アイルハヴアナザー(I'll Have Another)は、2009年アメリカ生まれの競走馬・種牡馬である。
当初は目立たない馬だったが、その低評価を覆して2012年に二冠を達成した。
父Flower Alley、母Arch's Gal Edith、母父Archという血統。
父フラワーアレイは*プリンセスオリビア(トーセンラー、スピルバーグの母)が輸入前にアメリカで産んだ馬でトラヴァーズS勝利など重賞4勝を含む通算14戦5勝。
母アーチズギャルエディスは1戦1勝馬。近いところには活躍馬はあまりいないが、高祖母Last Birdを起点とする牝系にはInto MischiefとBeholderの兄妹などがいる。後に本馬の半妹Gloria S.からHarvey's Lil Goil(2020年クイーンエリザベスII世チャレンジカップS)が出ている。
母父アーチは当時GIだったスーパーダービーを含む7戦5勝2着1回。
本馬は1歳9月のキーンランドセールで1万1000ドルでコンサイナーに落札された後、2歳4月のOBSスプリングセールでRed Rocks(2006年ブリーダーズカップ・ターフなどGI2勝)などを所有していた実業家のジョン・ポール・レッダムに3万5000ドルで落札され、ダグラス・F.オニール調教師(2003年のジャパンカップダートを勝ったFleetstreet Dancerなどの管理調教師)の管理馬となった。
ある日馬主のレッダムが本馬の馬名を考えながら奥さんのクッキーを食べていた時に何気なく「I'll have another.」(おかわり)と発した際、レッダムは自分でその何気ない一言を気に入ったらしく、この「I'll have another」という言葉をそのまま馬名にした。
2歳時は7月のデビュー戦を3/4馬身差で勝利したが、翌月のベストパルS(GII・オールウェザー6.5ハロン)ではデビュー戦を4馬身3/4差で勝利し単勝1.8倍に推されていたCreative Causeに敗れ1馬身3/4差の2着となった。その翌月のホープフルS(GI・ダート7ハロン)ではスタートから後方のまま、バテた馬を交わしただけの10頭中6着に終わった。2歳時は3戦1勝だった。
3歳初戦となる2月のロバート・B.ルイスS(GII・ダート8.5ハロン)では8頭中8番人気、7番人気馬Groovin' Soloの19.4倍に対して本馬は44.3倍という離れた最低人気だった。しかし番手追走から直線抜け出し、後方馬群がごちゃついて落馬事故が起きた影響もあったか2馬身3/4差で本馬が勝利した。
続くサンタアニタダービー(GI・ダート9ハロン)ではCreative Causeとの再戦となった。ベストパルSからここまでの間にノーフォークS(GI)および前走サンフェリペS(GII)を勝ちGI3着2回があった同馬が単勝1.9倍の1番人気に推されていたが、叩き合いをハナ差で制して本馬が借りを返した。
ケンタッキーダービーは粒揃いのメンバーで、アーカンソーダービー(GI)を9馬身差で圧勝して1番人気に支持されたBodemeisterが単勝5.2倍という激戦となった。一方、3歳時の主戦となるマリオ・グティエレス騎手にとってはケンタッキーダービー初挑戦となる本馬は、不利とされる外枠、それも20頭中19番枠を引く不利もあり人気がさほど上がらず、9番人気(16.3倍)となった。
16万5307人というケンタッキーダービー史上最大の観衆の前で行われたレースは、逃げるBodemeisterに対し、後にスプリントで頭角を現してこの年のブリーダーズカップ・スプリントを勝つことになるTrinnibergが絡んだことでハイペースとなり、そこまで外枠の影響が尾を引くことはなさそうな展開となった。3角でTrinnibergが脱落すると単独先頭となったBodemeisterがそのまま逃げ込み態勢に入ったが、直線入り口で3番手に上がった本馬が一気に迫り、差し切って1馬身半差で勝利した。また、グティエレス騎手はこのケンタッキーダービー初騎乗初勝利をもって三冠競走初勝利を挙げた。
続くプリークネスSは一気に減って10頭立てとなったが、それでもBodemeisterやケンタッキーダービーで4着だったWent the Day Well、5着だったCreative Causeは駒を進めてきた。今回は前走よりもスローに落とすことが出来たBodemeisterが前走より更に良い手応えで粘り込もうとしたが、再び本馬が末脚を発揮し、ゴール寸前でクビ差捉えて勝利した。
こうなれば当然三冠も、とファンの期待は高まったが、ベルモントSの2日前の追い切りを行った後、左前脚に腫れが確認され、更にその翌日の調教後に再び腫れたため検査を行ったところ、左前脚の軽度な浅屈腱炎が発覚。治癒するには3~6ヶ月を要するということでそのままベルモントSをスクラッチして引退することになり、Affirmed以来34年ぶりの三冠の夢はレース前に消えた。
Affirmed以降、1979年のSpectacular Bidを皮切りに11頭の馬が最初の二冠を制しながらベルモントSで敗れていたが、二冠を制してベルモントSに出走すら出来なかったのは1936年のBold Venture以来76年ぶりということで戦後では初の事例であった。
なお、上半期しか走らず4戦4勝で不慮の引退となった本馬だが、年末のエクリプス賞では最優秀3歳牡馬を受賞している。
引退後は各所から種牡馬入りのオファーが舞い込んだが、その中でも1000万ドルを提示した日本のビッグレッドファームのオファーをレッダムが承諾したため、2013年からビッグレッドファームで種牡馬入りすることとなった。
種牡馬入り後しばらくは100頭以上の繁殖牝馬をコンスタントに集めていたが、2016年にデビューした初年度産駒がイマイチ振るわず、2017年の種付け頭数は83頭、2018年は47頭と下降線を辿ってしまった。そして2018年の種付けシーズンを最後にアメリカに再輸出されることになった。
輸出から半年が経ってアナザートゥルースがアンタレスSを勝利し、産駒の重賞初勝利を記録した。本馬の方は買い戻しまでには至らずカリフォルニア州で種牡馬を続け、2023年を最後に種牡馬を引退して功労馬繋養施設であるオールドフレンズで余生を送ることになった。
Flower Alley 2002 栗毛 |
Distorted Humor 1993 栗毛 |
*フォーティナイナー | Mr. Prospector |
File | |||
Danzig's Beauty | Danzig | ||
Sweetest Chant | |||
*プリンセスオリビア 1995 栗毛 |
Lycius | Mr. Prospector | |
Lypatia | |||
Dance Image | Sadler's Wells | ||
Diamond Spring | |||
Arch's Gal Edith 2002 黒鹿毛 FNo.23-b |
Arch 1995 黒鹿毛 |
Kris S. | Roberto |
Sharp Queen | |||
Aurora | Danzig | ||
Althea | |||
Force Five Gal 1994 鹿毛 |
Pleasant Tap | Pleasant Colony | |
Never Knock | |||
Last Cause | Caucasus | ||
Last Bird |
クロス:Mr. Prospector 4×4(12.5%)、Danzig 4×4(12.5%)、Northern Dancer 5×5×5(9.38%)
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最終更新:2024/11/08(金) 23:00
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