GPS(Global Positioning System)とは、アメリカが開発、運用している人工衛星を利用した測位システム。世界に複数存在するGNSS(Global Navigation Satellite System、全世界的航法衛星システム)の一つ。
概要
GPSでは、高度約2万kmに24機の衛星(6つの軌道に各4機)を配置している。衛星はナブスター(NAVSTAR:NAVigation System using Timing And Ranging)と呼ばれ、それぞれの衛星には原子時計が4個搭載されている。ナブスターからは「何時何分何秒に発信」、といった時報のような信号が発信されており、受信機側は4つの衛星からこの信号を受信して位置を測定する(3つの衛星との距離を測ることによって受信機の位置を測定し、4つ目の衛星の信号で時刻の補正を行う)。
GPSの民間への開放は1983年に起きた大韓航空機撃墜事件をきっかけとして、1996年に「課金無しで全世界に開放する」ことが発表された。民間に開放された信号はSA(Selective Availability)という処置で意図的に精度を落とされていたが、これは2000年に解除されている。[1]
日本でもGPSはナビゲーションシステムに不可欠なものであり、カーナビ、携帯電話付属のナビのほか、測量業務などにも利用されている。
GPS信号
すべての衛星が同じ周波数を使用している(L1=1.57542GHz、L2=1.22760GHz)が、GPS信号はCDMAを利用しており、衛星ごとに異なる拡散符号を使っているので、受信機は個々の衛星を識別できるようになっている。[2]
GPS信号には誤差が1mと言われる精度の高い軍事用のPコードと、精度の低い民生用C/Aコードがある。前者は暗号化されており、「鍵」を持っていないとアクセスできないが、後者は一般に開放されている。[3]
その他
アメリカ以外のGNSS
- GLONASS(グロナス)…ロシアが運用
- GALILEO(ガリレオ)…EUが運用
- 北斗…中国が独自に開発している衛星ナビゲーションシステム。2020年には30基を超える衛星を整備することで全世界をカバーするとされる。[4]
準天頂衛星システム
日本では準天頂衛星システムによって、都市部や山間部等GPSの電波が届きにくい地域でのGPSによる測位を補完する計画がある。
※もし準天頂衛星を7機打ち上げれば、GPSに頼らない測位も可能だが、仮にそれが実現しても限定された地域でしか使えないシステムなのでGPSと呼ぶことはできない。
JDAM[5]
JDAM(Joint Direct Attack Munition:統合直接攻撃弾)は特定の兵器の名称ではなく、既存の無誘導爆弾に精密誘導機能を追加するキットの名称。
空力制御を行う尾部パーツ、前縁翼、誘導制御ユニットで構成される。
誘導は慣性誘導装置(INS)とGPSの併用。レーザーによるセミアクティブ誘導機能(SALH)を追加したキットも存在し、これはLJDAMと呼ばれる。
命中精度(CEP)はINSのみで30m、GPSで5m、SALHでは1m。
NDS[6]
GPS衛星には「核爆発(NUDET)センサ」が搭載されている。NUDETセンサは核爆発による電磁パルス・X線・中性子やガンマ線を検出する。このセンサを使用した「核爆発検知システム(NDS)」はGPS衛星が核攻撃を受けた場合や、地球外周の大気圏やGPS衛星周辺の近宇宙で発生した核爆発をほぼ実時間で検知し、位置を特定できる。
このNUDETセンサは、1960年代半ばに運用されたヴェラ衛星群が原型になっている。
ジャミング/スプーフィング[7]
地上で受信するGPSの信号は非常に弱く、「2万キロメートル離れたところにある100ワットの電球と同じエネルギーを受信するようなもの」と例えられる。したがってGPSの電波は容易に妨害でき、「ジャマー」はインターネットで簡単に購入できる。
また、GPSの信号は構造が広く公開されているので、誰でも簡単に同じ信号を作り出すことができる。悪意のある人間が偽の信号を地上から送信することで、実際とは異なる位置情報をGPS受信機に与えることができる。これをスプーフィングと呼ぶ。
関連動画
関連商品
関連項目・外部リンク
- GPS衛星の配備状況(海上保安庁DGPSセンター)
- 人工衛星
- 準天頂衛星システム
- カーナビ
- 位置ゲー
- 地図
- 方位磁針 / コンパス
- アウトドア / サバイバル
- 乗り物 / 自動車 / 航空機 / 船舶
脚注
- *http://qz-vision.jaxa.jp/READ/qz-navi05.html
- *「戦うコンピュータ」井上孝司 毎日コミュニケーションズ 2005 p.91
- *「軍事情報戦略と日米同盟」 松村昌廣 2004 芦書房 p.39
- *中国安全保障レポート2016 p.49
- *「21世紀アメリカ軍歩兵火器大全4」三鷹聡 軍事研究2014年11月号
- *「最高機密『エスキモーの家作戦』」鈴木基也 軍事研究2008年12月号
- *偽の電波で“GPSのなりすまし”攻撃、誤誘導される恐れも。黒海沿岸などで頻発、ドローンの撃退が目的か? 2019.8.22
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