『スター・ウォーズ ハイ・リパブリック ジェダイの光』(Star Wars The High Republic: Light of the Jedi)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説である。
なお、当記事における人名・役職名など固有名詞の日本語表記は、原則的に本書邦訳に基づく。
概要
映画本編スカイウォーカー・サーガより時代を遡ること200年、ジェダイ騎士団と銀河共和国の黄金の時代を舞台としたメディアミックス・プロジェクト「ハイ・リパブリック」の幕開けを飾る大人向け小説作品。物語全体の第一作として、「ハイ・リパブリック」第一期にあたる同名の“フェーズ1「ジェダイの光」”でウェーブ1(第一波)を構成する。
繁栄と拡張に沸く銀河共和国が直面する“ハイパースペース大災害”のなかで、命を賭して人々を護るジェダイの英雄的活躍、そしてこの大災害を端緒に「ハイ・リパブリック」の主敵としてジェダイや共和国と衝突することとなる未知の巨大海賊集団ナイヒルの様相を描き出す。
著者は多くのコミック作品で原作を務めたチャールズ・ソウルで、原著は2021年1月刊行。邦訳は同年11月、講談社より四六判上下巻構成で刊行された。訳は稲村広香、表紙イラストは藤城陽が担当。
ストーリー
平和な銀河、輝かしき共和国の時代。アウター・リムの諸星域を銀河共和国に結びつける大事業、宇宙ステーション<スターライト・ビーコン>は完成を迎え、稼働を待つばかりだった。だが同じ頃、辺境のヘツァル星系は時ならぬ大災害に見舞われつつあった。
突如としてハイパースペースから崩壊した貨客船の巨大な残骸が多数出現し、光速に近い速度で星系全体に降り注ごうとしていたのだ。400億人が暮らす安穏とした農業星系に訪れた絶望を前にして、救援の求めに応えたのはジェダイの一団。彼らは星系内に散らばって避難の支援や異常体の破壊、残骸に残る乗客の救出に取り掛かり、ジェダイならぬ人々も最善を尽くそうとする。多くの市民、少なからぬジェダイの命が失われながらも、彼らは勝利を得た。ヘツァル星系は破滅の淵からすくい上げられたのだ。
だが、残骸の“出現”は他の星系にもおよび、無数の死と大々的なハイパースペースの閉鎖をもたらした。障害などあるはずのないハイパースペースで貨客船が崩壊した原因も謎のままだ。そしてアウター・リムでは巨大な海賊集団ナイヒルが蠢動をはじめ、物語は共和国とナイヒルの激突へと向かってゆく。
銀河共和国とジェダイ騎士団
ハイ・リパブリック時代――それは銀河共和国の黄金期である。リナ・ソー議長の率いる共和国は、繁栄と平和の中で銀河の辺縁アウター・リムの星々を受け入れようとしていた。その象徴となるのが、共和国が進める“大事業”、輝ける希望の光、宇宙ステーション<スターライト・ビーコン>だ。<ビーコン>には共和国の大使館やジェダイのアウトポストが置かれ、文化・医療・通信など各分野の拠点となる。
ジェダイ騎士団もまた輝かしき時代にあり、共和国とともに働く平和の守護者として、フォースの力を賢明に用い、銀河に秩序と正義を維持せんとしている。本拠地を共和国の首都惑星コルサントのジェダイ・テンプルにおくいっぽう、アウター・リムまで広くアウトポストを設置し、ジェダイを派遣して、銀河じゅうで人々の安寧を保っている。
共和国は常設軍を持たないが、加盟惑星は軍備を有している。ひとつの星では解決できない紛争は稀だが、そうした場合は諸惑星の協力によって運営される共和国防衛連合の平和維持艦隊が乗り出す。
ナイヒル
アウター・リムで活動する巨大な海賊組織で、全員が何らかのマスクを付けて顔を隠し、自分たちを「嵐」であると称する。破壊・略奪・脅迫・殺人を旨とする、邪悪なならず者の集団である。
ひとりの“目”と、「テンペスト」と称する集団を配下におく3人のテンペスト・ランナーが最高幹部として合議体制で指導する体制をとっており、ナイヒルとしての一体感のようなものはあるものの、内部はそれぞれのテンペストどうし、さらにストームやクラウドと呼ばれる下位の階級の構成員に至るまで、たがいに競争し蹴落としあう、乱暴で殺伐とした組織。
宇宙船や入植地を襲撃したり、惑星を封鎖して脅迫するといった行為が稼業であるが、ナイヒルが特に巨大かつ脅威である理由は、彼らが“経路”と呼ぶ、特別なハイパースペース航路を用いる点にある。面倒な計算も制限もなしにハイパースペースの利用を可能にする不思議な“経路”によって、彼らはどこにでも神出鬼没に現れて海賊行為を働き、妨害されることなく逃げ去ることもできるのだ。
ハイパースペースの大災害
「ハイ・リパブリック」の物語のはじまりとなる、宇宙規模の大災害。
9000人の入植者や液体ティバナなどの貨物を輸送する巨大なモジュラー貨物船<レガシー・ラン>が、他のものなど存在するはずのないハイパーレーン内で障害物に接近遭遇したことが原因である。熟練の船長ヘッダ・カセットはかろうじて衝突の回避に成功したが、その機動とハイパースペースの乱流によって加えられた力は、船体の耐久性の上限を超えた。
引き裂かれた船は、搭載したモジュールに生きた乗客を乗せたままリアルスペースに“出現”し、進路上の星系に光速に近い速度で突入していった。被災地はジェダイの奮闘によってかろうじて滅亡を免れたヘツァル星系だけでなく15以上の星系におよび、例えばアブ・ダリス星系への“出現”ではひとつの破片が接近通過しただけで2000万人の死者を出す惨事となった。
いまだ“出現”していない破片の存在も予測されるなか、ソー議長は広域にわたりハイパースペース・レーンの閉鎖を宣言。アウター・リムへの物流の停滞を甘受しながら事態の収拾を目指す。
登場人物
ジェダイ騎士団
- アヴァー・クリス Avar Kriss
- 人間・女性。ジェダイ・マスター。
若くしてマスターの地位にある俊秀。フォースの“歌”を聴き、フォースを通して周囲のジェダイの力をひとつに結びつける能力を持ち、ハイパースペースの大災害に対するジェダイの中核として尽力する。 - エルザー・マン Elzar Man
- 人間・男性。ジェダイ・ナイト。
賢く面白みのあるジェダイだが変人ぎみで、意図を明かさないため扱いづらいと思われがち。いずれマスターとなり自身の道を探求することを望んでいる。アヴァーとは古く近しい友人。 - ローデン・グレイトストーム Loden Greatstorm
- トゥイレック・男性。ジェダイ・マスター。 ベル・ゼティファーの師。
弟子ベルができることならばどんなことも任せ、実地の試練で能力を伸ばしてゆく、厳しくも良き師匠。こと不正義には厳格だが、常にユーモアと余裕を忘れない、強靭で偉大なジェダイである。 - ベル・ゼティファー Bell Zettifar
- 人間・男性。ジェダイ・パダワン。18歳。ローデン・グレイトストームの弟子。
フォースとの繋がりにはまだ未熟なところが多いが、厳しくも良き師ローデンのもと様々なことを学び、大きく成長してきた。ヘツァルでは師とともに避難民の支援にあたる。 - バリーアガ・アガバリー Burryaga Agaburry
- ウーキー・男性。ジェダイ・パダワン。師はニブ・アセク。
師やその他のジェダイとともに大災害に対処しようとするさなか、重大な事実を発見する。思いやりのある優しい性格だが、ウーキーの言語シリウークしか話せないこともあって内気で社交が苦手。 - ジョラ・マリ Jora Malli
- トグルータ・女性。ジェダイ・マスター。ジェダイ評議会のメンバー。
<ビーコン>におけるジェダイ騎士団セクションの責任者を任された熟練のマスターで、問題解決の際には積極的で多様な行動に出ることを好む印象がある。弟子リース・サイラスとは別行動中。
銀河共和国
- ペヴェル・クロナラ Pevel Kronara
- 人間・男性。共和国防衛連合提督。エミサリー級クルーザー<サード・ホライズン>の指揮官。
ジェダイを乗せ<ビーコン>を視察した帰路、ヘツァルの災害の報に接し駆けつけ、アヴァーの主導のもとで共同して救援を実施。その後もハイパースペースの大災害に関わる様々な問題に対処する。 - リナ・ソー Lina Soh
- 人間・女性。銀河共和国の議長。
繊細な外見ながら強い指導力を発揮し、<ビーコン>をはじめとする共和国の“大事業”を牽引する政治家。大災害に対しても堅実に対処しつつ、拡大を続ける共和国の団結のため尽力する。
- ゼフレン・エッカ Zeffren Ecka
- 人間・男性。銀河共和国に加盟するヘツァル星系の首相。
平和のなか、セキュリティに気を配る必要など絶えてなかったヘツァル星系の為政者。降って湧いた想定不可能な大災害に困惑しながらも、執務室に残って全市民に退避を呼びかけつづける。 - ケヴェン・タール Keven Tarr
- 人間・男性。エッカ首相の顧問で、ヘツァルの技術省から派遣された。
辺境のヘツァルには不相応なほどの才能ある分析官として、エッカからも高く評価されている人物。ヘツァルの事態の終息後は、なおも残骸の“出現”が続くなかで算定と予測の可能性を提案する。
ナイヒル
- マーシオン・ロー Marchion Ro
- 男性。ナイヒルの中核である“目”の地位にある、種族不明の謎多き策謀家。
“経路”の秘密を地位とともに父から受け継ぎ、ナイヒルの要となっているが、海賊活動に直接関わることはない。宮殿兼要塞である座乗艦<ゲイズ・エレクトリック>を有する。 - ローナ・ディー Lourna Dee
- トゥイレック・女性。ナイヒルの最高幹部テンペスト・ランナー。
秘密主義者で、内心を隠し意見を口に出したがらない。支配するテンペストはナイヒルでももっとも残虐だといわれる。乗艦は<ローナ・ディー>。 - パン・エイタ Pan Eyta
- ドウーティン・男性。ナイヒルの最高幹部テンペスト・ランナー。
低く豊かな響きの声を持ち、丹念で好みにうるさいタイプ。彼の支配するテンペストも同様に緻密で計画的である。乗艦は<エレガンシア>。 - カッサフ・ミリコ Kassav Milliko
- ウィークェイ・男性。ナイヒルの最高幹部テンペスト・ランナー。
ナイヒルでも古参の幹部であり、マーシオンに敵対的で自己主張が強い。規模が大きく忠実なテンペストを率いるが、彼自身に似て衝動的で無秩序である。乗艦は<ニュー・エリート>。
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