砂の器(すなのうつわ)とは、
その他6度TVドラマ化されている。この記事では1と2の両方について記述する。
概要
原作
東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉を唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する……。
1960年5月から1961年4月にかけて「讀賣新聞」夕刊に連載された長編。1961年7月に光文社のカッパ・ノベルスから刊行され、1958年の『点と線』、1959年の『ゼロの焦点』を上回る大ベストセラーとなり、松本清張の社会派ミステリーの巨匠としての名声を不動のものにした。当時どのくらい売れたかというと、1961年の年間ベストセラー第5位である。累計発行部数は460万部以上で、新潮文庫の松本清張作品では『点と線』に次ぐ2番目の発行部数だとか。
後述の映画版の影響もあって、『点と線』『ゼロの焦点』とともに、清張の数ある代表作の中でも飛び抜けて有名な作品であり、1973年に出た新潮文庫版(上下巻)は現在も入手可能。ただし新潮文庫版下巻のあらすじはだいぶネタバレなので事前に読まないことを推奨する。「週刊文春」が1985年と2012年に行ったミステリーのオールタイムベスト投票「東西ミステリーベスト100」では、1985年版で53位、2012年版では25位にランクインした。
なお、映画版ではクライマックスでハンセン氏病患者の親子の悲劇に焦点が当てられているが、原作でのその部分の扱いは非常にあっさりしたもので(何しろ映画版の終盤で40分にわたる最大の名場面にあたる描写が原作では僅か数行しかない)、映画を見てから原作を読むと戸惑うこと請け合い。ハンセン氏病患者への差別というデリケートな題材であるため(映画版でも患者団体から物言いがついて、映画ラストにテロップで補足が為されている)、映画版以降のテレビドラマ版では、犯人の父親が背負った背景はハンセン氏病ではなく、殺人罪や殺人容疑などに変えられている。
また、原作には映画版も含め映像化では絶対にカットされる衝撃的なトンデモ殺人トリックが登場するので、映像化しか知らない人はある意味必見である。
大森望 (『砂の器』が1985年版の53位から2012年版で25位にランクアップしたことを指して)『砂の器』は謎だな。なんでいまさら。
杉江松恋 泣かせるからですよ。
千街晶之 それは映画の方でしょう。原作を読んでも泣かないと思いますが。
大矢博子 私、映画を見て感動して、それで原作を読んだら、映画で一番感動した場面が原作では二行しかなくてものすごくショックだった。
千街 原作のトリックがまた……。
大矢 そう! とんでもないの(笑)。
千街 あのトリックは、映像化作品にはまったく出てこないんです。
杉江 原作を読んだ記憶が、映画によって書き換えられてるんですよ。『東西ミステリーベスト100』2012年版 国内座談会より
映画
今なお語り継がれる、邦画を代表する名作のひとつ。特にクライマックスにおいて丹波哲郎が演じる今西刑事の語りと菅野光亮作曲のテーマ曲「宿命」に乗せて描かれる、美しい日本の四季と対比をなすかのような「親子」の過酷な旅路が、見る者の涙を絞り尽くす。間違いなく「泣ける映画」のオールタイムベストのひとつと言えるだろう。
ミステリーとしての今西刑事の地道な捜査の過程は大筋で原作を踏襲しているが、ぶっちゃけ冗長な部分も多い原作から登場人物や事件の数を絞り込み、コンパクトにまとめている。そのぶん原作と違って犯人は最初からバレバレで各種あらすじなどでも全く隠す気がないので、途中まで犯人を隠している原作を先に読むつもりの場合は注意。
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