「矢口、まずは君が落ち着け」
泉修一とは、2016年公開の東宝の映画『シン・ゴジラ』の登場人物である。演者は松尾諭。
概要
保守第一党政調副会長。政調とは政務調査会のことで、国家議員や学識経験者などで構成され、国防、外交、財政金融、厚生労働、経済産業、文部科学など、それぞれの部会において政策(マニフェスト)や立法の立案をおこなう。
参考までに、2016年現在の与党である自由民主党では、国会に提出する法案は政調の審査を通さねばならず、14もの部会が置かれている。
その政務調査会を総括するのが政調会長である。一般的に政調副会長は会長代理とともに政調会長を補佐するポストとされている。つまりけっこう偉い人である。
矢口蘭堂内閣官房副長官とは遠慮なく腹を割って話ができるほど昵懇の間柄。突如東京湾から出現し甚大な被害をもたらして海に消えた巨大不明生物への対策を練るため官邸に設置されることとなった「巨大不明生物特設災害対策本部」、通称「巨災対」の事務局長を兼務することが内定した矢口から、骨太なメンバーの人選を依頼され、
「了解した、首をナナメに振らない連中を集めて渡すよ」
と快諾している。保身第一であいまいな態度しかとらない典型的な官僚タイプよりも、一癖も二癖もあり出世とは無縁であっても実力が確かな人材のほうを評価する矢口の信条を心得ているからこその返答であろう。
内閣総辞職ビームののち、からくも生存したが激甚な被害に我を忘れ志村祐介秘書官に八つ当たりぎみに声を荒げて怒鳴る矢口に、
「矢口、まずは君が落ち着け」
とペットボトル入りの水を胸にあてるように押し付ける。フレームから見切れているが泉は志村にも水を渡し、自分も一口ラッパ飲みしている。この細やかかつ自然な気遣いによって矢口は落ち着きを取り戻す。
出世欲に忠実で、矢口に「出世は男の本懐だ」と断言し、むしろ逆に「そこ(出世)に萌えんとは、君、なんで政治家になった?」と聞き返すほど。
また、矢口の「俺は10年後を見ている」という言葉に「10年後にまだ日本があったら、総裁選に立候補してくれ、応援するよ、見返りは幹事長のポストでいい」と返している。幹事長は総裁についで党のナンバー2の役職である。
「後のことは頼む。君のキャラには助けられたよ」
と差し出された矢口の手を、
「ああ、幹事長なら任しとけ」
と握り返して送り出すシーンは、二人の関係性を如実に語る、作中屈指の名シーンといっても過言ではないだろう。
このように、ちょっとメタボぎみで、お世辞にも精悍とは言いがたい外見からは裏腹に、
野心にたがわぬ実力を持ち、
依頼どおりの人材を用意する広いコネがあり、
殺伐とした場の雰囲気を和らげるムードメーカーの役割を果たし、
矢口プランの目処がつくと里見総理大臣臨時代理にヤシオリ作戦実行許可を陳情し、
またフランス政府とのパイプまで有しているなど、メインキャラクターたちと比べても遜色のない魅力に溢れた有能なる重要人物、それが泉修一であります、みなさま、あすの日本のために、泉修一にどうか清き一票を!
ちなみに、一部で「水ドン」という造語まで生まれたくだんのシーンは、8月24日に新宿バルト9で開催された「シン・ゴジラ女性限定鑑賞会議」で演者の松尾諭氏が暴露したところによれば、水を渡して矢口を諌める一連の所作が撮影当時の台本になく、「怒っている人にどう渡せばいいかわからず、ペットボトルを放り投げたら、矢口役の長谷川博己さんにぶつかって、よけいに怒らせてしまった」らしい。
雑学
内閣総辞職ビームの悪夢から一夜明け、矢口たちと立川の防災施設で合流した泉が、
キンキカライとは、「金帰火来」と書き、「金曜日の夜に地元の選挙区に帰り、有権者の声を聞き、火曜日の朝にまた霞ヶ関に来る」という意味で、地方に選挙区をもつ国会議員の心得のひとつである。
民主党代表などを歴任していた小沢一郎氏は、とくに同党の若手議員にこれを徹底させており、週末に霞ヶ関で若手の顔を見かけでもしたら、「こんなところで油売ってるひまがあるなら、地元へ帰れ!」と決まって一喝していたという。ということは小沢氏も週末に地元帰らずに霞ヶ関にいるんじゃんなどと突っ込んではいけない。
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驚くべきことに、こんな重要人物にもかかわらず、予告編にいっさい登場していない。
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関連項目
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