千田翔太(ちだ しょうた)とは、将棋棋士である。1994年4月10日生まれ。大阪府出身。森信雄七段門下。棋士番号291。
棋歴
2006年に奨励会に入会。2013年に18歳で四段昇段(プロデビュー)。
プロ1年目の2013年度、いきなり王位戦の予選を勝ち抜き挑戦者決定リーグ入りを果たす。リーグも勝ち抜いて挑戦者決定戦まで進むも、木村一基に敗れ、タイトル挑戦とはならなかった。同じくデビュー年の2013年には、加古川青流戦で決勝に進出するが、佐々木勇気との3番勝負に2勝1敗で敗れ準優勝。公式棋戦初優勝を逃す。
2014年度の順位戦C級2組では9勝1敗の好成績を収め、C級1組に昇級し五段に昇段する。
2015年度は、竜王戦6組で優勝し決勝トーナメントに進出。1回戦で5組優勝の斎藤慎太郎に敗れる。同年度のNHK杯テレビ将棋トーナメントでは、阿久津主税、糸谷哲郎、行方尚史、久保利明というタイトル経験者、A級棋士を連破して決勝進出。決勝では村山慈明に敗れ準優勝に終わり、またしても公式棋戦初優勝を逃すが、後述のようにコンピュータ将棋そのものに近づこうとする棋風がテレビを通して多くの視聴者に新鮮な驚きを与えた。
2016年、この年から新設された上州YAMADAチャレンジ杯の決勝に進出するが、船江恒平に敗れて準優勝に終わり、三たび公式棋戦初優勝のチャンスを逃す(一方の船江は第1回の加古川青流戦優勝に続き、2度目の公式棋戦初回優勝者になった)。また、第2期電王戦の出場者を決定する第2期叡王戦では、「ponanzaを入手するために絶対優勝したい、一番勝ちたい棋戦です」という意気込みで臨み、五段予選決勝で青嶋未来、決勝トーナメントで広瀬章人、佐々木勇気、豊島将之と20代の強力な対局相手を連破して決勝に進出したが、やはり20代の佐藤天彦名人に弾き返され、4度目の公式棋戦準優勝に終わった。しかし同時期に進行していた第42期棋王戦の挑戦者決定トーナメントでは決勝戦と挑戦者決定戦で佐々木勇気に連勝し、自身初のタイトル戦出場を決めて六段に昇段した。棋王戦五番勝負では先に2勝を上げたもののそこから渡辺明棋王に逆転され2勝3敗で惜しくも初タイトルを逃した。しかし、2016年度にプロ将棋界で猛威を奮った「対矢倉左美濃急戦」と「角換わり4二玉型の新工夫(6二金 - 8一飛型)」の発展への貢献が認められ、将棋大賞の升田幸三賞を受賞した。また最多対局数(65局)・最多勝利数(48勝)の2部門でも将棋大賞を受賞した。
2018年度の順位戦B級2組で9勝1敗の成績を残し、B級1組に昇級し七段に昇段する。2019年度は、朝日杯将棋オープン戦で準決勝で藤井聡太、決勝で永瀬拓矢という強豪を連破し、プロ入り7年目にしてついに棋戦優勝を達成した(優勝後のインタビューでは「棋戦準優勝コンプもネタとしては美味しい」ということを冗談として言っていたが、新人王戦は決勝に進むことなく出場資格を失っている)。
2024年には順位戦B級1組を突破し、A級に昇級した。同時に八段に昇段。
棋風・人物
居飛車党。力戦を得意としているという。
コンピュータ将棋に詳しい。コンピュータ将棋の対局場であるfloodgateの棋譜を収集しており、各ソフトの棋風について詳しい。その熱心さは、「1日10時間以上floodgateを見ていることもある」と言うほど。自身のTwitterでもコンピュータ将棋の大会の解説を行なっている。お気に入りのソフトはNineDayFever(NDF)。千田の棋士デビューとほぼ同時期に誕生し発表直後から最強将棋ソフトの一角を占めたNDFであるが、電王トーナメントや電王戦に出場しないため、棋士や将棋ファンの中でもその知名度は実力に対して高くない。そのNDFの「人間らしい指し手」「玉の安全度に関する感覚」を見ぬいて、その棋譜と各局面における評価値・読み筋を教師とするのが、他の棋士と異なる千田の方法。NDFはソフトウェアが一般に対して配布されていないため、floodgateで指された棋譜から勉強している(floodgateでは、1手ごとの各将棋ソフトの読み筋と評価値がすべて記録として残っており、棋譜をダウンロードすればローカルでそれらを参照することも可能)。「他のソフトとは異なる」ことを見ぬいてNDFを教師を選んだことからも分かる通り、「将棋ソフトといえばこう」という、将棋ファンやベテラン棋士のみならず若手強豪にさえ見られる偏見や先入観からは完全に自由。
単にコンピュータ将棋を参考にするだけでなく、コンピュータ将棋の研究をいかに自分の棋力の向上に反映させるか、具体的には「コンピュータ将棋はすでに人間の遙か上の棋力である」と位置づけた上で「コンピュータ将棋の局面評価にいかに自分の局面評価を近づけるか」という、千田以外のどのプロ棋士も行わないであろう目標を立てて、その方法を日々研究・実践している。これは三段リーグの頃、将棋倶楽部24で最高レートになったことがあったが、「その割には、対人戦の勝ち星が増えない」と気づいて軌道修正し、ひたすら歴代永世名人の棋譜を並べ続ける勉強に切り替えて四段昇段を決めたという経験に基づく。プロ入り後すぐに王位戦挑戦者決定戦まで進出し、プロ棋士内における自分のおおよその位置づけを掴んだため、三段リーグの時と同じく、ここからさらに這い上がるために何を変えるか、何に挑戦するかを模索し、その答えとしてコンピュータ将棋の研究を選んだとのこと。2016年には教師をNDFからponanzaに変えたことを表明している。第1期電王戦に出場した山崎隆之のサポート棋士に選出されたことで貸与されたponanzaを自己対局させ、およびaperyなどの他ソフトと対局させることで得た大量の棋譜とその際の読み筋、評価値を教師としている(電王戦終了後にponanzaは返却の義務があるためソフトは手元に残せないが、研究成果の破棄は義務付けられていない)。
2015年の第3回将棋電王トーナメントには解説として参加。解説担当なのは2日目だけだったが、中村太地や永瀬拓矢らとともに3日間フル参加した(曰く「解説の仕事がなくても来るつもりだったので(解説の仕事が入ったのは)ラッキー」)。最終日の途中からは急遽スタジオにゲスト解説としてボランティア参加し、同じくコンピュータ将棋に詳しい西尾明とのダブル解説となり、両ソフトの評価値が食い違う非常に難解な熱戦となったponanzaとnozomiによる決勝戦などの解説を2人で見事にこなした。
2023年に、女流棋士の中村真梨花と結婚した。戸籍上は「中村翔太」となったが、棋士としての活動は千田姓で続けるとのこと。
関連項目
外部リンク
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