した時に、軍務尚書職の後任として「ケスラーなりメックリンガーなりがその任に耐えましょう」と名を挙げている。
リップシュタット戦役以降、前線に立つ機会が少なくなった。回廊の戦い、ロイエンタール元帥叛逆事件においては別働部隊の司令官として用いられたが、共に実際に戦闘には突入していない。メックリンガー艦隊はおそらく帝国軍中で最高の生存率を維持した艦隊であろう。
原作において艦隊旗艦の名称は登場しないが、石黒監督版OVAにおけるメックリンガーの艦隊旗艦クヴァシルは他の提督達と違い、戦艦というより超巡航艦という標準巡航艦の強化型に位置する特徴的なもの。「Die Neue These」では一隻のみ非ゲルマン系の「ガンダルヴァ」という名称がつけられているが、これはメックリンガーが自分でつけたもので、本来の帝国艦名の通例から外れていることが明記されている。
統 率 | 運 営 | 情 報 | 機 動 | 攻 撃 | 防 御 | 陸 戦 | 空 戦 |
64 | 96 | 92 | 60 | 72 | 60 | 40 | 50 |
文人として
芸術家としては、水彩画家・ピアノ奏者・散文詩人として帝国芸術アカデミーや批評家から高い評価と名声を得ている。その多芸多才振りからレオナルド・ダ・ヴィンチ、曹操、ラザール・カルノー、トゥグリル・ベグを崇拝するキュンメル男爵からもある意味理想的な人物像とみられた。
「Die Neue These」では、彼の描いた水彩画の登場にあたり、実際の描画を担当した公式イラストレイターChaykov氏により作中の台詞と原作の記載をもとにメックリンガーの画風の綿密な考察がなされ、さらに多田俊介監督の意識を取り入れて18世紀英国のG・M・W・ターナーの画風を取り入れて
描かれた。しかも高精細ジクレ版画として公式グッズとしても販売されるに至っている。
人物
ヤン・ウェンリーと同じく望んで軍人となったわけではないが、軍才に恵まれたが為に栄達を遂げる事となった。
外見も内実も、優雅で端正な紳士然とした人物だが、軍人としての苛烈な一面も持ち合わせた。平民階級出身ながら、芸術的洗練度では帝国軍諸将で随一の教養人。ロイエンタールも貴族的な洒落者だが、この面では一歩譲った。骨董の収集家でオーディンの邸宅にはコレクションが収められている(石黒監督版アニメでは豪邸メイド付き)。
茶色の口ひげをきれいに整えた風貌(両アニメでは黒色)。ラインハルトの提督達では比較的年長者(黎明編≒33才~落日編≒38才)であるが独身者。
提督連の中では慎重派で、ビッテンフェルトの急進論を制するのはメックリンガーあたりの役目とも。ルビンスキーの暗躍時には拘留されていたラングとの司法取引をあえて提案するなど、ともすれば武断的になりがちな諸提督に対しアンチテーゼともいえる文治的、あるいは多面的な意見を述べることもある。
ラインハルトに影武者を立てる事を進言するも、ラインハルトの不興を被ったという(進言したのはケスラー又は両者という説もあり)。後方総司令官の時に帝国の軍事力が旧同盟領、フェザーン方面に傾斜するあまり帝国本土が空白になっている事を問題と考えていた。また、ミュラーと同席した時に、現在の軍制改革に不安を抱き、将来ラインハルト(中央)にもしもの事があった時、地方が割拠するのではないかと懸念していた。ミュラーは我々の方が先に死にませんかね?という反応を示して同調しなかった。
ヴェストパーレ男爵夫人と親しいが、男女の関係にならなかったのは、すでに芸術家として名声を得ていたメックリンガーが無名好みの男爵夫人の好みから外れた為といわれる。男爵夫人はマリーンドルフ伯爵家とも縁があり、そのラインでヒルダから件の見舞いを引き受けたとも推測できる。
ケスラーとワーレンとは自宅に招いて食事を共にする等の付き合いがあった。ロイエンタールと初めて会った時は最終的に他人の下風に立つ男ではないとの印象を残している。彼を智と勇の均衡では随一の存在と評して高く評価する一方、漁色ぶりについては、「去年の花は今年の花にあらず」と皮肉げにノートに書き記している。「探検家提督」グリルパルツァーとは直接の上下関係はなかったが、文化人として通じるものがあり先達として尊敬され、メックリンガーの方でもグリルパルツァーの才幹に期待をしていた。
ルビンスキーの火祭りにおいて、ハイネセンの国立美術館の仮設大本営にいたラインハルトを迅速に救出したビッテンフェルトの功績を讃えながらも、ビッテンフェルトが国立美術館を省みず、旧同盟の貴重な美術品が焼失した事に無念を覚えた事を書きとめている。彼を評価しつつも、その野人振りには辟易していたようで、ラインハルト不予の際の混乱時には、えせ詩人野郎よばわりしたビッテンフェルトの罵声に、猪と呼んで応じたこともある。
史家としての見識も持ち、当時のローエングラム中枢の動向、人物についての記録、私見を残しており、作中にもたびたび引用されている。ラインハルトの事は主君として尊敬しながらも、その特異な個性を興味の対象ともしていた。
関連商品
関連項目
- 銀河英雄伝説
- ラインハルト・フォン・ローエングラム
- オスカー・フォン・ロイエンタール
- フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト
- チート(現場仕事も事務仕事も出来て、絵、文章もプロ級、さらにピアノも弾ける)
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