デ・ラ・ペンネ級駆逐艦とは、イタリア海軍が運用している駆逐艦である。
概要
1960年代からイタリア海軍で運用を開始した『ターターシステム装備(艦隊防空用ミサイル)駆逐艦』の内、第3世代に当たるクラスである。
建造自体は1970年代に確定していたが予算不足による順延が続いた結果、戦力化は1990年代にずれ込みこの時点で防空駆逐艦としては旧式となってしまった。
なお、2024年秋に1番艦が退役している。
船体構造
本級は1世代前の『アウダーチェ』級駆逐艦の運用実績を反映した改良型である事から艦橋とヘリコプター用格納庫が船体中央部で分割された艦上構造物のレイアウトは変わらないが全長147m、満載排水量5700tと大型化しており機関も第1世代の『インパヴィド』級駆逐艦から続いていた蒸気タービンからディーゼル(巡航用)とガスタービン(高速用)を組み合わせたCODOG方式を採用した。
これにより最高速力は『アウダーチェ』級より少し低下した31㏏になったが航続距離は18㏏で7000海里と実質倍になっている。
なお、計画決定から建造開始まで10年以上のタイムラグが生じた結果、フォークランド紛争での戦訓を反映して船体の大部分に高張力鋼を使用+艦内重要区画にケブラーを組み込んだ複合装甲を備えるだけでなく船体外壁やマストに傾斜を付けて対レーダーステルス性を持たせ、機関部の赤外線+水中雑音対策も強化されている。
装備
- 誘導弾
ヘリ格納庫上にMk.13発射機(SM-1用)、艦橋前に『アルバトロス(シースパロー)』用8連装発射機を各1配置して2系統の艦対空ミサイルを運用する一方、艦中央部に対艦ミサイル『テセオ』用連装キャニスターを最大4基=8発搭載できる。これらの装備は近代化改修後の『アウダーチェ』級をほぼ踏襲している。 - 艦砲
『インパヴィド』級から続いている『127㎜+76㎜の速射砲を併載』を本級も踏襲しているが航空機+誘導弾の高速化と艦砲の性能向上+実例を反映して削減+配置換えが実施された。
127㎜単装砲[1]は艦橋前に1基とし76㎜単装砲は『アウダーチェ』級まで続いていた中央部に4基配置を止めて艦橋操舵室の手前下両舷に2基、MK.13発射機手前のヘリ格納庫上に1基の配置となった。
なお、艦砲群と『アルバトロス』は船体4箇所に配置された専用管制レーダーと連動してイタリア式CIWS『タルド』システムを構成する。 - 対潜装備
『アウダーチェ』級が装備していた艦尾53㎝長魚雷発射管は引き継がず艦載ヘリ(最大2機[2])+ヘリ格納庫両舷に配置したMk.32短魚雷発射管2基の2段構え体制が続いたが後に近代化改修で『テセオ』の派生型に当たるイタリア版アスロック『ミラス』[3]を必要に応じて換装できる様になった。
艦名の由来
本級は本来イタリア語で1番艦が『アニモソ(勇敢)』、2番艦は『アルディメントソ(大胆)』と命名されたが進水後に『ルイージ・デュランド・デ・ラ・ペンネ』、『フランチェスコ・ミンベッリ』に変更されている。
双方とも第二次世界大戦前からイタリア海軍に在籍しイタリア降伏・南北分裂後は南王国海軍を経て戦争を生き抜いた海軍軍人に由来する。
- ルイージ・デュランド・デ・ラ・ペンネ
開戦直後から『第10MAS部隊(水中工作部隊)』に所属し1941年12月の『アレキサンドリア港攻撃』でイギリス戦艦『ヴァリアント』の破壊工作に成功して捕虜となった後に南王国海軍・イギリス海軍混成水中工作部隊『マリアッサルト』に参加し1944年6月にドイツの手に落ちた重巡洋艦『ボルツァーノ』の破壊工作に成功して生還している。
戦後、1956年に国会議員に転じて事実上退役したが功績を考慮して中将に列せらている。 - フランチェスコ・ミンベッリ
開戦時は大型魚雷艇『ルポ』の艇長を務めていたが『クレタ島の戦い』に際して海上からドイツ軍の増援部隊を乗せた小型船20隻で構成された輸送船団を1隻で護衛中に巡洋艦、駆逐艦各4隻で構成されたイギリス艦隊と遭遇、半数の輸送船を失う被害と『ルポ』も被弾する被害を受けつつも残余の輸送船と『ルポ』共々生還してイギリス海軍に一矢報いた。
その後黒海で活動する小型魚雷艇部隊の指揮官を経て戦艦『ヴィットリオ・ヴェネト』、軽巡洋艦『ジュゼッペ・ガリバルディ』の艦長を歴任して戦争を乗り切り最終的にイタリア海軍艦隊司令官まで歴任して1964年に退役。
関連作品
関連項目
- イタリア軍
- 駆逐艦/軍用艦艇の一覧
- ヤコブ・ファン・ヘームスケルク級フリゲート
- チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦/オリバー・ハザード・ペリー級フリゲート
- スタンダードミサイル/シースパロー/オートメラーラ76㎜砲/MK.32
脚注
- *この砲塔は『アウダーチェ』級が改修で『アルバトロス』を追加する際に外されたものを転用
- *基本的にはAB-212(UH-1派生型)だがシーキングもしくはAW101を1機搭載可能
- *『テセオ』の対艦用弾頭を324㎜短魚雷に差し換えている
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