CEDEC2018パネルディスカッション事件とは、2018年に開催されたゲーム開発者向け技術交流会「CEDEC2018」のパネルディスカッションでファンタシースターオンライン2のプロデューサーである酒井智史の言動についての事件および騒動である。別名「PSO2建国記念日」「国造り事件」「823事件」。
概要
2018年のパシフィコ横浜で開催されたCEDEC2018の企画として、8月23日にスクウェア・エニックスの齊藤陽介やコーエーテクモの川又豊、カプコン宮下輝樹など蒼々たるオンラインゲーム開発者を交えた交流会「パネルディスカッション」が開催された。
このパネルディスカッションにてSEGAから酒井智史が参加し他の関係者と共に討論を行なうことになっていた・・・しかし他の参加者たちが開発者目線で視聴者にわかりやすくオンラインゲームについて語っていたのに対し、酒井のそれはただの愚痴を並べただけであった。
酒井氏がCEDEC2018で発した主な発言
切り抜きでないことを証明するため、以下の動画を参考に発言した時系列と前後の文章を含めて記述する。
国の運営に近い(40:40~)
「やっぱりその、ユーザー層がどんどん成熟してくるというか、そういう形になりつつあるところって、オンラインゲームって僕らの中で割と、国の運営に近いというように思うんですけど、段々政府と言うか我々に対しての不満とかが凄く溜まってきて、爆発するかなしないかな位のタイミングで、僕らの場合はちょっと今現状爆発しているような状態ではあるんですけど(省略)」
建て増し住宅/バカじゃないのあんたたち(45:08~)
「開発が進んでいく5年も6年もやってたら、それは開発費って減っていくでしょって普通は上層部やユーザー方とかは思うんですよ、ただそれって全然違う話で建て増し住宅にどんどんなっていく事によって、今度一つを修正した時にチェックしなきゃいけない所がどんどん増えていくんですよ。ここを修正した所からといって全然分からない、全然知らなかった所に突然バグが出てくるとかって結構あって、それってやっぱりユーザーの方とかは多分見えない所だとは思うんですけども、なんでこんなところにバグが出てるの?バカじゃないのあんたたちってよく言われてしまうんですけども」
文句と言うか意見(69:16~)
「そういうオフラインイベントとかでね、ユーザーの皆さんと会うと凄く優しかったりとか楽しんでますってのを率直に伝えて下さるのでこういう方達がいるし、そうやって楽しんでいただける方達の為にしっかり作って、あの...もちろんその...もん...もん、文句と言うか意見を言って下さる人をより...そのいい意見にして楽しんでいただく為に改善をしていこうと気にはなっているので」
発言の意図
酒井智史がこのような発言に至ったのはPSO2の低迷および、それによるオフラインイベントの自粛にあるとされている。
元々PSO2のプレイヤー数は2016年をピークに下降傾向となっており、特に2017年以降は相次ぐバグやクラスバランスの失敗などでプレイヤーが相次いで離反。さらにニコニコ生放送での総合ディレクターである木村裕也氏の発言(「高速詠唱伝記ボクラガソン」「固定を組む努力を怠っている」など)への不満や開発スタッフの苦情を一切受け付けない姿勢(「事実陳列罪」の強化)をとったことからプレイヤーのフラストレーションは溜まる一方であった。一方で生放送ではユーザーを煽動する発言があったり、オフラインイベントでは酒井智史が楽しそうにはしゃぐ姿が目撃され、「こんなことをしている場合じゃないだろう」とネット上で非難囂々となり、運営サイドとプレイヤー側で大きく溝ができる事態となった。
そんな中2018年4月よりNintendo Switch版として『PSO2 クラウド』のサービスが開始されたが、これまでの悪評に加え権利の問題からNintendo SwitchとPLAYSTATION4、PlayStation Vitaとの相互交流は遮断され、PCユーザーを介して行わないといけないなど不便を強いられ、結果クラウドユーザーは伸び悩んだ。この惨状にSEGA上層部も看破できず「バグ対応と顧客満足度向上に専念しろ」とお達しがあったのか2018年のPSO2関連のオフラインイベントは未実施という方針となり、プレイヤーからは賛否両論であったが、楽しみにしていたオフラインイベントを自粛させられた酒井智史の不満は頂点に達していたようで、パネルディスカッションでついに感情が抑えられず公の場でぶつけてしまったと思われる。
事件の顛末
このパネルディスカッションはニコニコ生放送で実況されたこともあり、ニコニコ大百科の急上昇ワードで『酒井智史』が2位、『高速詠唱伝記ボクラガソン』が4位に入る事態となった。当然PSO2のプレイヤー(引退者含む)は激怒し、酒井智史を「国王」、酒井智史を崇拝するオフラインイベント参加者を「臣民」と呼び、全方位攻撃をしたのである。これに「臣民」と呼ばれる人たちも応戦し、Twitterや5ちゃんねるのネトゲ実況3では長期にわたり罵倒合戦に発展している。
酒井智史はこの騒動を受けて8月28日の「PSO2 STATION!」第23回放送の冒頭で謝罪を行なったが、容姿が青いTシャツ姿で、かつ表情が不満を隠しきれていない態度であったことから火に油を注ぐ結果となり、ますます荒れる事態となってしまった。当然SEGA上層部もこの騒ぎを把握しており、プロデューサーである酒井智史はじめ運営責任者一同になんらかの処分が下ることは不可避であった。
そして2018年11月21日に「PSO2 STATION!」第26回放送で酒井智史と総合ディレクターの木村裕也が次回を以て出演の自粛を発表した。
2018年12月15日の「PSO2 STATION!」第27回放送で酒井智史と木村裕也は最後の挨拶を行なったが、酒井智史はこの時点では「出演は自粛するけどブログやTwitterあるしオフラインイベントは参加できるだろう」と思っていた様子である。しかしSEGA上層部の酒井に対する処分は「プライベートアカウントの発信を含む全メディアの自粛」だったようで、2日後のブログ更新で「これが最後になります。」として以降更新をしなくなり、また非公式のプライベートTwitterアカウントも一切ツイートがなくなり、のちに双方アカウントごと削除された。オフラインイベントもファンタシースター感謝祭2019以降姿が確認されていない。
このままフェードアウトしたと思われたが、2021年6月よりサービスインしたファンタシースターオンライン2ニュージェネシス(PSO2NGS)でブランドディレクターとして参加していることが確認されている。また、木村裕也は第3事業部事業部長兼プロデューサーと昇進し、2023年4月にYouTubeで放送された「NGSヘッドライン」に久々に出演している。
余談
実は「国の運営に近い」発言はファイナルファンタジーXIVが初出である。2014年にサンフランシスコで開催された「Game Developers Conference 2014」でプロデューサーの吉田直樹が以下の発言を行なっている。
続いて,ファンとのコミュニケーションについてを話題に挙げた。吉田氏は運営側を政府,プレイヤーを市民になぞらえて「MMORPGの運営は国の運営に似ている」と表現する。政府が打ち出す政策に納得すれば市民は集まってくるし,そうでなければいなくなってしまう。国を繁栄させるためには,市民とコミュニケーションを取らなければならない。
これに加え、前作のファイナルファンタジーXIのグッズには「日本より、いい国に、しよう。」というキャッチコピーが書かれたグッズが確認されており、むしろファイナルファンタジー側のほうが国造りを強調していた。
しかしファイナルファンタジーXIVは新生後は急成長を遂げていたのに対し、ファンタシースターオンライン2は相次ぐ失敗のなかでの発言という違いがある。
関連動画
関連項目
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