空想科学読本とは、特撮、マンガ、アニメなどに登場する設定、現象などを科学的な目線で考察した本である。
著者は柳田理科雄。
概要
1996年2月26日に一作目が刊行。考察により導き出される面白い結論やユーモアのある文章が読者に広く受け入れられてベストセラーとなり、シリーズ化された。現在もシリーズの刊行は続いており、20周年を迎えた2016年には「空想科学読本17」が発売されている。
「2」は宝島、「3」・「4」・「5」はSPA!の連載企画、「6」以降(書き下ろしの「6.5」「9」「12」「14」「17」以外)は筆者が全国の高校、高専に配信している「空想科学図書館通信」の原稿を加筆・修正したもの。
元々は筆者が宝島社「帰ってきた怪獣VOW」に寄稿した、特撮番組の科学的考察が原型。そのため初期の発行所は宝島社だが、計算などを手直しした上で文庫化したかった筆者と文庫版を早く出したかった宝島社の間で文庫化を巡って裁判沙汰となり、決裂。裁判は筆者側が勝訴し、その後はメディアファクトリー(現:株式会社KADOKAWA)が出版している。
原作の設定を無視して検証する場合や、単純な計算ミス、強引な仮説、理論展開が散見されるため、批判も多い。その反面、「子供に化学の興味を持たせている」という肯定的な意見もある。発売当時は「こんな夢を壊すような本を書くなんて」と言われることも多かったが、のちに実験ショーなどを行うようになると「子供たちに夢を与えるような実験を」と言われるようになったと筆者は述懐している。
2013年からは児童書レーベルの角川つばさ文庫から小学生向けに再編集された「ジュニア空想科学読本」が刊行され、「楽しく読むうちにすっかり理科が好きになる本」としてアピールされている。近年はこちらのシリーズがメインで展開されており、2020年には「ジュニア空想科学読本20」が刊行された。
一方で本シリーズの刊行は「17」で一段落し、ナンバリングを冠さない総集編的な文庫版、電子書籍がいくつか刊行されている。書店におけるサブカル系書籍の棚が近年は縮小傾向にあることが理由の一つのようである(雑誌「Febli」vol.58のインタビュー記事より)。
主に近藤ゆたか氏により挿絵が描かれているが、著作権などの配慮のためか、原作に微妙に似ていないように書かれている。挿絵の解説文にもあえてキャラクターの名前を書かず、曖昧な表現で描いている。なお原作側から許可やオファーを受けて制作された本や原稿など、原作側が積極的な協力を行っている例もある。
また、このほかにもアニメや漫画の出来事を日本の法律で解釈する「空想法律読本(著者:盛田栄一)」や、アニメや漫画の出来事を実際の歴史に当てはめて考察する「空想歴史読本(著者:円道祥之)」などの派生本も多い。
表紙はモリナガ・ヨウ氏のオブジェが掲載されてるが、「16」以降はusi氏によるイラストが掲載されている。
内容の間違いについて
計算間違いや設定認識ミスの多さは柳田本人も認め、たびたび新装版などで謝罪、訂正している。例えば96年に出版された空想科学読本(宝島社刊)では「ゴジラは体重が重すぎるため、生まれた瞬間に圧死する。」と導いたが、のちに出版された新装版では「ゴジラは非常に納得のいく体重設定である。」と訂正している。
ちなみに作中では「(編集者の意向もあり)少々強引であっても面白い結論を出すことを重視して書いたつもりである」「正確さとわかりやすさの二者択一を迫られるケースでは、思い切って人間の実感を重視した。つまり正確さを犠牲にした場合もあるということだ。」などとも語られている。
また、「空想非科学大全」を文庫本にする際に全面的に構成と計算間違いを手直ししたが、編集者に「前のほうが面白みに満ちていて良かったのでは?」と言われて間違いの訂正などに修正を留めるなど、編集者や読者の求める形が原稿(及びその修正)に反映されている面もある。
「と学会」会長であった山本弘は、こうした問題や不勉強な点をクローズアップした「こんなにヘンだぞ!空想科学読本」という本を上梓している。こちらは性質上、難しい公式や比喩などが頻出しており、「原作」からの本格的な引用(「ブレードランナー」においては映画版だけでなく原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」からも引用)が多いため、空想科学読本よりも門外漢に分かりづらく、記述も一部間違いがあるなど、こちらもこちらで問題を抱えている。
関連項目
関連リンク
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