プライムタイムとは、
- テレビ業界において夜の看板番組が並ぶ時間帯のことである。本項で記述する。
- TBSテレビにおいて、1987年10月から1988年まで放送されていた夜10時台のニュース番組。
正式タイトルは『JNNニュース22 プライムタイム』。放送時間枠がそのまま番組名の由来となっている。
テレビ朝日系の『ニュースステーション』に対抗すべく放送を開始したが、視聴率争いに敗れわずか1年で終了した。 - アサヒビールが製造・販売していたビールの銘柄の一つ。2009年、「熟撰」に統合され販売終了した。
概要
一言で説明すると『1日のうちで視聴率が最も高くなる時間帯』のことで、日本の場合、毎日19時~23時の時間帯を指す。即ち、ゴールデンタイムに夜22時~23時の枠を加えたものと同義であり、広告料の取り扱いも同じ最高料金のAランクである。
しかし一般的には「ゴールデンタイム」という言葉のほうが広く認知されているため、「プライムタイムに放送される番組」と言えば夜22時以降に放送を開始する番組に限定して使用される場合が多いだけでなく、夜22時台の放送であっても「ゴールデンタイム」と称されるなど、両者が混同して使用されることが多い。その一方で22時台はゴールデンタイムと比べて遅めの時間であることから、ドラマにおけるベッドシーン(濡れ場)の描写やバラエティ番組におけるお色気ネタが原則的に忌避されないものとなり、この点においてはゴールデンタイムと明確に区別することができる。なお、1990年初期にTBSで木曜22時台に放送されていたつなぎ番組のタイトルに『怪傑黄金時間隊!!』(=直訳すると『ゴールデンタイム』)と名付けられていたことから、少なくともこの頃には既に『ゴールデンタイム』と『プライムタイム』両者の混同が始まっていた様子が窺える。
また、「ゴールデンタイム」は和製英語であるのに対し「プライムタイム」は本来の英語であるという違いもある。このような二重基準がある背景には、かつて視聴率を計測する会社が2社あったことに由来する。
日本の会社であるビデオリサーチ社は、大人から子供まで家族揃ってテレビを観る時間帯=ファミリータイムを重視したために、設立当時は遅い時間帯という認識のあった22時台を除外した「ゴールデンタイム」という時間帯区分を採用したのに対し、米国に本社を持つニールセン社はあくまで「視聴率が最も高くなりやすい時間帯が何時から何時までの間であるか」ということを重視したことや、米国基準をそのまま持ってきたこともあって、22時台を含めた「プライムタイム」という時間帯区分を採用したものと考えられる。
なお、後にビデオリサーチ社も1971年からプライムタイム区分の視聴率調査を開始しており、ゴールデン・プライムとも併存した状態のまま現在に至っている。略称はそれぞれ「ゴールデンタイム=GH」「プライムタイム=PT」と呼ばれている。ちなみにゴールデンタイムの略称「GH」はかつて「ゴールデンアワー(Golden hour)」と呼ばれていたことに由来するものである。
余談であるが、広告料金の格付けについては土休日の18時~19時も最高料金のAランクが適用されている(関東地方の場合)が、この枠はプライムタイムに含まれない。また、国によっても違いがあり、アメリカの場合平日は20時~23時と休日の19時~23時であり、平日の19時台はプライムタイムには含まれないという違いがある。
プライムタイム枠が抱える問題
番組の編成については、その名の通り各局とも花形と言える番組が多く、視聴率争いも激しい。4大民放においてはかつては2ケタを切ると即低迷・打ち切りが囁かれていたが、2010年代に入ると地上波テレビ全体の視聴率低迷に拍車がかかっていることから、平均8%以上あればとりあえずはセーフラインと見られているようである。ゴールデン・プライム帯の平均視聴率の危険水域を8%未満とみなし、これを割り込むことを新消費税になぞらえて「税割れ」と表現する例が見られつつある。
その一方で、深夜で人気を博していた番組がプライムタイムに枠移動してくると逆に『降格』と揶揄されることがしばしばある。これは、プライムタイムに昇格すると同時に、深夜ならではの自由奔放でエッジの効いた番組作りがしにくくなり、スポンサーや視聴者の顔色を伺うような安易で無難な万人受けを意識した番組に変貌してしまいやすいこと(例えば深夜時代は重箱の隅をつつくようなマニアックな情報を流していた番組がプライムタイムに枠移動した途端「今話題のグルメ情報」や「今行きたい話題のスポット」のようなテーマばかり採り上げるようになる・深夜時代は過激なコントを放送していたのがプライムタイムに枠移動すると当たり障りのないゲーム企画ばかり流すようになるetc)、その結果として視聴率低迷・短命で打ち切られてしまうことが多いことから来ている表現である。
逆に深夜枠のままのノリで押し切ろうとする番組もたまに出てくるものの、結局はプライムタイム枠の視聴者層の支持を得られにくく視聴率低迷に喘ぎ、早々に打ち切られるか路線変更を迫られるかの二者択一が待っているのが常である。
さらに近年ではプライムタイム枠の番組が「番宣」の道具にされてしまうケースが非常に目立っている(例えば「クールの節目には新番組のドラマの主演俳優を、映画公開直前に映画の主演俳優を何の脈絡もなくゲストに呼ぶ」など)ため、前述の揶揄や批判にさらに拍車がかかっている傾向にある。
このプライムタイム枠が終了し深夜枠へと移行する「放送時間が23時より前か後か」のラインは番組編成において極めて重要な意味を持つ分岐点であると考えられる。その例として、「夜22時台の放送なら深夜に近いしイケるでしょ」と踏んで昇格してきたと思われる番組の多くが爆死していたり(「カルトQ」がその代表例)、23時台なら普通に観ることができていたBLコントを22時台で観るとちょっと気まずくなったり…といったことが挙げられる。
かといってプライムタイム枠で最初からウケる番組を作ることもできず、深夜枠の人気番組に頼ってプライムタイム枠に持ってくる事例は後を絶たない。テレビ制作の現場が様々な問題を抱えている証拠の一つであると言えよう。
番組編成の特徴など
プライムタイム枠は各局ともドラマやバラエティ番組を中心に放送している。またテレビ朝日系は平日の22時台に報道番組を放送している。
かつてはスポーツ中継やアニメの放送も定番の一つとして君臨していたが、近年では衰退の一途を辿っている。アニメに関してはテレビ東京を除くと「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」などごく僅かの放送に留まり、プロ野球中継の放送回数も目に見えて減少している。どちらも最盛期には20%以上の平均視聴率を期待できたのが、近年ではいずれも10%前後に留まっており、それ以上の数字が期待できない状況にあることが主な要因であると言える。
これら以外にも、かつては60分枠以外の番組(主に30分枠)や東京以外(主に大阪など)で収録されたプライムタイムの番組も少なからず存在したが、前者はアニメを除いてほぼ絶滅、後者も絶滅状態にある。
その一方で夜23時台に放送される番組の中にもプライムタイムと比較して遜色の無い視聴率を記録する番組が増えてきたことから、「ネオプライム」などといった表現が使用されることがある(テレビ朝日では夜23時台に加え、深夜0時台を含めた時間帯を独自に「プライム2」と、また日本テレビも同様に「プラチナゾーン」と名付けている)。
また、2000年代以降の全体視聴率は軒並み減少傾向にあるが、とりわけ2010年代以降の19時台の凋落ぶりが激しく、2011年6月14日には日本のテレビ史上で初めて「4大民放を含む全ての民放で19時台の視聴率が1ケタになる(関東地区)」という事態が発生した(同時間帯においてはNHKニュース7が毎日15%前後の視聴率を安定して記録しているため「全てのテレビ局が視聴率10%を切った」と言う訳ではない)。
22時台からゴールデンタイムへの枠異動は一般的に「昇格」と見られているが、事実上においては19時台への枠異動に関してはそういう訳でもなさそうである。
非ゴールデン枠・プライムタイム放送のアニメについて
アニメ番組において狭義のプライムタイムは不毛の時間帯であり、4大民放ではかつて「ギミア・ぶれいく」の枠内で放送された「笑ゥせぇるすまん」を筆頭に数作品が放送されたに留まる。テレビ東京においては2000年に「ラブひな」がプライムタイム枠で放送され、ゴールデンタイムと深夜アニメのいずれにも属さない新たな時間帯のアニメとして開拓が試みられたが視聴率的には惨敗を喫してしまった。それ以降は4大民放同様休日日中~ゴールデンと深夜の両極化が図られることとなっている。
その後、2013年現在においては独立UHF局の東京MXテレビが夜22時台にアニメ枠を多数設けて放送しているほか、同年4月期には他の独立UHF局においても深夜向けアニメがプライムタイムに放送される事例が増えている。
一方で21時~22時台の枠は古くから映画がよく放送される時間帯であるため、単発もののアニメ映画が放送される事例が少なくない。特に日本テレビでは金曜ロードショー枠でジブリアニメや系列の人気アニメ作品(ルパン三世、名探偵コナン)などファミリー向けの人気アニメ映画作品が繰り返し放送されては高視聴率を記録しているほか、2012年夏以降はフジテレビにおいても『土曜プレミアム』枠で『ONE PIECE』の新作2時間アニメを約半年に1回の割合で放送しており、これらが2014年現在両局において唯一ゴールデンタイムでアニメを放送する事例となっている。
関連項目
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