現代の幾何学では所謂"幾何学的"な整然とした図形だけでなく、より広範な対象を扱う。
概要
発祥は非常に古く、古代オリエントのナイル川流域における測量に端を発すると言われている。
ナイル川流域は年に一度氾濫を起こし、氾濫が終わった後には肥沃な土壌を上流から運んでいた。しかし、氾濫により一帯が全て洗い流されてしまうため、氾濫後には土地を元通りに配分しなくてはならなかった。このような背景の下、古代オリエントでは測量術が発達し、測量術から派生する形で幾何学は誕生した。ラテン語でGeometria、英語でGeometryと表記するのもその名残(geo- : 土地の -metry : 測定法)である。
この時代の有名な発見物として、辺の長さの比が3:4:5の直角三角形がある。この三角形により、簡単な整数比から直角を作ることが可能となった。
その後古代ギリシアに於いて研究が進み、大きな発展を遂げる。特筆すべきは証明という手法を導入した点にある。現在から考えれば当たり前のような手法かもしれないが、僅かな前提(公理・公準)から、当然とは思えないような結論(公理)を厳密な演繹により導き出すこの手法は、当時としては画期的な手法であった。この時代の主要な人物としてはターレス、ピタゴラス、ユークリッドなどが挙げられる。中でもユークリッドは『原論』を著わし、この時代における証明の手法を完成させたと言われる。
- 公理1: 同じものと等しいもの同士は互いに等しい.
(A=BならB=A, A=BかつB=CならA=C.)- 公理2: 同じものに同じものを足した場合、その合計は等しい.
(A=BならA+X=B+X.)- 公理3: 同じものから同じものを引いた場合、その残りは等しい.
(A=BならA-X=B-X.)- 公理4: 互いに一致するものは、互いに等しい.
- 公理5: 全体は部分より大きい.
- 公準1: 任意の1点から他の1点へ線を引くことができる.
- 公準2: 有限の直線は連続的にまっすぐ延長することができる.
- 公準3: 任意の点を中心に、任意の半径の円を描くことができる.
- 公準4: 全ての直角は等しい.
- 公準5: 1本の直線Aが2本の直線B,Cに交わるとする。このとき、同じ側の内角が2直角未満であれば、B,Cを無限に延長すれば何処かで交差する(平行線は交わらない).
以来、長らくユークリッドが体系化した「ユークリッド幾何学」は唯一の幾何学として研究が進められていた。というのも、直感的に納得のできる空間のあり方での幾何学だったからである。その一方で、公準5(平行線公準)については長らく妥当性に疑問が投げ掛けられていた。平行線公準の証明は、正に「世紀の難問」だったのである。
19世紀にフリードリヒ・ガウスは公準5(平行線公準)を「平行線は交差する」と置き換えても整合性のある幾何学が成立する可能性を示唆した。これにより、後年に非ユークリッド幾何学が生み出された。余談だが、ガウス自身は宗教紛争に巻き込まれることを嫌って非ユークリッド幾何学を提唱することはなかった。
現在でも数学の主要な地位を占めていることは変わらず、多くの派生分野を生み出している。代表例は以下の通りである。
"幾何"の語源について
一般にはGeometriaの"geo"を中国語に音写したものが"幾何"であると説明されるが、実際には正しくないようである。
近年の研究によれば、清代に中国に滞在したイエズス会士が計量のことを"幾何"と翻訳していたようであり、どちらかといえばGeometriaの"metria"を中国語訳したものであるというのが正しいようである。
詳細については、以下の論文が詳しいので興味のある者は参照するといいだろう。
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関連項目
- 数学
- 数学関連用語の一覧
- ピタゴラス
- カール・フリードリヒ・ガウス
- アンリ・ポアンカレ / ポアンカレ予想
- トポロジー
- トーラス(幾何学)
- クラインの壺
- 非ユークリッド幾何学
- フラクタル
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- 空間(数学)
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