女流棋士とは
ここでは2について述べる。(1についての記事も歓迎)
女流棋士(将棋)
概要
公益社団法人日本将棋連盟(以下、将棋連盟)または、
公益社団法人日本女子プロ将棋協会(以下、LPSA)に所属している、
女性への将棋普及を目的に設けられた女性棋士採用枠に該当する女性の棋士である。
通常のプロ棋士とは異なる制度であり、現在に至るまで女性のプロ棋士は誕生していない。
女流棋士一覧
歴史
ことの発端は1961年、蛸島彰子が史上初の女性奨励会員として入会したことである。
日本将棋連盟の女性教室が創設され、その教室の講師としての活動や、NHK杯の棋譜読み上げなどで生計を立てていった。
そういった活動の影響で女性の将棋指しが次第に増えたこと、
当時の将棋連盟が「将棋もスポーツのようにジャンルを男と女に分けるべき」という考えであったこと、
報知新聞の方針と合致したことなど様々な幸運が重なり、
1974年ついに報知新聞主催の「女流名人位戦」が創設された。
この「女流名人位戦」創設が制度上の女流棋士のはじまりとなった。
1950年代に既に女流棋戦が存在していた囲碁と比べると20年以上遅く、歴史は浅い。
団体
日本将棋連盟とLPSAの2つが存在する。それぞれの団体については当該記事参照。
なお、この2つの団体は以前は非常に仲が悪かったが、石橋幸緒のLPSAの代表理事からの退任後から急速に関係を回復しており、お互いのイベントに参加するなど関係性は正常化した模様。
棋戦
女流タイトル公式戦としては現在8棋戦が開催されている。
全女流棋士が参加し、挑戦者を決定する。タイトル保持者と挑戦者の番勝負が行われ、その勝者には棋戦ごとに白玲、清麗、女王、女流王座、女流名人、女流王位、女流王将、倉敷藤花の称号が与えられる。
女流棋戦では永世称号に相当する「クイーン称号」を制定している(女王のみ「永世女王」)。
その他にLPSAが主催する独自棋戦や、非公式棋戦が開催されている。
また、女流枠がある女流棋戦でない棋戦(竜王戦など)も存在し、上位の女流棋士が参加する。
女流タイトル公式戦
棋士の棋戦と比べるとアマチュアや奨励会員が参加可能な棋戦が多く、実際にアマチュアが挑戦者となったことや女性奨励会員がタイトルを獲得したことがある。
棋戦 | クイーン称号 | 条件 | 資格者 | 獲得年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
白玲 | 未制定 | ||||
清麗 | クイーン清麗 | 通算5期 | なし | ||
女子OP | 永世女王 | 5連覇or 通算7期 |
なし | ||
女流王座 | クイーン王座 | 通算5期 | なし | ||
女流名人 | クイーン名人 | 通算5期 | 中井広恵 | 1992 | |
清水市代 | 1996 | ||||
里見香奈 | 2013 | ||||
女流王位 | クイーン王位 | 通算5期 | 清水市代 | 1998 | |
里見香奈 | 2019 | 史上二人目のクイーン四冠 | |||
女流王将 | クイーン王将 | 通算5期 | 林葉直子 | 1991 | 1995年連盟退会により資格喪失 |
清水市代 | 2000 | 史上初のクイーン四冠 | |||
里見香奈 | 2016 | ||||
倉敷藤花 | クイーン倉敷藤花 | 通算5期 | 清水市代 | 1998 | |
里見香奈 | 2012 |
LPSA独自棋戦
非公式棋戦
段位
女流七段~女流32級まで存在し、規定の成績をあげれば女流五段まで昇段/昇級していく(女流2級以降は降級なし)。女流六段以上はLPSA、日本将棋連盟共に理事会で審議の上での昇段となる。なお、女流七段に昇段したのは清水市代、女流六段に昇段したのは中井広恵、関根紀代子(引退後)、里見香奈の3名だけである。
女流棋士になるには
棋士の登竜門である新進棋士奨励会を6級以上の段級位で退会すると、プロ入りする権利が与えられる。この場合、奨励会6級~2級なら女流2級、それ以上の段級位では奨励会1級なら女流1級、奨励会初段なら女流初段として、退会時の段級位をそのまま引き継ぐ。(一部例外あり)。
②研修会ルート
新進棋士奨励会の下部組織である研修会でB1クラスへ昇級またはB1以上で編入、
かつ入会時からの通算対局数が48局以上で、女流2級としてプロ入りする権利が与えられる。
後述の女流3級廃止後からB2以上が条件となっていたが、2024年4月から現在の条件に変更された。
下記の棋戦で該当の成績を収めた場合、女流2級としてプロ入りする権利が与えられる。
- 「マイナビ女子オープン」 ※本戦ベスト8進出以上
- 「リコー杯女流王座戦」 ※本戦ベスト8進出以上
- 「霧島酒造杯女流王将戦」 ※本戦ベスト8進出以上
- 「大山名人杯倉敷藤花戦」 ※ベスト8進出以上
- 「女子将棋YAMADAチャレンジ杯」 ※優勝 現在は休止
現在、LPSAの規定は将棋連盟とほぼ同一のものに統一されたが、下記の違いがある。
三段リーグを突破する、プロ編入試験に合格するなどによって女流ではない棋士になった場合、希望すれば女流棋士と兼任が可能となる。
現在は廃止されたルート
①女流3級ルート
下記のいずれかの条件を満たした場合、女流3級として仮の女流棋士の資格が与えられていた。
正規の女流棋士である女流2級への昇格のためには女流3級となってから2年以内に以下のいずれかの条件を満たす必要があった。条件を満たせなかった場合、年齢制限に引っかからなければ研修会に戻り、再度女流棋士に挑戦することも可能であった。
2018年4月の制度改正によって経過措置[1]を除いて廃止となっている。
かつてLPSAの規約では独自棋戦である「1dayトーナメント」で3回優勝すると女流2級として他団体が主催する大会への出場を推薦するというものがあった。
この条件を満たした渡部愛を女流3級とすると発表したものの、日本将棋連盟は女流3級とは扱わず、アマとして扱うという姿勢であったためにLPSAが反発しマイナビ女子オープンボイコット事件が発生。その後紆余曲折を経てLPSAが新体制へと変わり、独自棋戦の成績による女流3級認定は廃止された。
引退
本人の申し出による引退の他に降級点規定があり、成績下位者には降級点が付き降級点が溜まると引退となる。但し、運用面では男性棋士の引退規定と異なり競輪やオートレースで用いられる新陳代謝制度のような形を取っているようである(既定の人数を維持する為、女流棋士数が多いと降級点がつきやすく、女流棋士数が少ないと降級点が付きにくい)。
降級点の対象となるのは女流棋士36人のとき1人で、以降女流棋士が5人増えるごとに対象者が1人増える。なお、引退者が出た場合はその人数だけ降級点の対象も減る。出産・病気による休場は対象外、それ以外の休場では降級点が0.5点付く。降級点は女流1級の昇級規定を満たせば1つ取り消される。
降級点が3点になると引退となるが、65歳以上の場合は降級点が1つでもついた時点で引退となる。
棋力
囲碁と比べると男女間の実力差は大きい。理由として囲碁と比べると女流棋士の歴史が浅い、囲碁に比べて将棋は女性に不向きな競技である。など色々な見解が出ているが正確な所はまだわかっていない。
奨励会員となった女性もいるのだが、2021年1月現在でも棋士になった者はおらず、三段になった者が3人いるのみである(うち1人は三段リーグ次点を経験しておりあと一歩だった)。
また、よくアマチュアより弱いと揶揄されるが半分正解で半分不正解である。
正解の例としてはトップアマと比べたら女流棋士の棋力が劣ると言う指摘である。これは男性棋士でもトップアマと対局すると結構な比率で負けているので、女流棋士はアマチュアより弱いと言われても仕方がない。
不正解の例としてはその辺のアマチュア(これがどの程度を指すのか非常に難しい所であるが)より弱いという指摘である。日本将棋連盟の規定でプロになるには既に述べた通り奨励会2級以上になるか、研修会でC1以上になるかである。まず奨励会ルートであるが奨励会6級でもアマチュア三,四段程度の棋力が必要で、奨励会2級ともなればそれ以上の力がある訳でその辺のアマチュアが勝ち越せるとは考えにくい。研修会ルートであるが最低クラスのFクラスでもアマチュア二段程度の棋力が必要であり、C1まで上がるには当然それ以上の棋力が必要な為、これもその辺のアマチュアが勝ち越せるとは考えにくい。
実力下位の女流棋士ならという話もあるが、女流棋士の平均レーティングより低い男性棋士がいる(いた)が、それに対して男性棋士はその辺の女流棋士より弱いとは言わないのと一緒でそこまで行くとただの屁理屈である。
女流棋士制度不要論
主にインターネット上で女流棋士制度なんていらないと言う不要論が見られる。主な理由として下記2つが挙げられる。これも正しいのかどうかはわからない。なお、署名を集めてLPSAや日本将棋連盟に女流棋士制度を廃止して下さい。と抗議に行ったという話は聞いた事がない。
対局料
かなり残念なのが実情である。2010年度の賞金トップになった甲斐女王・女流王位(当時)が1,063万円と一見悪くない(男性棋士と混ざっても20位)ように見えるが、対局料だけで生活できる棋士はほんの一握りで、殆どの棋士は何かしらの副業を行ってやっと普通の会社員の給料に届くか届かないかという状況である。このため強い棋士は将棋に集中できる事もあってより強くなり、そうでない棋士は生活費を稼ぐのに労力を使う事でより弱くなると言う正と負のスパイラルが発生している。
ただ、2008年度にマイナビ女子オープン、2011年度にリコー杯女流王座戦(共に優勝賞金500万円)、2019年度に大成建設杯清麗戦(700万)、2020年度にヒューリック杯白玲戦(1500万)と高額賞金の棋戦が増えた事や、マイナビ女子オープンの懸賞金制度など強ければ昔以上の対局料(+懸賞金)を得る事が可能になっている。
ファンクラブ
LPSAと日本将棋連盟それぞれにMinervaと駒桜と言うファンクラブがあり、年会費5,000円(Minervaの場合は入会金+1,000円)で加入することができる。
懸賞金
マイナビ女子オープンでは大相撲のように懸賞金を行う事が可能である(1口42,000円(税込))。大相撲では取組が進むにつれて懸賞金の額が多くなっていく傾向があるが、マイナビ女子オープンではどちらかと言うと序盤の対局に懸賞金が集中する傾向がある(大相撲と違い宣伝目的で出すケースが少ない事(匿名希望も多い)と、贔屓の女流棋士に懸賞金を受け取って欲しいとなると、勝つ確率が高い序盤に出した方が良いと言う事が理由と思われる。)。
例:2013年度の5番勝負第1局(上田初美女王対里見香奈女流四冠)が6口なのに対して、一斉予選2回戦(鈴木環那女流二段対渡部愛アマ(主催者発表))に20口、同じく一斉予選2回戦(矢内理絵子女流四段対室谷由紀女流初段)に14口の懸賞が出ている。どの程度が女流棋士に渡るのかは不明であるが、本戦1回戦の対局料が10万円である事を考えるとかなりの大金である事は間違いない。
ニコニコ生放送
女流棋士戦の放送はニコニコ生放送では行われていない。
関連動画
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関連項目
脚注
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